salitoté(さりとて) 歩きながら考える、大人の道草ウェブマガジン

我が書斎、横須賀線車中より

2018-08-5
楽し過ぎて、やめられない

「本当に、このママ友の繋がりがあるから毎日頑張れる・・・」
そう言って、ホロっと流す涙に、思わず私ももらい泣きをしていた。

先日、朋友に頼まれて開催した、キャリアのワークショップの懇親会での出来事だ。
7人のワーキングマザーが集まっての、ワーク・ライフ・バランスのロングプランシートと、3つの輪っかのワークのグループ・ディスカッションは予想通り盛り上がり、5時間はあっという間に終了。
続く懇親会でも熱いトークが繰り広げられ、仕事をしながら母として、妻として、嫁として、色々と抱え込んで踏ん張るみなさんの言葉に、自分も必死でもがいていた頃を思い出し、何度も胸がきゅっとなった。

渦中に居ると、頑張るのが当たり前。
自分のことは全部後回しにして、いつの間にか自分を必要以上に追い込んでしまうというのもよくあること。でも、自分だけではなかなかその状態に気付かない。
だからこそ、寄り添って、周りから声をかけてくれる仲間の存在が大事。
本当は旦那さんがそういう存在であればベストなんだけど・・・・・・・・・・・・・
残念ながら、なかなかそうは行かないことも多い。

私自身も、今でこそ子育ても大分一段落して、毎日快楽主義的に気ままに過ごしているが・・・
子どもがまだ小さかった頃、一番大変な時には顎関節症になってマウスピースをはめて寝ていた。
何故か奥歯の奥が痛くなって、「親知らずあたりが虫歯にでもなったか?!」と歯医者に行ったら「毎晩必死に歯を食いしばって寝ているみたいですよ」と言われ、口腔外科を紹介されたのだ。
ストレスが多いと、顎関節症になりやすいんだって。
自分が思ったよりタフではないことに気が付いて、ショックだった。

最近は、もうここ何年も熱など出していないが、その頃は冬になると必ず一度、高熱を出して倒れた。
その様子を横で見ていた何人もの人に助けられ、支えられ、その人たちがかけてくれる言葉をきっかけに自分を見つめなおす様になり、何を大事にしたいのかを考え、自分自身を少しずつ開放していった。
「出来ない自分」を許し、重すぎる荷物を卸して、真にイキイキと活きる道を選ぶことが出来た。
離婚してシングルになったのも、その選択の一環だった。

そんな訳で、数々やっているワークショップでも、クライアントがワーキングマザーだと、いつも以上に気合が入る。今回頂いた事後アンケートのフィードバックにも、こんな心の変化や行動の変化が綴ってあった。

●可視化すること、言語化することで、自分のことが明確に理解できるように感じた。
●3つの輪っかの「やりたいこと」の輪をじっと見ていたら、見ないふりをしていた仕事熱が沸々と湧いてきた。
●自分では「やるべきこと」だと考えていた子どものためのことは、もしかしたら自分が「やりたいこと」なんではないかとの気付きは大きかった。自分では気付けていなかった自分の思考パターンが見えた。
●「やれること」は書けるのに「やりたいこと」が書けない自分を自覚。まわりのキラキラしている人をみると「やりたいこと」を必死に楽しくやっていると思う。「自分の人生を生きるとは?」をもっと突き詰めたい。
●⾃分のこれからを⾒つめ直す機会になった。最近はちょっと無難な道を選びがちだったかな。
●ライフワークとライスワーク、2つはイコールだと思いこんでいた。どっちもやればいいんだ!と思えた。
●一人で課題に取り組んでいる時点では見えてこなかったが、皆さんとディスカッションすることでたくさんのヒントを頂き、自分が忘れかけていた自分のエネルギーを再認識することができた。
●「強み」を意識的に磨くことで、本当の武器になるんだと感じた。今まで意識してブラッシュアップしたことはなかったので、今後は意識的に取り組んでいきたい。
●見ないようにしていたお金の問題と向き合えたことも、大きな収穫のひとつ。
●友達や上司に、「私これやりたいの宣言」を実施。
●「どうして周りと比較する必要があるの?」という言葉がいい意味で刺さった。頭では自分は自分とわかっていて、息子にいつも「人は人。自分は自分。比べる必要ないよ」と伝えていた割に自分ができていなかった。他人と比較する癖から自分を解放してあげることが先決だと、早速翌日から実行中。会社に来るとまだ比較してしまうこともあるけれど、比較しないで「自分は自分でいいんだ」と思えたら本当の意味で自分のことが好きになってきた。
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そう、自分のことは、案外自分ではわからないもの。
だからこそ、ワークシートに取り組んだり、皆と話し合ったりする場を通じて「自分の思考や行動を狭めているのは、もしかしたら自分自身かもしれない」と気づけることの価値は大きい。
もっと、自由でいい。
もっと、自分本位でいい。
そして、貴方が思うよりもっと、貴方自身には出来ることがある。

