salitoté(さりとて) 歩きながら考える、大人の道草ウェブマガジン

そらのうみをみていたら。

2014-06-6
お伊勢参り

GWに映画をみていたら、樹木希林さんが旅する『神宮希林 わたしの神様』の予告が流れた。
昨年20年に一度の式年遷宮が行われた伊勢神宮を樹木希林さんが人生ではじめてお参りするドキュメント。
いつもなら、映画でわざわざ観なくてもいいかと思ってしまいそうなところ、GWで時間に余裕があったので観ることにした。

旅は希林さんの東京渋谷の自宅のシーンから始まる。“自分の身を始末していく感覚で毎日を過ごしている”という希林さん。その言葉を象徴するような、余分なもののない、心を鎮めるための空間が映し出される。
作品では、参宮街道を歩き、お白石行事などの祭事に参加。伊勢神宮の神域をめぐり、広大な神宮林の山に登り、俳句をひねる。
希林さんはお参りを続けている間に、歌人の岡野弘彦さんがお伊勢さんに捧げた和歌に出会う。

「あまりにもしづけき神ぞ 血塗られし 手もつなぐなふ 術をおしへよ」

兵隊として自爆訓練に明け暮れ、敗戦を迎えた岡野さんのやるせない思いが込められている話を岡野さんご自身から聞く。

途中、希林さんが麻布のある場所を訪れるシーンがあった。そこは希林さんが最初に家を買った土地だという。ただ、なにか謂れのある土地だったそうで、そのとき共演していた美輪明宏さんに相談したところ、日本にひとりだけ、その場のお祓いをしてくれる人がいるので紹介してくれるという。
希林さんは、どうしてもその場所が気に入って住みたいけれど、そんな方にお支払いするお金も大変だ…と思っていたところ、友人から「そんなの自分でお経をあげて清めればいいのよ」と言われたそうだ。
ああ、それがいい。それ以来、希林さんは毎日お経をあげているという。

私も伊勢神宮にお参りする機会がなかった。いつの頃からか、土地を訪れるにもご縁のあるタイミングがあると思うようになっていた。日本を代表する神社であるなら、なおさらだ。
この映画を観て、ついにお参りできる準備ができたと思った。
せっかくなら風と緑の季節がいい。梅雨入りする前の5月下旬に予約をとった。
すると不思議なことに、今年に入ってずっと石のように動かなかった身辺状況が急に動き始めた。

「お伊勢さんは感謝をするところ。」

希林さんの言葉がすぅっと入ってきた。
「願い事をしはじめたら、キリがないからね」という希林さんのように達観した心境をもつには、まだまだ未熟である。
さりとて、いつまでも甘えていられる年でもない。感謝のしかた、なんてものは考える必要はないのだろうけれど、肩肘はらず、気負わず、ありがたい思いを伝えられるようになりたい。


お伊勢参りにきたら、伊勢うどん。
太くてやわらかい麺と真っ黒なタレ。さぬきうどん派としては、ビックリするほどのやわらかさだけれども、この土地で長年受け継がれている味わいは大切な思いで。


伊勢名物、赤福。
関西のお土産でよくいただく赤福。大のあんこ好きにはたまらない逸品。ついに本店で赤福をゲット。心なしか、あんこのコクが深い気がする…。

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魚見幸代
魚見幸代

うおみ・ゆきよ/編集者。愛媛県出身。神奈川県在住。大阪府立大学卒業後、実家の料理屋『季節料理 魚吉』を手伝い、その後渡豪し、ダイビングインストラクターに。帰国後、バイトを経て編集プロダクションへ。1999年独立し有限会社スカイブルー設立。数年前よりハワイ文化に興味をもち、ロミロミやフラを学ぶ。『漁師の食卓』(ポプラ社)

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