salitoté(さりとて) 歩きながら考える、大人の道草ウェブマガジン

我が書斎、横須賀線車中より

2016-02-5
なんで?なんで?なんで?

「あなたのことが好きだ」
と言われると、
「なんで?どこが好きなの?具体的に教えて?」
と訊いては、よく相手を困らせた。

「これやっておいて」
というシンプルな指示で終わらせてばかりの上司に、
「もう少し、この仕事の背景とか、ゴールイメージとか、教えて頂けませんか?」
と訊き、
「うるさい、つべこべ言わずやれ」
とキレられ、
「何言ってるんですか!今後、自分なりに考えて応用を効かせるためにも説明するべきでしょう!じゃないと指示待ち人間になりますよ!」
と逆ギレしたことも。
あれは入社何年目のことだったっけなぁ・・・。

私は小さい時から、「なんで?」が頭に浮かぶと、ほぼ同時に口をついて出てしまうタイプ。
昔、国営放送の教育番組に「ミルちゃん」「キクちゃん」「なんだろうくん」という3人の人形が登場する番組があったが、断然「なんだろうくん」に親近感を持っていた。
3人の中ではボケ役だったんだけど・・・

この「なんで?」癖が勉強方面に向かったら大成したかもしれないが、残念ながらそうはならず。
思い返せば、問うてきた対象はひたすら、人の思考、行動、組織の仕組みに対してだった。

「なんで?」を平気で聞くということは、ある種空気が読めないということでもある。
いわゆる体育会の人なら、まずは黙々とやるべきことを、場合によっては問うことすら禁じられていることを、そう素直にはやれない。
「なんで?」の先も、疑問に思ったら問い続ける。
自分が納得しないとやらない。生意気なのだ。

「なんで?」の迷惑についてハッキリ自覚したのは遅い。
多分30歳を過ぎてから。
それまで、どれだけ多くの人たちをムッとさせ、困惑させ、面倒くさがらせてきたことか・・・。

わからなかったのは、私にとっての普通は
・疑問に思ったら“その場で”“その時に”訊く。
・訊かれたら、興味を持ってくれたということだから、嬉しい。
・訊かれたら、自分の考えや行動の根拠を、言葉を尽くして説明したい。
・・・だったから。
これは、他の人たちにとって、全然普通のことじゃないらしい。

それ以上に、私の一番質の悪かった誤解は、「何でも白黒ハッキリ言語化できる」、と思っていたこと。
これは、誤解を通り越して、おこがましい。

大分大人になってから、「なんで?」と疑問に思ってもあえて訊かないとか、沈黙を待つとか、そういうことの大事さ、そして何より、言葉にできないこともある、ということも、少~しずつわかってきた。

でも同時に、大人になってくるにつれ、私のこの「なんで?」が歓迎される場面も増えてきた。
例えば取材。
例えばファシリテーション。
例えば、個別のキャリア・カウンセリング。
とても有り難い。そして嬉しい。

だって、うんと打たれたり、うんと凹んだりしながらも、やっぱり「なんで?」を問い続けてきた私の人生だったから。
「なんで?」を繰り返してきた結果、ワーク・ライフ・バランス支援や、キャリア形成支援というライフワークにも出会えた。
「なんで?」を厭わない、素敵な仲間も増えてきた。

世の中、白黒つかない、グレーの方が多い。
言葉を尽くして説明しようとしても、説明がつかないことがある。

その限界をわかった上で、やっぱり、「なんで?」って大事だと思う。
5W1Hの肝は、WHYだ。
WHYがあって、初めて他の4W1Hを決める、そして極めることができる。

あなたは、わたしは、なんでそうしたの?
あなたは、わたしは、なんでそうするの?
あなたは、わたしは、なんでそうしたいの?

「なんで?」を問い続けることで、本質に迫ることができる。
思考や行動を深められる。

運とご縁とタイミングが合っていただいた、この連載の機会。
私のささやかな、でも意外としつこい「なんで?」にお付き合い頂けたら嬉しいです。
どうぞよろしく。

ご意見・ご感想など、下記よりお気軽にお寄せ下さい。

2件のコメント

「なんで?」って聞く癖?というか行動。
私も心理的にはよく思う方です。さすがに「なんで?」と聞けない場面やお相手もいるので、そういときは頭の中で「なにをこの人は考えているんだろう?」とひたすら考えちゃう。
以前娘から「お父さんのコメントはやたら?マークが多いから返事するのに困る(笑)」と以前言われたことがあります。
私も相当質問癖があるらしく、相手を困らせているかも(^ ^)

by 海オヤジ - 2016/02/07 11:10 AM

海オヤジさん、コメント頂き有難うございます。
お嬢さん、鍛えられていいですね!
お互いに、TPOを適宜考える努力をしながら(笑)、引き続き「なんで?」を繰り出して参りましょう。

by 齋藤由里子 - 2016/03/06 9:20 PM

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齋藤 由里子
齋藤 由里子

さいとう・ゆりこ/キャリア・コンサルタント(CC)。横浜生まれ、大阪のち葉山育ち。企業人、母業、主婦業も担う欲張り人生謳歌中。2000年からワーキングマザーとして働く中、日本人の働き方やキャリア形成に問題意識を持ち、2005年、組合役員としてWLB社内プロジェクトを立ち上げ。2010年、厚生労働省認可 2級CC技能士取得、役員を降りた後も社内外でCCとして活動継続。個人・組織のキャリア・コンサルティング、ワークショップ、高校・大学生向け漫談講義などを展開、参加人数は延べ4200名超。趣味は海遊びと歌を歌うこと。 2017年からはCareer Climbing~大人のためのキャリアの学校~も主催。

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