salitoté(さりとて) 歩きながら考える、大人の道草ウェブマガジン

我が書斎、横須賀線車中より

2019-06-5
パラレルキャリアと
新!社会人基礎力

キャリア・コンサルタントの資格は5年おきに更新時期がやってきて、8時間以上の技能講習と30時間以上の技能講習を受ける必要がある。

私の場合、次の満了日が2022年の1月23日なので、そろそろ、ゆるゆると、勉強を再開している。
まだ先の様に思えるけど、30時間以上の技能講習って結構な量だし、私その点ビビりだし。

やりはじめると、最初に資格取得のために勉強をしていた10年前と比べて、世の中の動きがかなり進化していることを改めて実感する。
あんなに「会社がやることじゃない」と言われ続けたワーク・ライフ・バランスはもはや当たり前、注目の話題は働き方改革も超えて副業だったりして。

ワーク・ライフ・バランスは、言葉の使い方のせいでまだ一部誤解を受けているけれども・・・
ダイバーシティ・マネジメントが当たり前の今、色々な価値観の方を受け入れ、一緒に新しい価値を生み出していける「自分」になるために、まず「自分の中に多様性を持つ手段」としても必須の概念。
行動範囲が会社、家、飲み屋の魔のトライアングルのみになっている方は、ご注意を。

2009年、再雇用制度を会社に提案・導入した時、取得自由の1つに「留学を入れよう」と言ったら3秒で却下されたけど、そういうのもいずれ変わっていくかもね。
東京一極集中と地方活性化の問題を考えれば、行政参加(議員とか、期間限定行政職員とか)や過疎地域留学も理由になっていくと良いと思う。
もっともっと人財が流動化した方が、お互いに学び合えるし、鍛えられるし、それぞれの人のネットワーク、今で言えば社会関係資本も豊かになって、関係人口も増えて、いいことが一杯あるよ!

一旦辞めたり休職したりせず、パラレルキャリアなら、もっと相乗効果がある。

同時並行でいくつものタスクをこなさければいけないので、

●時間を上手く使って生産性を上げる力≒タイムマネジメント能力
●それぞれのタスクの優先順位や相乗効果を考えながら、取りこぼさない様に全体を進める力≒プロジェクト・マネジメント能力
●長距離走に耐えられる様、自分自身の心身の健康を保つための力や適当にガス抜きするストレス対応能力≒
セルフ・マネジメント能力
は絶対に培われる。
更に、それぞれの世界で学んだことを別の世界に活かすこともできるし、何より違う世界を生きること自体が良い気分転換になる。

これを一番実感している人は、実はワーキングマザーではないかと思うけど・・・
働くお母さん、どうですか?

私自身、もし専業主婦で毎日朝から晩まで子どもと向き合わなくちゃいけなかったら、良いお母さんで居られたか全く自信がない。
日中は保育園に預けて、子どもはお友達と目一杯楽しく遊んで体力を使い果たして疲れてくれて、私自身も仕事に熱中できて。その分お迎えに行くと離れていた寂しさも相まってとびっきり子どもが可愛く、愛しく思えたもんだ。仕事で嫌なことがあっても子どもの笑顔や寝顔で癒されて、よし、明日も頑張るか!って思えたし。

その点、専業主婦のお母さんは本当にすごい。子どもが一人じゃなくて、二人も三人も居たら猶更。私が地球上で最も尊敬している職業のひとつは専業主婦のお母さんだ。

お話戻って・・・
もしあなたが古典的な企業で雇用されている方であるならば、パラレルキャリアとして働くもう一つの世界では、出来る限り古典的な企業の所属ではない、全く違う環境の方たちと協働することをおススメする。
出来ればフリーランスやNPOの方、学生、もしくは地域のエブリデーサンデーのおじいちゃん・おばあちゃんなんかと取り組むのが良い。
その方が、得られるものがより大きいからだ。

先日、法政大学大学院政策創造研究科 石山恒貴先生の「楽しく学ぶパラレルキャリアの人材育成効果」という講義を聞いてきたけれど、共感して頷き過ぎて首が痛くなった。
石山先生はパラレルキャリアの効果を

