salitoté(さりとて) 歩きながら考える、大人の道草ウェブマガジン

我が書斎、横須賀線車中より

2016-03-5
言葉のちから

記念すべきvol.1に書いた「なんで?なんで?なんで?」。
思ったよりも反響があった。
感想をお寄せくださった皆様、有難うございました。

奇しくも魚見さんが同じテーマで書いてくれていたけど、NHKの朝ドラ「あさが来た」の主人公も連発しているそうな。
テレビを観ないので知らなかったのだが、意外に旬なテーマだったのね。
そして、電車の宣伝広告『超一流の雑談力』にあった、「『なぜですか?』と聞いてはいけない」、実は同じく私も注目していた。
「なんでよ。そんな空気読んだ薄い雑談なら要らないよ」と無意味に鼻白んだりして。

今も、誰のために「なんで?」を問うのか・・・引き続き考えさせられている。
自分のための「なんで?」。
あなたのための「なんで?」。
みんなのための「なんで?」・・・

「なんで?」には、ある種の覚悟が要る。
時には返り血を浴びることも、パンドラの箱を空けた後のことも、引き受けるつもりで聞かねばならない。
でも、その覚悟を決めて、目の前の人に真剣に相対すると、予想以上のギフトに出会うことも多い。

そこで使われるのは、言葉のちから。
「なんで?」を繰り出すにも、それに答えるのにも、言葉を使う。

テレパシーが使えて、相手の目をじっと見ればわかる、なんてことになったらちょっと面白い。
でもそれ以上に・・・怖い。いや、わかり過ぎてしまったらウルサい。

大体、頭の中でまとまっていない、モヤモヤした状態と、
ひとつの塊にして、言葉にして、口から実際に出してみるのとでは、大違い。
自分が放った言葉に、聞いた相手よりも、自分自身の方がビックリすることだってある。

先日、ひょんなキッカケで、珍しく自分の方がカウンセリングをされる、という体験をした。

「あなたが人生で、一番求めているのは、欲しいのは何?」
「えー、私、求めているものなんかあるかなぁー?有難いことに、欲しいものや環境は大体持っているのよ。可愛くて面白い息子が居て、友達にも恵まれて、大好きな海の近くに住んでいて、仕事もあって、食べるものに困らなくて、時々音楽も楽しんだりして・・・」
「違う違う。それって全部外的環境のことじゃない。もっと、心の状態として何を求めているのかを聞いているのよ?」

わーお、確かに!
私ったら余りに即物的な感じ。あかんやん。
改めて、宙を見つめて、じっくり考えて、考えて、考えて、出てきた言葉は。

「穏やかな気持ち。」

口から出して、自分でビックリ。
そうだったんだー、私。

「穏やかな気持ち?なんで?」

相手に問われ、自分でもうーんと考えこんでしまった。
さぁ、なんでだろ?

そこから更にカウンセリングは続き、この後、私自身、なかなか自分の“気持ち”を言葉にできないという体験をした。
あった事実についてはスラスラと説明できるのに、自分の“気持ち”となると、適切な言葉がちっとも浮かんで来なかったのだ。

カウンセリング後何日か経った今。
自分で発した「穏やか」という言葉は、自分が思った以上に頭の中にドップラー効果を伴って鳴り響いてる。
自分でも、今まで気が付かなかった自分の欲求。
言葉のちからって、スゴい。

でも、私の脳みそで考えて形にした言葉の全てが、私の“気持ち”や思考を表してくれる訳じゃない。
まだまだ、言葉にしきれない、モヤモヤ、フワフワした何かが一杯ある。はず。
言葉のちからには、限界がある。

カウンセリングをしてくれた彼女からの宿題は、
「頭で考えるな、お腹で感じろ。」

これって、すごく、すごく難しい。
特に私にとっては。

とにかく、何でも頭で考えて、チャッチャと整理してしまう癖がついているから。
言葉にしない限り、自分でハッキリ認識できない、理解できないと思っているから。

仕事をする上では、この頭の中で言葉にする癖は、とても便利。
でも、自分自身の心を見つめるには、不便。
急いで、無理やり言葉にしようとすると、心の奥底は覗けずに、表面だけをさーっと撫でて終わりになってしまうのだから。

頭じゃなくて、お腹で感じるって、どーやるの???
感じた後って、そのままでいいの?
言葉にして、自分でハッキリ認識しなくていいの?
あ、また頭で考えてるよ、おい・・・

自分がカウンセリングやコンサルティングをする時には、ひたすらクライアントに、言葉にすることを求める。
悩み事を整理して、解決に向かわせるのに、言葉にして書いたり、話したりすることはとても効果的だからだ。

でも、言葉に出したことが全てじゃない。
言葉が浮かんでくるのをじっくり待つことや、一端言葉にしても、「本当にそれだけ?」と疑うこと、何より、感じているのを感じることも、きっと大事なんだなぁ。

言葉のちからとその限界。
“Don’t think. Just feel!”って言ったのは、ブルース・リー。
言葉に頼り過ぎると、言葉を磨き過ぎると、感性が鈍るのかな?
うーん、難しい。
アチョーッ!!!

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齋藤 由里子
齋藤 由里子

さいとう・ゆりこ/キャリア・コンサルタント(CC)。横浜生まれ、大阪のち葉山育ち。企業人、母業、主婦業も担う欲張り人生謳歌中。2000年からワーキングマザーとして働く中、日本人の働き方やキャリア形成に問題意識を持ち、2005年、組合役員としてWLB社内プロジェクトを立ち上げ。2010年、厚生労働省認可 2級CC技能士取得、役員を降りた後も社内外でCCとして活動継続。個人・組織のキャリア・コンサルティング、ワークショップ、高校・大学生向け漫談講義などを展開、参加人数は延べ4200名超。趣味は海遊びと歌を歌うこと。 2017年からはCareer Climbing~大人のためのキャリアの学校~も主催。

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