そういう大事なことに、自ら気が付いてくださった皆さん。
嬉しくて、アンケートシートを何度も読み返してしまった。
こんな風に人の生きざまに触れさせてもらえることは楽しいし、光栄だ。
私自身も毎回、沢山のことを学ばせて頂いている。
これだから、キャリア・コンサルタントの活動はやめられない。

この活動を紹介したり、実際にクライアントの立場を経験してもらったりする中で、「私もキャリア・コンサルタントになります」と言われるのも、嬉しいことのひとつ。
これまでの10年間の活動で、少なくとも今までに8人ほど、キャリア・コンサルタントになる方の相談に乗ったり、実際にサポートをさせて頂いたりしている。

先日も、フィナンシャル・プランナーの資格を持っている方が「試験に合格しました!」と報告しに来てくれた。私自身もフィナンシャル・プランナーの資格を取ろうかと思って色々調べたことがあるけれど、覚えることが多くてとても難しそうだし、残念ながらそこまでお金周りの制度に興味を持ち切れないし・・・で、結局やらなかったよ、とほほ。
だから、フィナンシャル・プランナーとキャリア・コンサルタント、両方の資格を持てるなんて、尊敬!
クライアントも安心して、色々と踏み込んだ相談を出来るよね。

私自身、何故キャリア・コンサルタントの資格を取ろうと思ったかと言うと・・・
話は組合時代に遡る。
2005年にワーキングマザーとして初めて組合の専任従事者となり、「育児・介護担当ね」と言われた時にはその守備範囲の狭さにガッカリした。「育児や介護をしやすくする両立支援も確かに大切だけど、一番の問題は働き方だ」と思っていたからだ。長時間労働が当たり前で、生産性の高低や出した成果がどうかより、会社に長く時間をささげられるかどうかの方が重視されやすい風潮や人事制度に、メスを入れたかった。そのためには、人の能力を高めるための人財育成も、適切に配置したり評価したりする人事制度も大事。それらを全部まとめて説明できる様な大きな概念が無いか・・・と色々探して出会ったのが、ワーク・ライフ・バランスというコンセプトだった。

一方で、会社と組合がいくらワーク・ライフ・バランスの旗を掲げて職場の環境を整えても、本人が主体的に自分自身の人生を生きようとし、セルフ・マネジメント出来ないと本質的なより良い人生にはなりにくい。
そして、残念ながら多くの日本人は子どもの頃は親や先生の言う通り、社会人になってからは上司や会社組織の言う通りに従って、自分自身の人生を主体的に、そして自立的に設計する思考と姿勢が育っていない。そこをサポート出来る何かが無いか・・・と探して出会ったのがキャリア・コンサルタントの資格だったのだ。

日本全体では、やはり自立・自律的なキャリア形成や職業観についての課題を解決する手段のひとつとして、2002年に厚生労働省が「官民合同で5万人のキャリア・コンサルタントを養成すること」を目標に掲げた。これがきっかけとなって、雇用・能力開発機構が養成講座をスタートしたのを皮切りに、人材派遣会社、コンサルティング会社、専門学校などが、それぞれ厚生労働省の認可を受けて養成講座と認定試験を始めた。

私は2008年に、組合の関係を辿って日本生産性本部のコースに通い、まずは民間資格を取った。
同じ年、職業能力開発促進法に基づいて、厚生労働大臣の指定を受けたキャリア・コンサルティング協議会が「キャリア・コンサルティング技能検定」を新設。これが国家検定試験であり、国の技能検定制度の一種だというので、私は「経営に対してワーク・ライフ・バランス推進をアピールするのに説得力が出ていいかも!」と考えてその翌年、2009年に出来立てホヤホヤの試験を受けて合格。晴れて「2 級キャリア・コンサルティング技能士」になった。

