salitoté(さりとて) 歩きながら考える、大人の道草ウェブマガジン

我が書斎、横須賀線車中より

2019-02-5
出来ないからこそ、出来ること

1月はあっという間に終わってしまった。
この調子で、後11か月もあっという間に過ぎちゃうんだろうか?
コワッ。

でも、何となく50歳という節目の歳に憧れていて、その意味で、月日が早く流れるのはちょっと嬉しい。
今年は歳女。夏には48歳になるんだけど、48歳って何となく中途半端だもんね。

カッコいい50歳になるために、私は残りの時間をどう過ごすのか?
キャリア理論的にも「50歳まではキャリアの扉を閉じるな」と言うし、とても大事な時期に来ていると実感中。

そして幸運にも今私は、願っても無いチャレンジが出来る環境に居る。

社内異動で、今まで想像もしていなかった、全く新しい事業をとりまとめる立場に就いたのは昨年7月。
ここまで大きくテーマが変わり、殆ど土地勘の無い領域に足を突っ込むのは2010年以来。

当然、何から手をつけていいか全然解らない。
思いつくままにやってみるしかない。

9月までの3か月は一番近くの人間関係作りをしながら、とにかく組織内部の状況把握と情報整理。
どんな人が居てどんなことを考え、どんなモチベーションで仕事をしていて、今後どうしたいと思っているのか?
それぞれの人間関係やパワーバランスはどうなのか?
これまでの事業の歴史はどんな流れで、どの様な成果をあげたのか?
今何が起きていて、今後の課題は何か?

10月からは2019年度以降の事業計画を作るため、外の情報収集に注力。
業界の中ではどんなプレイヤーが居て、それぞれどういう立ち位置で、何が得意でどういうことをやっているのか?
その組織が持っている課題は何なのか?

それらのプレイヤー達の相互の距離感や関係性はどうなっているのか?
その中で我々組織はどういうポジショニングなのか?どういう期待値を持たれているのか?

これらを考える時に頭をよぎったのは、3つの輪っか

自分の組織が
(1) やれることは何か?(CAN)
(2) やりたいことは何か?(WANTS)
(3) 何をやるべきなのか?=やって欲しいと社会から求められていることは何か?(NEEDS)

この3つの輪が重なる領域でこそ、組織が力を発揮できるというのは個人のキャリアの考え方と同じ。
その重なりの領域が少ないのなら、重なる様に努力をして、少しずつ広げれば良い。

集めた情報を整理して、バラバラだった点を繋ぎ、ありたい姿ややりたいことを図や絵に描いてみる。
経験値の乏しい自分の発想が合っているかは大いに不安なので、組織内関係者に見せて、彼らからも意見をもらう。一緒に議論する。
議論結果をまた整理して、図や絵を描き直す。

その作業を繰り返している内に、ありたい姿ややりたいことの中で、無駄なものや無理なものがそぎ落とされて、段々とシンプルなストーリーになっていく。
ここまでくるプロセスで自然に組織内合意形成が取れて、「みんなで作ったビジョン」になる。
完成したのは12月末。
漸く、スタートラインに立てた。

年が明けてからは、思いついたものはどんどんタスクを立てて、何から手をつけるか順番を考えながら動き出している。

取り組んでいるテーマは、私が所属する組織内にノウハウが余り溜まっていないものなので、ひたすら外に情報を取りに行き、ネットワークを拡げて連携していくしかない。
よって、毎日かなりの頻度で外へ出かけ、初めましての人に沢山会い、刺激を受けて帰ってくる。
実に楽しいのだが・・・

小さい悩みは、道に迷いまくること。
行ったことの無い場所に行くことも多く、毎回Google Mapにかなりお世話になっている。
あれを開発した人にはひたすら感謝しているのだけど・・・

ただでさえスマホ操作が得意じゃないのに、前日まで詰め込んだ情報や受けた刺激で頭が一杯なものだから、余計迷う。
大体、ナビゲーションをスタートさせた時に、どちらの方向に歩み出すかが判らない。
「どっちだ?こっちか?」スマホをくるくる回しながら、軽く2-3分位はロスしてしまう。
歩き始めて暫くして、自分の位置を表す青いマークが動き出して初めて、「あ、合っている」とか、「反対だった」とかが判る。

悲しくなるのは、目的地の住所を間違ってセットしていた時。
先日も、HPの案内では四ツ谷駅から10分のはずが、ナビゲーションでは23分と出て、おかしいなぁと思いながらも素直に従って歩いて行ったら、着いた先は工事中のマンション。
何故か住所を入れ間違っていた・・・。もっと早く気が付けよ、私!
そこから戻ること20分、合計40分近くパソコンと資料の入った重いリュックを背負って歩いたのだった。

これもいつか、達人の様に使いこなせる様になるのかしら?
そう遠くないうちに、タケコプターみたいなものが開発されて、もっと簡単に行きたいところに行ける様にならないかなぁー、ドラえもーーーーーん!

沢山の出会いの中で、改めて思うのは、自分の出来ないことの多さ、知らないことの多さ。
Google Mapを使いこなせない、なんてのは序の口。
今仕事に必要な論文の読み方も、適切な評価方法も知らない。

だからこそ、色々な道の達人に出会い、話を聴き、ワクワクする。
どうやってその道に入る様になったのか?
それまでのキャリアは?転機は?
ノウハウを積み重ねるまでの苦労は?
これからやりたいことは?

