salitoté(さりとて) 歩きながら考える、大人の道草ウェブマガジン

我が書斎、横須賀線車中より

2017-07-5
大人たちよ、働くことについて、子どもたちと語り合おう

今年も、大学でキャリア漫談をやる季節になった。
6月に1件、7月に1件、もしかしたら秋冬にももう1件。

実際に学生に会えるのは授業時間の90分だけなので、事前課題と事後課題を出すことで、出来るだけ密度を濃くするのが私の流儀。
事前課題のレポートが届くと、その内容に沿って漫談内容を組み立て。
授業当日は会社で有休を取って、全力で漫談。
終わった後は、事後課題として学生達から寄せられたレポートの感想や更なる質問へのコメント集を作成。
それを送り返して、漸く授業は完了する。

6月の授業に参加してくれた学生は、2年生~4年生。
寄せられるレポートの文章からは、就職活動を目前に、未来への不安で一杯だったり、一生懸命もがいていたりすることが伝わって来て、愛しい。
私だけで反芻モグモグしているのは勿体ないので、ここで少し紹介してみる。

●今自分が持っているスキルは自分が欲しいと思ったのではなく、他人から褒められたい、もっと言えば嫌われたくないから習得したものでしかないなと思いました。
●やりたいことが見つからずに4年生の就活になってしまいましたが、心のどこかにやりたいなと思ってまだ言葉で表せないものが眠っています。
●最初は、やりたいことが見つからないし、つまらない人生だと思っていました。しかし、やるべきことをこなしていって、だんだんやれることが増えていけば、やりたいことが実現できると思えば、何事も頑張れるのではないかと思いました。
●やりたいと思っていたことが実はやりたいことではなかったかもしれないので、またじっくり考えたい。
●理想と現実のギャップや社会の在り方などを考えると目をそらしたくなります。
●自分自身を理解することは簡単な様で難しく、私も未だにわかってあげることができていません。
●私は努力をすることが苦手で、自分を奮い立たせることができない人間です。改善していくには長い道のりになりそうですが、少しずつでもいいので変わっていきたいです。
●私はたくさん考えるのですが、すぐに決断できず結局何も決まらないことが本当に自分の嫌いなところです。でも、自分のことを批判するばかりでなく、一部認めることが出来れば違う自分にも会えるのかなと思いました。
●もう二十歳なので恋愛も頑張ります。

どうですか?
この心情吐露、決して大学生の今だから、だけではなく、同じ様に悩んでいる大人も多いのでは?

彼らからもらう問いは本質的で難しいものが多い。
だから、一つひとつに答えていくのは非常に手間がかかる。
でも、これらに答えようともがくことは、私自身の価値観や生き方の根幹を問う、考え直すことと同じ。
実に、努力する甲斐がある。
本当は文章なんかで返さず、ゆっくり語り合いたいんだけどねぇー。

6月には、所属する会社で中学生のキャリアインタビューも受けたが、その質問もなかなか鋭い。

●会社の理念に「食と健康」とありましたが、齋藤さんにとって「食と健康」とは何ですか?
●上司の方と仕事をすることは辛いですか。上下関係は大変ですか。
●できれば将来、安定した職に就きたいのですが、そうなるためのコツなどはありますか?
●昔の夢は何ですか?
●今仕事をしていて楽しいですか?
●齋藤さんがこの仕事をする上で、目指しているものは何ですか?

そこらのコーチ、顔負けの深い質問ばかり。
質問を事前に送ってもらっていても、スパッと答えるのは難しい。
正解の無い問いなので、どう答えるのかと恐れることは無いけれど、全部真剣勝負、全力で答えねばならない。
取り繕ったり建前で答えたりすれば、子どもは直観が鋭いのですぐに見抜かれる。

でも、
「この会社はブラックですか?」
と訊かれた時には、流石に
「違います。大丈夫です」
と即答したよ。
即答できる会社に居られて幸せだとも思ったけどね。

ブラックねぇ・・・。
世の中に溢れかえる情報の中でも、極端なイメージは独り歩きしやすい。
ブラックか、ホワイトか、なんて二極化出来るほど、世の中は単純じゃない。
そして、労働時間の長さばかりが注目を浴びやすいけど、時間は結果であって、本当は仕事の中身とセットで語られるべきものなんだよー。

逆に、中学生の彼らに将来どんな仕事をしたいか、どんな社会人になりたいか?を聞いてみると・・・
「人生、お金が無いと始まらない。だからお金を稼げる安定した仕事に就く!!」
と割り切っている子、
「人から信頼されて、相談される様な社会人になりたい。そして多くの人とコミュニケーションを取って、知らない世界も見てみたい。」
と夢と希望に溢れている子、
「わからない。でも怖い・・・。失敗したらどうしようかと思って。」
と漠然と不安に思っている子など、これまた様々。

みんなそれぞれ、これまでに関わった大人の印象や接した情報から、そう感じる様になったんだろうなー。

7月にキャリア漫談をしに行く大学の先生からは、授業に先んじて、今回のカリキュラムを選択した学生たちの本音を探るワークショップを実施したという報告があった。
ワークショップでは、学生達は実は「就職したくない」と考えていて、その理由は以下の様なものだという。

