salitoté(さりとて) 歩きながら考える、大人の道草ウェブマガジン

そらのうみをみていたら。

2017-10-5
私の東京周辺物語10
〜原風景を求めて葉山へ〜

バカみたいだけど、ほんとにバカだけど、結婚をしたら子供を授かると思っていた。いや、信じていた。自然の摂理として、ぐらいに。そうではないと現実を思い知ったのは43歳のとき。

後悔のないように生きる。
信念というほどの大層なことではないけれど、何かに迷ったらなら、やらない選択よりもやるほうを選びたい。そう思い、そうしてきた。
やってよかったことのほうが多いと思っている。もちろん痛い目にも結構あって、そのたび、それなりに落ち込んで、それでも、自分が選び、決めたことだからと納得してきた。やったからこそ、次に進める。またがんばればいい、と。

そして、このときもやらないよりやる方を選んで、貯金をはたいて高い不妊治療(この言葉は大嫌い)に挑んだ。体も気持ちも、痛かった。
その痛みに報われたかったのか、なんなのかわからないけれど、自分でも驚くほど執着した。ぜんぜん、納得できなかった。老化って何。どうしてもっと現実を見ようとしなかったのか…。ほんとにバカみたい…。いつものように楽観的に、じゃ次にわたしはどう進む? と思えない。
こんなに涙が出るとは知らなかったし、恐ろしいことに、なににも気持ちが動かなくなった。

ある日、思いついて海に行くことにした。
5月の連休のあと、葉山へ出かけた。
やわらかな青空。穏やかな海。生命力あふれる緑。浄化するような風。
子どもの頃、毎日空をぼんやりと見て、ただ海風に吹かれていた。なんにもないからこそ、浮かびあがってくる思いがあった。

葉山に来て3年。空と海と山と風のおかげで、むくむくと出てきた。また、がんばりたい。そう思えること。きっと、これも自然の働き(笑)。

物語はまだまだ、続いて行く。

ご意見・ご感想など、下記よりお気軽にお寄せ下さい。

コメントはまだありません

まだコメントはありません。よろしければひとことどうぞ!

コメントする ※すべて必須項目です。投稿されたコメントは運営者の承認後に公開されます。


コメント


魚見幸代
魚見幸代

うおみ・ゆきよ/編集者。愛媛県出身。神奈川県在住。大阪府立大学卒業後、実家の料理屋『季節料理 魚吉』を手伝い、その後渡豪し、ダイビングインストラクターに。帰国後、バイトを経て編集プロダクションへ。1999年独立し有限会社スカイブルー設立。数年前よりハワイ文化に興味をもち、ロミロミやフラを学ぶ。『漁師の食卓』(ポプラ社)

そのほかのコンテンツ