salitoté(さりとて) 歩きながら考える、大人の道草ウェブマガジン

我が書斎、横須賀線車中より

2016-05-5
3つの輪っか

うちのタニクンに花が咲いた。

タニクンとは、息子が名付けた、多肉植物。
雑な性格のせいで、動植物を育てるのが苦手な私にピッタリだと、5年前に我が家に連れてきた。
来た時は6人だったが、残念ながら2人はすぐにお亡くなりになった・・・。

残りの4人はすくすく育ち、週に一度あるか無いかの適当な水やりの間に、つい先日、黄色い、小さい小さい花を咲かせているのを発見したのだ!
わーい!タニクン、よく頑張ったね!

嬉しくなって、初めてこの子達の本当の名前(種類)が気になり、ネットで調べてみた。
肝心の名前は・・・よく解らなかった。
その代わりに、私の育て方、というか放置の仕方は、普通の多肉植物の育て方とはかなり違うことを知った。

うちの子達は、一つの鉢の中で4人それぞれに自由奔放に育っている。
中でも、お花を咲かせている気合の入った1人は、ニョキニョキと枝の様なものまで持っている。
ところがこの枝は、「徒長」と言って景観的に余り望ましくなく、徒長してきたら切って植え替えるものらしい。
お花が咲くと多肉の養分を持っていかれるので、あまり良くないと書いてあったりもする。
がーーーーーん。

確かに、ネット上の画像に現れる、きちんと手入れされた多肉植物たちは整然としていて、見目麗しい。
我が家のは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
さながら野生の雑草。

で、も。
「見た目を美しくしたい→だからアレコレ剪定すべき」というのは、人間側の勝手な言い分。
この子達はどう思っているの?
本当はどうしたいの?
枝を伸ばし、花を咲かせたいのでは?
人間のエゴで、勝手に枝を切ったりしていいの?

タニクン、しゃべってくれたらいいのにさ・・・。

そんなタニクンを見ながら、ふと、自分のことを振り返る。

私は、しゃべることができる。
そして、タニクン達の様に、誰かに飼われている訳でもない。
なのに、自分自身をコントロールできなくて、「やるべきこと」に押しつぶされて、「やりたいこと」をないがしろにしてしまう事がある。
歳を重ね、社会の常識という奴や、ルールと呼ばれるシロモノを知り、そして責任が重くなればなるほど、そうなりがちだ。

「どうしたいの?」かを考えるべきなのに、「やるべきこと」ばかり頭に浮かぶ。
なのに、「どうしたいの?」と問い続けてしまうと、苦しくなる。
どこか遠くに、本当の欲求を置いて、押し込めてきてしまっているから。
その存在すら、忘れてしまう程に。

そんな時は、「どうしたいの?」という問いから一度離れる。
代わりに、「私が楽しいと思うのは、どんな時?」と問うてみる。
そして、少しずつ、少しずつ、「やりたいこと」につながる本能的な欲求を探していく。

「やりたいこと」を見つめ続けることって、自分の人生の主人公で居続けるために、とても大事なこと。
でも、とても難しいんだよね。

そんな時に、私がキャリア・コンサルタントの端くれとして使うのが、これ。
「やりたいこと」と「やるべきこと」に「やれること」を足してできる、3つの輪っかだ。

この3つの輪っか、
「今、あまりハッピーじゃないわ・・・」
と悶々としている時、
「オレ、一体これからどうしよう・・・」
と進むべき方向性に悩んでいる時などに使うと、少し頭の中が整理されてよい感じ。

例えば会社に入りたての新人の頃。
もっとやりたい仕事があるのに、誰も聞いてくれない、上司も全然許してくれない・・・なんて悩み、よくあったなぁ。
思い返せば、まだまだ、実力と信頼貯金が無かった。

まず、自分が期待されている「やるべきこと」は何か?
見極めて、その期待値にしっかり応える中で、段々「やれること」が増えていく。
そうすると、実力と信頼貯金が溜まる。

そのうちに、「やりたいこと」をやらせてくれるようになったっけ。
最初は口もきいてくれなかった怖~い怖~いオツボネ様が、段々優しくなってオヤツをくれたりもして。
(私がこっそり、「クルエラ」と呼んでいたあの人―――だって、101匹ワンちゃんに出てくるクルエラにそっくりだったんだ―――今頃どこでどうしてるのかな。)

