2017-02-5
価値観の軸を探す
今、息子の大学受験の真っ最中。
2月下旬に控えている試験に向けてドキドキ、ピリピリ・・・・・・
のはずが、何故か願書を出す前から、呑気に入学後の話題で持ちきり。
「やっぱり布団直敷きじゃなくて、すのこ状ベッドがいいよ、黴るから。」
「そうだね、炬燵も欲しいなぁ~」
「いっそベッドは買わないで、1年中炬燵で済ます?」
「掃除機買っていいの?ルンバがいいなぁ~」
「アホか!私だって持ってないのに。どうせ狭い部屋なんだから雑巾で十分」
「雑巾洗うの面倒くさい~」
「じゃ、クイックル・ワイパー」
「あれ好き!でもペーパーを変えるのが面倒くさい」
「食事はどうせ作れないから全部学食で食べるよ、年間パスポートがあるんだって!」
「おお、使いきれなかったら返金システムまである、懇切丁寧!でもさー、このパンフレットを熟読する前に、勉強すべきじゃない?」
「うん、でもって、締め切り近いから先に願書を書くべきじゃない?」
・・・・・・・・・私達が悪いんじゃない。
大学や大学生協から取り寄せた「入学準備資料」のせいだ。
でも息子よ、ちゃんと集中しないと、来年の今頃同じ会話をすることになるぞ。
たしなめつつ、つい私自身も自分の4月からの生活に想いを馳せて、色々シミュレーションしてしまう。
母になってからもうすぐ18年、シングルになってからは12年。
相当乱暴で雑な育児だったけれど、沢山の人に支えられたお蔭で、息子は心身共健康に育った。
親業も、残すところ手間がかかるのは受験応援、卒業式への出席、新生活の準備応援くらい。
後2か月弱で巣立ち、物理的には手を離れ、私のミッションは学費を稼ぐのみになる!
・・・・・はず。あくまで、受験が上手く行けばの話なんだけど。
もしも上手く行ったら、これまで母業・主婦業に割いていた時間を、どう使う?
これからの人生、どう歩む?
そんな妄想を膨らませながらめくっていた文藝春秋2月号。
奇しくも昭和の大女優のキャリアストーリー特集が組まれていて、食い入る様に読んでしまう。
例えば、山本富士子さん。
各種の女優賞を受賞する実力と、読売新聞の「日本映画女優ベストテン」で3年連続1位に輝く人気を誇った、昭和30年代を代表する女優。
終戦の翌年に初代「ミス日本」となり、その後大映から女優デビュー。10年で103本の作品に出演、様々な名監督から指導を受けて実力をつけ、「ミス日本」の冠を越える名声を掴む。更なる挑戦として自分が出演する作品を選ぶため、また結婚して家庭と仕事を両立するため、フリーとなって他社映画への出演を模索するが、当時の映画会社による<専属監督や俳優を引き抜いたり他社作品に参加したりすることを禁止する>協定により、映画界から締め出されてしまう。そこでテレビドラマや舞台に活路を見出し、まだ映画の俳優や女優がテレビや舞台には出演していなかった時代に、新たなキャリアの道筋を築いた。
例えば、岸恵子さん。
昭和28年『君の名は』の真知子役で一世を風靡、日本だけでなく国際派女優としてフランス、スペイン、ハリウッドの映画界でも活躍する一方、小説やエッセイ、ルポルタージュも手掛ける文筆家でもある。
大学入試直前に乞われて出演した映画が大ヒット、大学進学をやめ女優街道に進む。数年間で『君の名は』含め多数の映画に出演するも、「言われるがままに映画に出されるのはやめよう」と決意、作品重視の制作会社を有馬稲子らと立上げ。その一方運転手付、付き人付の「一世を風靡するスター」岸恵子と別人格である本当の自分とのギャップに悩み、ありのままの自分を受け入れ面白がってくれたフランス人映画監督のプロポーズを受け渡仏。フランスでもジャン・コクトー演出の舞台へ出演するなど活躍。それでも日本で、日本語で演じることに拘り、数々の映画やテレビドラマに出演、日本滞在の頻度があがったため離婚。以後40年間はシングルとして女優業、文筆業に邁進。
時代背景も選んだ職業もスケールの大きさも全く違うので、一見全然参考にならなさそうだが、
・自分の価値観を大切にすること
・時には逆風が吹いても自分で自分の人生を切り拓くこと
・年齢に関係無く成長を求め、チャレンジし続けること
の大切さをヒシヒシと感じるキャリアストーリーで、大いに触発される。
特に大切なのは、「自分の価値観を大切に」、ということ。
では、私の価値観とは、一体どういうものなのか?