●垂直型ではないシェアド・リーダーシップ
●多様性と曖昧さに慣れる(目標の抽象性)
●ゼロベースで実験を繰り返す、失敗を歓迎する(デザイン思考)
●自分の暗黙の前提を常に見直す(メンバーと受け入れ環境の異質性、視野の拡大)

と説明されていて、それを「上下関係の無さ×異質性×抽象度」とまとめていた。それはまさに、古典的な企業所属の方達が、古典的な企業所属ではない方達と一緒に働いて見えてくるものだと思う。

パラレルキャリアとして手軽で、且つ人財がいつでも求められているのはPTA、もしくは自治会だろうなぁ。
今あなたが「うえっ、絶対にイヤだ」と思った様に、PTAや自治会は実に敬遠されやすい。
でも、ビジネスパーソンだけが集まるMBAや社会人大学院に負けず劣らず、自分自身が鍛えられる場所だ。だって、学歴、所属企業、肩書なんて一切関係無し、試されるのは全人格性と基本的なワーク・スキル。
そして、石山先生の「上下関係の無さ×異質性×抽象度」がぴったり当てはまる世界。
誰かが言ってたな、MBAよりPTA。

何故こういう体験が大切なのか?

今は、
●Volatility(変動性・不安定さ)
●Uncertainty(不確実性・不確定さ)
●Complexity(複雑性)
●Ambiguity(曖昧性・不明確さ) 
が増していく時代。この4つの言葉の頭文字を取って「VUCAの時代」と言われている。

この先どうなるか、誰にも解らない。問題は複雑で難しくなっていて、「抽象度」が増していて、これまでのやり方では通用しない。何が正解なのか、誰にも解らない。

その様な難易度の高い色々な問題を一人や一組織で解決することはできない。違う個性や強みを持った人が集まって良いチームワークを作り、連携して知恵を出し合って新しい技を編み出して、失敗もしながら挑戦していかないと、解決には結びつかない。

なのに、古典的な企業所属の方に多い、上下関係を重んじて「俺の言うことに従え」的なリーダーシップを持ち出す人が居ると、そもそも面倒くさいので良い人財は集まらない。集まったとしても空気が固くなって良いチームワークにならない。そして、言うことを聞く方が楽だからと自分の頭で考えずに依存したり、怖いから言わないでおこうと自分の殻に閉じこもったりする人が現れる。皆が率直に意見を出し合い、それぞれの強みを出し合う、新しいことに挑戦する展開にはならない。

だからこそ、
●「上下関係が無く」て誰もが対等で、攻撃されたりコントロールをされたりすることのない安心な場所
●「異質性」を認めて活かして、問題解決に向けて力を合わせようというポジティブで安心な空気
を作って、
●「抽象度」の高い難しい問題
に取り組んで「VUCAの時代」の荒波を超えていく必要がある。まさに、多様性を活かし、新しい価値を産むダイバーシティ・マネジメント。
そのために必要な力とは・・・やっぱり4つのC(Critical Thinking、Creativity、Communication、Collaboration)かな、社会人基礎力かな・・・そんな風に考えていたら、なななんと。

経済産業省が提唱する「社会人基礎力」が、去年2018年に更新されていたんだって!
全然知らなかった・・・タイムリーに情報を掴んでなくて反省。

経済産業省が最初に「社会人基礎力」を提唱しはじめたのは2006年。
職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力を、3つの能力と12の能力要素に整理して定義したものだ。

1.前に踏み出す力(アクション):一歩前に踏み出し、失敗しても粘り強く取り組む力
(1) 主体性:物事に進んで取り組む力
(2) 働きかけ力:他人に働きかけ巻き込む力
(3) 実行力:目的を設定し確実に行動する力

2.考え抜く力 (シンキング):~疑問を持ち、考え抜く力~
(4) 課題発見力:現状を分析し目的や課題を明らかにする力
(5) 計画力:課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力
(6) 創造力:新しい価値を生み出す力

3.チームで働く力(チームワーク):~多様な人々とともに、目標に向けて協力する力~
(7)発信力:自分の意見をわかりやすく伝える力
(8)傾聴力:相手の意見を丁寧に聴く力
(9)柔軟性:意見の違いや立場の違いを理解する力
(10)情況把握力:自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力
(11)規律性:社会のルールや人との約束を守る力
(12)ストレスコントロール力:ストレスの発生源に対応する力