例えば、ふと鏡を見たら、自分の目が死んでいる時・・・。
それは多分、「やれること」の限界に来ているか、「やるべきこと」に押しつぶされている証拠。

そんな時はきっと、呼吸も浅くなっているから、まずは深呼吸。はぁぁぁぁぁ。
そして毎日の中で、15分でもいいから「やりたいこと」に時間を割くことで、心と体のバランスを取りたい。

私のやりたいこと、一杯あるよ。
海に行く、大好きで安心できる友達にぶちまける、好きな本を読む、野菜の千切りをしまくる、好きな歌を大声で歌う、好きな音楽を聴く・・・

この間、昼間の出来事に家に帰った後から腹が立ってきて、それに加速度がついて、どうにもならなかった時に聴いたナット・キング・コール。
沁みたなぁ・・・。
お蔭で、激怒した夢を見なくて済んだよ。

例えば、仕事なのに、ものすごく楽しくて、時間の経つのも忘れる時。
キャリア・コンサルタントとして学生にキャリア漫談をしている時なんか、まさにそう。
いつも楽しすぎて、自分のテンションの針は赤いゾーンに振り切れる。
学生には、落ち着きのない大人だと思われている、絶対に。
終わると、ああー、早くまた次の機会が来ないかな、と思う。

その理由は、この活動が、3つの輪っかの重なっている部分だから。
人は、「やりたいこと」で、「やれること」で、そしてそれが世の中から求められている「やるべきもの」である時、最高のやりがいを感じることができるみたい。

だから、充実したキャリアを作っていくためには、この重なりをいかに広げていくか、が大事。

あなたにとって、そういうものってありますか?
それは何ですか?

ご意見・ご感想など、下記よりお気軽にお寄せ下さい。

4件のコメント

こんにちは。
先日のmy future campus 参加したものです:)
3つの輪活用してみますね‼︎
あと文藝春秋もチェックしてみます。

by さやか - 2016/05/17 11:01 AM

さやかさん、先日はお疲れ様でした!
こちらも早速読んでくれて有難う。
自分の中の可能性を信じて、沢山リアルな経験をして、色々な人と深いコミュニケーションを取って、3つの輪の総和をどんどん広げていってくださいな♪
またいつか、お目にかかれるのを楽しみにしてます。

by 齋藤由里子 - 2016/05/18 7:26 AM

いま息子とあるテーマに取り組んでいます。
QP姫さまの「三つの輪っか」ということで考えてみました。
「やりたいこと」「やれること」「やるべきこと」を自己完結で考えると、その三つの重なる部分が見えてきます。
息子も多分これで考えると自分なりの重なる部分が見えてくるんだと思うのですが、お互いがお互いを推測するとき「三つの輪っか」の重なる部分に多少のズレが生じる。
「三つの輪っか」を人数分重ねていくと、すべての面が重なる部分を広くしていくことって、なかなか手強いなと思っています。

by 海おやじ - 2016/06/24 11:24 AM

海おやじさん、何なに?
3つの輪っかの使い方でも、すっごく上級者編に挑んでますね?!
おっしゃる通り、ある人にとってのやりたいことは、別の人のやるべきことになってしまったり…難しい場面も出てきますよね。
息子さんの感想やいかに?
是非、ある程度進化したら、また進捗報告をお願いします!

by 齋藤由里子 - 2016/07/06 9:11 PM

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齋藤 由里子
齋藤 由里子

さいとう・ゆりこ/キャリア・コンサルタント(CC)。横浜生まれ、大阪のち葉山育ち。企業人、母業、主婦業も担う欲張り人生謳歌中。2000年からワーキングマザーとして働く中、日本人の働き方やキャリア形成に問題意識を持ち、2005年、組合役員としてWLB社内プロジェクトを立ち上げ。2010年、厚生労働省認可 2級CC技能士取得、役員を降りた後も社内外でCCとして活動継続。個人・組織のキャリア・コンサルティング、ワークショップ、高校・大学生向け漫談講義などを展開、参加人数は延べ4200名超。趣味は海遊びと歌を歌うこと。 2017年からはCareer Climbing~大人のためのキャリアの学校~も主催。

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