2016年には更なるキャリア・コンサルタントの増加と質向上を目指して職業能力開発促進法が再整備されて、登録制度なども新しくなった。この制度にお金を払って登録しないとキャリア・コンサルタントと名乗ってはいけないとか、5年ごとの更新義務を果たしなさい、などの縛りが出てきたのもここからだ。

この法律の中で、キャリア・コンサルティングとは、「労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力の開発及び向上に関する相談に応じ、助言及び指導を行うこと。(第2条第5項) 」と定義されている。

でも私的には、それだけでは全然狭い・・・と思う。
私自身は、日本生産性本部で学んだことをベースに、キャリアの定義は「広義のキャリア、ライフキャリア(Life Career)」と捉えていて、
●個人の人生、生き方と、その表現方法
●仕事に限定しない、ボランティアワーク、ライフワーク、家庭内での仕事、地域活動、趣味活動など全て
が入るというスタンスで活動している。
だって、仕事と人生は切り離せるものじゃなくて、相互に深く絡み合ってるんだもん。
ワーク・ライフ・バランスだって、ワーク OR ライフ じゃないよね。

資格を持ったキャリア・コンサルタントは、企業の人事・教育関連部門、大学のキャリアセンター、公的就業支援機関、人材紹介・人材派遣会社など、幅広い分野で活動している。
私自身は今は人事部所属ではないので、個人としてボランタリーに活動中。この連載もそのひとつ。
活動で駆使するスキルとしては、キャリアに関する知識の他、カウンセリング、コーチング、コンサルティング、ティーチングなどがあって、どれも奥深いので、勉強しても勉強しても、し足りない。

私がキャリア・コンサルタントとして掲げている目標は・・・

(1)個人視点
①あなた自身の自己理解を深めること、自己肯定感の醸成をサポートすること
②あなたらしいキャリア・プランの作成をサポートすること
③See・Think・Plan・Do・Check・Actionのサイクルを回すことを含めて、より良いキャリア形成に必要なスキ
ル、スタンス習得をサポートすること
④より良いキャリア形成に必要なフレームワークの理解、使いこなしをサポートすること
→究極的には自律・自立・自助
→そして出来れば、社会の一員&市民として社会へ貢献できる人となって、互助、共助、公助の一翼を担える様になって頂くこと(キャリア・コンサルタント活動もそのひとつ!)

(2)組織視点
①生産性向上を伴い、働き甲斐向上に繋がる働き方改革の実践
②女性の管理職登用や外国人活用だけではないダイバーシティの実現
③育児・介護支援だけではないワーク・ライフ・バランスの推進
④仕事だけでなく、人生を丸ごとマネージメントするキャリア開発支援
→密接に絡みあう諸活動(ワーク・ライフ・バランス、働き方改革、ダイバーシティ、キャリア開発支援)の融合
→諸問題のベースにあるコミュニケーション・インフラの改善

と、えらく欲張っている。
勿論、私一人で出来ることには限りがあるけれど、一人ひとり仲間が増えれば、少しずつ実現に近くなるんじゃないかと本気で思っている。

でも、そんなに大上段に構えなくても、純粋にやりたい、という気持ちが原動力。
だって、この活動をやっていて、楽しくなかったことが無いんだもん。
だから、時間もエネルギーも投入することが、全然嫌じゃないし当たり前。
楽し過ぎて、やめられないんだよね!

ここまで読んで、キャリア・コンサルタントというものに、ちょっとでも興味を持って下さったならば。
是非是非、ご遠慮なくお声がけください!

ご意見・ご感想など、下記よりお気軽にお寄せ下さい。

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齋藤 由里子
齋藤 由里子

さいとう・ゆりこ/キャリア・コンサルタント(CC)。横浜生まれ、大阪のち葉山育ち。企業人、母業、主婦業も担う欲張り人生謳歌中。2000年からワーキングマザーとして働く中、日本人の働き方やキャリア形成に問題意識を持ち、2005年、組合役員としてWLB社内プロジェクトを立ち上げ。2010年、厚生労働省認可 2級CC技能士取得、役員を降りた後も社内外でCCとして活動継続。個人・組織のキャリア・コンサルティング、ワークショップ、高校・大学生向け漫談講義などを展開、参加人数は延べ4200名超。趣味は海遊びと歌を歌うこと。 2017年からはCareer Climbing~大人のためのキャリアの学校~も主催。

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