salitoté(さりとて) 歩きながら考える、大人の道草ウェブマガジン

我が書斎、横須賀線車中より

2016-12-5
OUTPUTしてみよう

酷い点数を取ってしまった。
通信教育「財務分析入門コース」2冊目、レポート問題提出の結果、74点。

大して悪くない?
いやいや、ワタクシこれでも社会人23年目。
事業で数字を扱う仕事をしていた経験もある。しかし、やってるのは“入門”コース。
しかも、全ての問題はテキストを見ながら答えてるんだから、本来なら100点を取らねばいけない。

なのに、4つある大問のうち、最後の<効率・健全性分析>の結果なんて0点。
「もう一歩の成績です。テキストの内容をもう少し確実に把握する必要がありますね。間違った箇所を中心に、もう一度復習をしましょう」
なんてコメントまで書かれちゃった。

やっぱり電車の中での“ながら”勉強、しかも時々気絶して途切れ途切れじゃダメかぁ。
いや、そうじゃなくて、そもそもの理解力の問題。
復習しても理解できるか解らないぞ・・・

実は次の3冊目のテキストも、5ページをめくったところで連立方程式が出てきてしまい、萎えて閉じたまま。
全部で4冊だから後2冊、更にアカウントコースの4冊もあって、全部を3月末までに終えなければいけない。
息子が大学受験で頑張っているので、追い込み時期、私も一緒に一番苦手なことを頑張ってみよう!と決意したとところまでは良かったが、1/4までしか辿りついていない段階でこのていたらく。
ちゃんと最後まで終えられるのか?私?!

・・・と大分不安に思う一方で。
一冊ごとにレポート問題を解かせるという仕組みは、やっぱり大事だなぁと感心。
ここで、テキストを読んで解ったつもりになっている化けの皮を剥がされた訳だもんね。

INPUTだけをひたすらするんじゃなくて、OUTPUTして定着させるというのは、セオリー。

先日参加した息子の予備校の保護者会でも、先生が言っていた。
「12月までの模試の結果でD判定、E判定だったとしても、諦めてはいけません。
4月から12月までは、ひたすら知識を詰め込んでいた、つまりINPUTの段階。
1月から、漸く演習を沢山やって、OUTPUTすることで、原理原則を掴み、知識が身につくんです。
すると、現役生は驚く程成績がぐーんと伸びる!
この伸びしろを考えて、志望校の選択をしましょう。」

なるほどねー、みんなが早めに諦めて安牌な学校を選んじゃったら、予備校としては困るもんねー。
みんなが高望みして落ちちゃったって、今度は「浪人生いらっしゃーい♪」で儲けられるもんねー。
等と穿って聞いてはいたが、「OUTPUTすることで、原理原則を掴み、知識が身につく」には激しく同感。
大人になると、なかなかやらなくなるんだけどね。

例えば、私の英語。
ごくたま~に、やる気の神様が降臨してきて、勉強を始めたりするけど。
結局毎日使う機会が無いので、張り合いも無く、定着もせず、結局また忘却の彼方に。
単語力は多分200ワード位で、そのまま全く増えない。
友達には、「外人の彼氏を作ればいいのよ~」と言われ、妙に納得。
まぁ、気を付けないと、OUTPUTの幅が狭くなりそうだけどね・・・。

例えば、私が時々いくつかの学校でやらせてもらう、キャリア漫談。
これ、学生たちのためにやっている様に見えて、実はとっても自分の勉強になっている。

オファーを受けた時は、出会う予定の学生たちの学年、人数、今居るステージ、学校や先生から私の漫談に期待されていること、校風などにつき、出来る限り情報を頂く。
次に、漫談を終えた授業終了時に辿りつきたいゴールと、漫談の中で伝えたいキーメッセージを決める。
そして、最初に情報収集した先方のニーズと、こちらの伝えたいキーメッセージをマッチングさせるために最適なストーリーを考える。

ストーリーの中では、出来るだけフレームを使って話を整理する。
学生たちに、そのフレームを持ち帰ってもらって、後で自分でも使ってもらえる様にするためだ。
ここで言うフレームとは、これまでこの連載の中でも紹介してきた、「3つの輪っか」とか、「ジョハリの窓」とか、ああいう奴ね。

フレームはいつも同じものを使うんじゃなくて、時々、あえて入れ替える。
そこにいつもの自分の話を入れてみると、そこにもう、新たな発見がある。

9月に社内でやらせてもらったキャリア漫談では、私のキャリア履歴を紹介するのに初めて「4つのL」を使ってみた。

(ここで、「4つのL」の復習。
人生は、「仕事(Labor)」、「学習(Learning)」、「余暇(Leisure)」、「愛(Love)」の4つの要素がうまく統合されてこそ「意味ある全体」になるという、1997年、ハンセン(Hansen,L.S.)が『統合的人生設計―Integrative Life Planning』で提唱したキャリアの考え方。詳しくは7月の記事にて。)

自分のこれまでのキャリアを幾つかのステージに分けて、その時の「4つのL」の状態を表してみたら。
改めて見えてきたのは、やはり私は、同時に幾つもあれこれやることで、何かが上手く行かなかったときの気持ちのバランスをしっかり取って来たということ。
そして、絶好調の時には、仕事とプライベート、特に「仕事(Labor)」、「学習(Learning)」、「余暇(Leisure)」の境目が無くなり、相互循環して相乗効果を生んで来たということ。