私的にも納得感が高くて使い勝手が良いので、キャリア漫談などで「働く力」について話をする時によく使っている。

特に気に入っているのは、「コミュニケーション」という思考停止しがちな大枠の言葉をちゃんと(7)や(8)に分解していること。そして、ひたすら前に行け!という要素だけじゃなくて、長距離走に耐えられる様に(12)を入れていること。頑張り過ぎて心身を壊す人も少なくない中、本当に大事な要素。

こうして改めて並べて眺めてみても、よく出来ている。
なのに、何故更新する必要があるのか?
経済産業省の方々からのメッセージはこうだ。

「『人生100年時代』や『第四次産業革命』の下で、2006年に発表した『社会人基礎力』はむしろその重要性を増しており、有効ですが、『人生100年時代』ならではの切り口・視点が必要となっていました。
こうした状況を踏まえ、平成29年度に開催した『我が国産業における人材力強化に向けた研究会』において、これまで以上に長くなる個人の企業・組織・社会との関わりの中で、ライフステージの各段階で活躍し続けるために求められる力を「人生100年時代の社会人基礎力」と新たに定義しました。社会人基礎力の3つの能力/12の能力要素を内容としつつ、能力を発揮するにあたって、自己を認識してリフレクション(振り返り)しながら、目的、学び、統合のバランスを図ることが、自らキャリアを切りひらいていく上で必要と位置づけられます。」

そして、「人生100年時代に求められるスキル」として、以下の様に提案している。

(経済産業省「人生100年時代の社会人基礎力」)

うんうん、いいね!
でも、「キャリア意識、マインド」について、これ以上の詳しい記載はない。
力尽きたのかな? 色々なスキルに負けず劣らず、とても大事なことなんだけどな・・・

私なら、マインドには以下の様なものを挙げる。
●感性・・・対人感受性、オープンマインド、多様性受容、共感力 等
●理性・・・自立・自律性、自己認知力、自己管理力 等
キャリア意識については、この連載で説明してきている通りなので省略。

経済産業省は更に、「人生100年時代の社会人基礎力」として、以下の様な図を掲げている。

(経済産業省「人生100年時代の社会人基礎力」-2)

うううううううううううーーーーーーーーーーーーーーん。残念、イケてない。

「目的、学び、統合のバランスを図ることが、自らキャリアを切りひらいていく上で必要」って?
目標に向かって学びと実践のバランスを図るならまだ解るけど。
そして、統合することこそが、キャリアに繋がるんだけどな。

「多様な体験・経験、能力、キャリアを組み合わせ、統合する」ってのも・・・。
キャリアとは、仕事だけじゃない、人生全てが入る広い意味の言葉。なのに、この使い方だとえらく狭い、
お給料をもらう仕事しか入れていない感じ。家事だって育児だって地域活動だって立派なキャリアだよ!

何より、12の基礎力と、3つの視点がどういう関係なのかがよく解らない・・・。

という訳で、大変僭越ながら、齋藤バージョンを作成させて頂きました。
赤字が修正部分です。如何でしょ?

(「人生100年時代の社会人基礎力」齋藤ver.)

皆様のご意見、お待ちしておりまーす。

とにもかくにも。こういう基礎力を高めるためには普段自分が居る、慣れた居心地の良い場所から出て他流試合を沢山するべき。つまり、やっぱりパラレルキャリアがおススメなのだ。

ご意見・ご感想など、下記よりお気軽にお寄せ下さい。

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齋藤 由里子
齋藤 由里子

さいとう・ゆりこ/キャリア・コンサルタント(CC)。横浜生まれ、大阪のち葉山育ち。企業人、母業、主婦業も担う欲張り人生謳歌中。2000年からワーキングマザーとして働く中、日本人の働き方やキャリア形成に問題意識を持ち、2005年、組合役員としてWLB社内プロジェクトを立ち上げ。2010年、厚生労働省認可 2級CC技能士取得、役員を降りた後も社内外でCCとして活動継続。個人・組織のキャリア・コンサルティング、ワークショップ、高校・大学生向け漫談講義などを展開、参加人数は延べ4200名超。趣味は海遊びと歌を歌うこと。 2017年からはCareer Climbing~大人のためのキャリアの学校~も主催。

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