salitoté(さりとて) 歩きながら考える、大人の道草ウェブマガジン

そらのうみをみていたら。

2010-11-25
「戦場カメラマン」と
エンタテインメント

キムタクからくるりの岸田くんに心移りしてから(ほんとにどうでもいいことだけど)、めっきり観なくなっていた「スマスマ!」を久しぶりに観た。

ビストロのゲストは「戦場カメラマン」の渡部陽一さん。

録画したドラマ以外はほとんどテレビを観る習慣がないので、この渡部さんのことはぜんぜん知らなかった。ビストロに出るぐらいだから、注目の人なのだろう。それはすぐに理解できた。中居くんの巧みな(!?)司会術でなくともつっこみどころ満載のキャラクター。

慣れると平気なんだろうけど、渡部さんが面白おかしくお話するエピソードと「戦場」という言葉に違和感を覚えた。

ご本人も「毎日が自分でもよくわからない」と話していたが、私もなぜ、スマスマに出ているのか、よくわからないと思った。

でも、やっぱりキムタクは好きなので(苦笑)機嫌よく見ていた。実際に戦場で撮影をするときの持ち物や使用するカメラ、防弾チョッキなどの話をしていく中で、キムタクが渡部さんに「いま、いちばん気になるところはどこですか?」と質問をした。

すると渡部さんは「いま、この瞬間も戦争をしているアフガニスタンです。アフガニスタンでは、女子が教育を受けることが制限されたり禁じられてきた。世界のいろんな支援で学校が建てられ教育が受けられるようになっているけど、教育によって女性が社会性をもつことをいやがる悪い人が女学校を襲撃している」と話した。

このコラムの最初にも書いたけれど、9.11のあと、私はどうすればいいのかわからなくなって、戦場やその近くにいる人たちを支援している人に会うことがあった。その中に、アフガニスタンで女学校の建設をサポートしているという方もいて、実際に訪れたときの写真をみせてもらったりもした。

あの女学校はだいじょうぶだろうか…。

その当時、関心をもったところで続けられなくて、逃げるように連絡をとらなくなった。

そして渡部さんの話を聞いても、やはり私はなにもできない。

だけど、渡部さんがスマスマに出てくれて、よかったと思った。

そのキャラクターはテレビのことだから、飽きられてしまうかもしれないけど、チャンスがある限り、もっと伝えてほしいと思った。

「知になるピープル」でご登場いただいている映画監督の塩屋俊さんは「この時代の閉塞感を救えるのは、希望や生きる力を与えるには、エンタテインメントの人間じゃないか」と話してくださった。

最新作「ふたたび swing me again」ではハンセン病という重いテーマを道徳的な見せかたではなく、エンタテインメントとして人に興味をもってもらう作品に描いている。

戦争、病気、政治、経済…これらのことを「面白く」とか「楽しく」表現するって、戸惑ってしまう自分もいる。

けど、そこにエンタテインメント性をもたせることは、今の時代というか、精一杯に今を生きる人たちのことを、ちゃんととらえているんだろう。チャレンジしてるというほうがいいのかな。

実際、私は真面目で深刻そうなことに、正直、あまり気持ちが向かない。自分のこととしてうまく考えられなくて、よくわからなくなるし、どっかで疲れてしまうから。

自分の生活から遠く離れたことに、継続してなにかをすることはできない(難しいといいたいけど、やっぱりできない)。けど、渡部さんが渡部さんなりの表現で知らせてくれたことで、自分のことや自分の周りのことに、なにか変化を起こすことができる気がした。

ご意見・ご感想など、下記よりお気軽にお寄せ下さい。

1件のコメント

一番大事なことは世界平和ということですよね

by 通りすがり - 2012/10/15 7:09 PM

コメントする ※すべて必須項目です。投稿されたコメントは運営者の承認後に公開されます。


コメント


魚見幸代
魚見幸代

うおみ・ゆきよ/編集者。愛媛県出身。神奈川県在住。大阪府立大学卒業後、実家の料理屋『季節料理 魚吉』を手伝い、その後渡豪し、ダイビングインストラクターに。帰国後、バイトを経て編集プロダクションへ。1999年独立し有限会社スカイブルー設立。数年前よりハワイ文化に興味をもち、ロミロミやフラを学ぶ。『漁師の食卓』(ポプラ社)

そのほかのコンテンツ