先月、この連載のテーマは私の“お気に入り”についてだった。
興味・関心は具体的なことなのでハッキリ自覚があるけど、そのベースにある価値観を探っていくことって、人には言う癖に自分自身はしっかりはやってきてなかったなぁと反省。
そもそも価値観の軸には、探るべきタイミングというものがある。
それは人生で何かに戸惑った時、何かの節目を迎えた時。
真っ先に思い浮かぶのは、就職活動の時かもしれない。
イマドキの学生には「絶対内定」なんて怖いタイトルの本があって、何十枚というワークシートで幼少期の頃まで遡って自己分析をするそうな。
でもさー。私自身振り返っても、学生時代に自分の価値観の軸なんて全然定まっていなかった。
考えも浅はかで、極楽トンボもいいところ、ワーキングマザーになることも想像すらしていなかった。とにかく働いて自立したい、それしか考えていなかった。社会に出て流れに乗り、時に流され、溺れ、公私に渡り沢山の人に出会い、深く関わって怒涛の様な経験をして、世の中の酸いや甘いを少~し味わったかな・・・と思えた頃、多分30代半ば頃になって漸くベースが出来てきた様な気がする。
これからだって更に変わるだろうし、それを楽しみにしている。
だから、学生にキャリア漫談をする時には「ありもしない自分探しはやめた方がいい」と唱えている。
経験値の浅い学生の段階で掘り下げて何かを掴んだとしてもそれは参考程度の軸であって、それだけに固執してしまったら逆に将来の可能性を狭めてしまうから、そこはよくよく注意して欲しい。
逆に社会人になったら、価値観の軸はその後のキャリアを主体的に描くのにとても必要なことなので、「基本的に変わっていくものである」という前提のもと、何かの節目節目に探ってみてその変遷を眺めるのが良い。
やり方には色々ある。
私自身もMBTI分析とか、エゴグラムとか、そういう性格分析みたいなことは何度もやったことがあるのだけど、誰かに決められた選択肢の中“だけ”で分類されることに少し窮屈感を感じていた。
そして回答する中で、本当に今現在事実として「そう」なのか、「そうありたい」「そう見られたい」と思って回答してしまっているのか、その線が微妙だなぁ・・・と感じて、ある結果を得てもそれをしっかり認識し続ける程の手応えは得られなかった。
そこでまさに人生の節目を迎えようとしているこのタイミングでは、この種の診断テストを利用するのはやめた。キャリアコンサルタント仲間Wに教えてもらったやり方で、自分の過去の経験の中で、楽しかったこと、嬉しかったことを想い出し、そこから
「何故それは楽しかったのか?」
「何故それは嬉しかったのか?」
と価値観を掘り下げて言語化する取り組みをやってみた。
出て来たのは、こんなキーワード。
個性、皆が主役、1+1>2(チームのパワーが最大化)、行動、本質的、無駄が無い、クリア(明快であること)、刺激、学び、成長、自由、本能、クリエィティブ、ユーモア、自然、美しい・・・
まだまだ絞り切れていないけど、何となく掴めてきた感じ。
これを眺めながら考える。
4月から得られる(はず)の時間は、何らかの本質的な、自由でクリエィティブな学びに充てて刺激を受けて成長したい。自由でクリエィティブってのが大事だから、例えば大学に入りなおして座学でカリカリ勉強するのはしっくり来ない。もっとリアルに現場で学びたい、何がいいんだろうな・・・
そんなことを考えていた折り、デンマーク在住の朋友めいちゃんから興奮するキーワードを教えてもらった。
それは、“4Cs”。
“4Cs”とは、
Communication(コミュニケーション)
Collaboration(協働)
Creativity (創造性)
Critical Thinking(批判的思考法/論理・科学的思考)
の4つのキーワードの頭文字。
これはめいちゃんが、デンマークの教育について調査した折、科学教育推進団体の人にインタビューの中で「デンマークの次世代の子ども達に求められる資質」として出て来たキーワードだそうな。
(詳しくはこちら)
でもこの4つは、次世代を担う子ども達だけでなく、今、私達世代にとっても大事なこと。
私の価値観にあるキーワードも、この4つの中に幾つもプロットされる。
Communication
Collaboration:皆が主役、1+1>2(チームのパワーが最大化)
Creativity and innovation:個性、刺激、自由、クリエィティブ、学び、成長
Critical Thinking and problem solving:本質的、無駄が無い、クリア(明快であること)
間もなく、母業の一段落というキャリアの転機を迎えるこの時に、こんなキーワードに出会えるとは!
嬉しくなって、このキーワードを私になりに図に描いてみた。
よし。
私の4月からの学びは、この4つの要素をはずさない様にしよう。
そして、一方的に学ぶだけじゃなくて、この4つにつながるアクションを起こそう。
勿論、全ては受験が上手く行ったら、の話だけどね。
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