この内容を説明してみたら、聞いて下さった皆さんから
「学習(Learning)は仕事(Labor)と近い領域でも遠い領域でも、それなりに繋がって来たりするもんですね」
「余暇(Leisure)の人脈がひょんなところで仕事(Labor)に活きたりして、やっぱり閉じこもってちゃいけないですね」
なんて調子で色々な感想が聴けて、これまた私の勉強になった。

つまり、「4つのL」というINPUTをして「へぇー」で終わらせず、実際に使ってOUTPUTしてみることで、自分の血や肉となった訳だ。

そして、OUTPUTするためには、同じ情報をINPUTしていない人にも解りやすく説明するために、沢山の情報を整理してコンパクトにまとめたり、かみ砕いて言い換えたり、例え話を入れてみたりする必要がある。この作業を通じて、「つまり、大事なポイントはこういうことなんだな」、と原理原則を掴むことが出来る。

OUTPUTする時、以前、仕事で尊敬していた、大好きな先輩から教わった幾つかのアドバイスは、未だに私の中にあって、常に自分への戒めになっている。

「コミュニケーションの質は、受け手が評価するもの。
受け手が解らないということは、説明の仕方が下手くそだということ。」

「複雑で解りにくいと思ったら、1枚の絵にしてみなさい。絵にできないということは、まだ頭の中が整理できていないということ。まだその本当の意味を解っていないということ。」

「難しいことを難しい言葉でそのまま説明するのは、アホでもできる。難しい言葉を振りかざすことで、『自分はこんなに難しいことをよく知っている』と思わせたがるのは、もっとアホだ。難しいことを、小学生にも解る様に優しく説明できるのが、本当に賢いということだよ。」

その先輩の内一人は、自分が講演で話したいことをまとめた後、必ず自分の母親に聞いてもらう様にしていた。そのお母様は最終学歴が小学校なので、難しい言葉は解らない。「だから彼女が解らなければ、自分の原稿は大失敗なんだ」、と言って笑ってたなぁー。
私はまだまだ、修行中・・・。

キャリア漫談でOUTPUTして、自分だけ勉強になったぁと満足してちゃいけないので、私のINPUTによって何を得てもらえたか?やっぱり学生にもOUTPUTしてもらうことにしている。
大抵聞くのは、以下の4問。

1.今日の話の中で、あなたの印象に残ったのは、どんな言葉、どんなエピソードですか?
またそれは、なぜですか?
2.今日の話の中で、わからなかったこと、もっと聞きたいと思ったことは何ですか?
3.今日の話を聞いて、あなたが「明日からやろう!」「今後に活かそう!」と思ったことがあったら書いて下さい。
4.その他、感想、ご意見など、何でも書いてください。

ちなみに、今年もらったレポートの中で、私が唸ったOUTPUTは、こんな感じ。

「私は今やっている部活と自分の将来やりたいことが結びつかず、知り合いから『部活はムダな時間』と言われてしまい、悩んでいました。」

・・・おいおい。
そもそも、学生としてやることの全てを、将来やりたいことに繋げなくてもいいんだけど。
部活で培った努力する力とか、組織運営をする力とかって、どんな仕事をするにしても役に立つんだけどなぁ。
でも、こんな考え方をする人が居るという事実はあるんだなぁ。

「『4つのL』を意識、この言葉は、『勉強しろ、資格を取れ、時間は無い』と親に責め立てられる私の体に響きました。遊んでばかりいるので、遊びと勉強の割合をちゃんと考えるべきだなと思いました。」

・・・響いて良かったよ。
でも、責め立てられても、遊んでばかり居るのね・・・。
親の言うことなんて、子どもはまさに馬耳東風。

「先生のパワーポイントは個性が溢れるものになっていて、あのようなものでも良いんだ、と思いました。」

あのようなものって・・・?
いや、良くないかもしれないよ・・・真似しないでくれたまえ。

これまた、全て私の貴重なINPUT。
このINPUTとOUTPUTの好循環。やめられまへんわ~。

勿論、知識のINPUTと、その定着のためのOUTPUTというだけじゃなくて、別の視点でもOUTPUTは大事。
例えば、色々な刺激や出来事というINPUTで、頭や心の中がモヤモヤした時。
そのモヤモヤはそのまま放置して、いつか忘れちゃえばそれで良い様に思えるかもしれないが・・・
実はそのモヤモヤは、自分の中で知らず知らずの内に、澱の様に溜まっていく。

だから、人に話してみよう。
話すのが嫌なら、書いてみよう。
そうやってOUTPUTしたものを、自分で改めて聞いたり読んだり見たりすることで、自分の頭と心の中が整理されて、モヤモヤはスッキリする。
その整理は学びになって、必ずアナタの血や肉になる。

勉強した時にも、悩んだ時にも、是非、OUTPUTしてみよう。
INPUTで終わりにしたら、とっても勿体ないよ。

ご意見・ご感想など、下記よりお気軽にお寄せ下さい。

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齋藤 由里子
齋藤 由里子

さいとう・ゆりこ/キャリア・コンサルタント(CC)。横浜生まれ、大阪のち葉山育ち。企業人、母業、主婦業も担う欲張り人生謳歌中。2000年からワーキングマザーとして働く中、日本人の働き方やキャリア形成に問題意識を持ち、2005年、組合役員としてWLB社内プロジェクトを立ち上げ。2010年、厚生労働省認可 2級CC技能士取得、役員を降りた後も社内外でCCとして活動継続。個人・組織のキャリア・コンサルティング、ワークショップ、高校・大学生向け漫談講義などを展開、参加人数は延べ4200名超。趣味は海遊びと歌を歌うこと。 2017年からはCareer Climbing~大人のためのキャリアの学校~も主催。

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