salitoté(さりとて) 歩きながら考える、大人の道草ウェブマガジン

そらのうみをみていたら。

2017-01-5
ひとつの夢がおわり
ひとつの夢が始まった

ついつい観てしまう正月特番がある。
「さんま・玉緒のお年玉 あんたの夢をかなえたろか」。
全国津々浦々、老若男女の夢をインタビューして、選ばれし夢を叶えるバラエティー番組だ。
「綾瀬はるかに1日マネージャーになってもらいたい」
「向井理と手を繋ぎたい」
といったミーハーな夢や
「マンタと一緒に泳ぎたい」
という可愛い夢
「30年以上会っていないおばあちゃんの妹と会わせてあげたい」
なんて心温まる夢。
それぞれが思い描く夢を聞いていると、なぜかやたらと泣けてくる。
歳のせいもあるだろうけど、夢を語るときというのはその人の生き様が清々しいまでにあらわになっていると思うのだ。

編集・ライターという職業柄、これまで比較的多くの人に夢を聞いてきた。
夢を語ることは、夢を持つ人の特権だ。
純粋にそのことに思いをぶつけ、願い、向き合っている人たちと会うたびに、わたしにはそれほどの熱い思いがないことを知る。

けれど、もしも「さんま・玉緒のお年玉 あんたの夢をかなえたろか」のインタビューを受けることになったら…。

あった。わたしもあった!
“「ビストロ・スマップ」に出ること”

ここで言うことでもない話なのは百も承知だが、わたしはキムタクこと木村拓哉のファンだ。
はじめは「かっこつけて」て全然興味がなかったのに、たまたま撮影をしているところを目にして、簡単に落ちた。
場所は神保町の小さな小さな公園。中居くんとキムタクのふたりの撮影で、見物人は誰もいなかった。私は慌ててアルバイト先の編集部に戻って「キムタクが撮影してるーー!!」と叫び、女性編集部員たちと公園に戻って撮影風景をみた。
中居くんは私たちのほうを気にすることなく、淡々とポーズをとっていたが、キムタクは私たちに気づくと、こちらにときどき目を向ける。暗くてはっきりとした視線はわからないけれど、もう、それだけで「ドキドキ」だ。

撮影が終わった。恐らく近くの出版社に戻るのだろう。スタッフの間を抜けて、中居くんとキムタクが公園から走って道に出た。思わず私たちも走って追いかけた。すると、キムタクだけが急転回して戻ってきた。はっ!と私たちも止まった。そしてこちらをみて、また走って行った。
確実に、目が合った。
その日から、かっこつけてるキムタクにずっとドキドキしている。

言い訳するように「夢叶えたろか」の番組にかこつけた夢だけど、熱い気持ちは本気だった。
たとえ、番組で取り上げられることがなかったとしても、どうやったらビストロスマップに出られるだろうと妄想した。平凡なわたしの夢を聞かれることはそんなになかったから、ときどき自分で「わたしの夢はね…」と語ってはあきれられたりもした。でも、いつだってワクワクしていた。

2016年12月31日。
残念ながらわたしの夢は叶うことなく終わった。

けれど、夢を語ることで気づいたことがある。
わたしはかっこつけている人が好きだ。そして夢があるって、ワクワクする。
だから、わたしもかっこつけてワクワクしていたい。

2017年。新しい夢を胸に、かっこつけられる力をつけていきます!
どんな夢かはいずれ、そのうち。


2017年元旦。森戸神社にて撮影。富士山もかっこいいよね、かっこつけてるわけじゃないだろうけど。

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魚見幸代
魚見幸代

うおみ・ゆきよ/編集者。愛媛県出身。神奈川県在住。大阪府立大学卒業後、実家の料理屋『季節料理 魚吉』を手伝い、その後渡豪し、ダイビングインストラクターに。帰国後、バイトを経て編集プロダクションへ。1999年独立し有限会社スカイブルー設立。数年前よりハワイ文化に興味をもち、ロミロミやフラを学ぶ。『漁師の食卓』(ポプラ社)

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