ついつい、仕事上のインタビューの中にキャリア・コンサルタントとしてのインタビュー癖が入ってきてしまい、気が付くと約束の時間をオーバーしてしまう、なんてこともしょっちゅう。

この間会った社会福祉協議会の人は、若いのに前半分の髪はツルっと剃っていて、後ろ半分の髪は5cm位の長さで全部立てていて、「なんでその髪型?」と聴いたら「スーパーサイヤ人になりたいんです」だって。
中間支援NPOの男前女子は、「アルゼンチンで女性支援をやっていたと言ったら、お見合いで相手がドン引きするんです」ってぼやいてた。まぁ、そうなるだろうなぁ。

その道の達人になっている人は皆個性が強く、熱量が多く、志が高い。
この人達に「一緒に働いてやっても良い」と思ってもらえる様に、ある程度深い話までは理解できる様に、自分なりに頑張って勉強しようと決意する。

でも、所詮プロには叶わない。
だったら私は、繋ぎ役に徹すれば良い。
あの人とあの人を繋いだら、どんな化学反応が起きるかな?

自分の専門ではないからこそ、冷静に俯瞰する目も持てる。
自分の強みは案外自分ではわからないものだから、それを外から客観的に分析してフィードバックすることも出来る。
それぞれの立場の違いから利害関係が生じたりすることはつきものだけど、それを中立的な立場で、落としどころを見つけるサポートも出来るだろう。

繋がりやすくするために、情報を整理したり、絵を描いたり、場を設定したり、工夫は必要だ。
自分がアレンジした場で、目の前で化学反応が起きたら尚嬉しい。
お見合いおばちゃんの楽しさもこんな感じなのかなぁ。

ステキなお見合いおばちゃんになるために求められるのは、まずはジョハリの窓の考え方。
わらしべ長者の様に、出来るだけ多く化学反応を起こしていくために大事なスキル。

自分が何ものであるか?
出来る限り早く、深く、親密になるために、出来るだけ秘密は無くして、徹底したオープンスタンスで行くのが良い。
盲点の窓が開かれ、更に未知の領域が開かれていくことで、良いアウトプットに繋がる。

もうひとつ必要なのは、“4Cs”。
以前、価値観の軸を探すという記事で書いたものだ。

“4Cs”とは、
(1)Critical Thinking(批判的思考法/論理・科学的思考)
(2)Creativity (創造性)
(3)Communication(コミュニケーション)
(4)Collaboration(協働)
の4つのキーワードの頭文字。

「デンマークの次世代の子ども達に求められる資質」として出て来たキーワードなんだけど、デンマークの次世代の子ども達じゃなくても、これからの時代、どんな立場で仕事をするにも必要な力だと痛感中。

論理的思考が出来なかったら、事象を的確に把握し、物事を本質的に考え、真の課題は何かを探りあてることは出来ない。
適切な課題設定が出来なかったら、その後に考えるどんな計画も戦略も戦術も無駄になる。

創造性が無かったら、過去や人の物真似になってしまう危険性がある。
何より、創造性の無い仕事は面白くない。魅力が無い。

そして、コミュニケーション能力に乏しかったら、人の理解、共感を得ることは出来ない。
人を巻き込めなかったら、協働には辿り着けない。

今、私が新しく出会っている人々で、第一線で活躍している人は、専門性を持っている上に、この“4Cs”に長けている人が多い。

3つの輪、ジョハリの窓、“4Cs”・・・
つまり。
より良いキャリアを築くために必要なスキルは、より良い仕事をするためにも必要なのだ。

私が個人のキャリアの相談に乗る時、
「自分は専門性が無い」「何をやって良いかわからない」
という悩みをよく聞くが、それはよくあること。

人生においては、もし専門性を持っていても、必ずしもその領域の仕事に就けるとは限らない。

一方で、今の時代は色々な専門性が細分化され、それぞれがマニアックに、蛸壺に入りがち。
他方で、世界中に起きている様々な社会課題は一人の人や組織で解決できることなんて少なくて、官民学エトセトラ、多くの立場の違う人や組織が協働しないと解決できない。

だからこそ、今の私の様にお見合いおばちゃん、アレンジャー、ファシリテーター、マネージャーなどの立場に徹するという役は今、あちこちで求められている。
そう確信する、今日この頃。

自分が出来ないことの多さを思い知ること。
自分が出来ないからこそ、各界の達人と出会い、そういう人たちから学ぶこと。
それらのプロセスを楽しみながら。
キャリア形成支援の中で学んだ色々なことを総動員しながら。

どこから登って良いかわからない山の前で、時々途方に暮れ、あちこちで道に迷いながら、ああだこうだのチャレンジは続く。

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齋藤 由里子
齋藤 由里子

さいとう・ゆりこ/キャリア・コンサルタント(CC)。横浜生まれ、大阪のち葉山育ち。企業人、母業、主婦業も担う欲張り人生謳歌中。2000年からワーキングマザーとして働く中、日本人の働き方やキャリア形成に問題意識を持ち、2005年、組合役員としてWLB社内プロジェクトを立ち上げ。2010年、厚生労働省認可 2級CC技能士取得、役員を降りた後も社内外でCCとして活動継続。個人・組織のキャリア・コンサルティング、ワークショップ、高校・大学生向け漫談講義などを展開、参加人数は延べ4200名超。趣味は海遊びと歌を歌うこと。 2017年からはCareer Climbing~大人のためのキャリアの学校~も主催。

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