●就活自体が大変だから
●要らない情報が多すぎ、でも欲しい情報は抽象的
●周りに焦らされる
●世間体

確かに、Webの発達でエントリーの仕組みが複雑化して、スピードも増して、
更にスケジュールも毎年コロコロ変わって・・・
就活はより大変になり、学生は振り回されている様に見える。

でも・・・

●働くことのイメージが沸かない
●大人が嫌い
●親の疲れた姿
●マイナスな話しか聞かない、メディアのイメージが悪い

とここまで聞くと、
「おーい、今まで前向きに働いている大人に会ったことがないのかい???」
と突っ込みたくなる。

●楽して暮らしたい

には、
「そんな道はないし、それは実は楽しくないかもよ。」
と説教したくなる・・・いかんいかん。

学生達がメディアから集める情報は、ニュースになる位だから極端な話も多い。
もしくは、頭では理解できても心を動かすには至らない、何処か遠い話。

普段接している親や先生の話は身近で大事な例だけれど、身近過ぎて逆に真剣に聞かれないことも多い。
聞いたとしたって、それだけではある価値観に限られる偏った話。

だからこそ、メディアや親や先生以外の、沢山の大人のリアルな働く姿を知ることが大切。
そして出来れば、出来るだけ多くの大人に直接会って、“生の”話を聞いて、実に多様な仕事や、働き方や、キャリア観があることを知って欲しい。

最近の高校や大学では、OBやOGを招いてキャリアの棚卸的な話をさせていて、とても良い機会になっている。
出来れば、その人選は派手な目立つものばかりじゃなくて、地道で無名だけど世の中を支えている大事なお仕事をされている方なども織り交ぜて欲しい。
そして、給料が上がったとか地位が上がったとか有名になったとかの表面的な成功話じゃなくて、紆余曲折の経緯や、失敗談をしっかり織り交ぜて欲しい。

そして多くの大人も、「自分のキャリアなんて、話すことは特に無い」なんて思わずに、母校に出かけたり、年頃の子ども達に接する機会があったりしたら、自分の働く姿について、素のまんま、語って欲しい。
●なぜ今の仕事を選んだのか
●その仕事の社会的意義は何なのか
●これまで辛かったことは何か、それをどう乗り越えたか
●喜びややりがいは何か

仕事の中身には、当然主婦・主夫業や親業も含まれる。
これらを棚卸して話すことで、自分自身の新たな姿を見つめなおす、良い機会にもなる。
話し終わった後、子ども達から受ける質問や寄せられる感想から、また新たな発見もあるだろう。

でも、どんなに紆余曲折があっても、後ろ向きで終わる話にはしないで欲しい。
「いろいろあるけど、頑張ってるし、喜びもあるよ」
そんな背中を見せてくれたら、子ども達も仕事をすることについて、社会に出ることについて、もっと希望を持てると思う。

*****

最後に、中学生からもらった愛情一杯の激励メッセージを皆さんへ。
「社会人の皆さんは、国や人間を支えるために働いていて、昔から私のヒーロー的存在です。
楽しいこと苦しいこと、全部含めてカッコいいです!」

さ、明日からも元気に働きましょー!!!

ご意見・ご感想など、下記よりお気軽にお寄せ下さい。

2件のコメント

50歳を過ぎて転職したジジイから見ると、学生さん達の「自分が何をしたいか判らない」という悩みは、羨ましい限りです。歳をとれば、自分の価値観や成したい事は明確になりますが、同時に、やれる事も明確になってしまい、選択肢は限られてしまいます。「自分が何をしたいかZz判らない」のは、無限の可能性と選択肢があるからで、なんとも贅沢な悩みであることを、学生さん達に伝えてあげたらどうでしょう?

by ジジイ - 2017/07/06 6:36 AM

ジジイさん
素敵なコメントを有難うございます!
大丈夫ですよ。人生100年の時代ですから、50代であれば道半ば。自分次第で、まだまだこれからも新しいキャリアを歩んで、ご自身の新しい扉を開けることができますよ。
でも、学生の彼らからしたらそれは果てしなく遠い先の話なので、まずはジジイさんのメッセージを伝えますね。そして、これからの未知なる展開にワクワクする学生が一人でも増えますように。

by 齋藤由里子 - 2017/07/06 12:47 PM

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齋藤 由里子
齋藤 由里子

さいとう・ゆりこ/キャリア・コンサルタント(CC)。横浜生まれ、大阪のち葉山育ち。企業人、母業、主婦業も担う欲張り人生謳歌中。2000年からワーキングマザーとして働く中、日本人の働き方やキャリア形成に問題意識を持ち、2005年、組合役員としてWLB社内プロジェクトを立ち上げ。2010年、厚生労働省認可 2級CC技能士取得、役員を降りた後も社内外でCCとして活動継続。個人・組織のキャリア・コンサルティング、ワークショップ、高校・大学生向け漫談講義などを展開、参加人数は延べ3,600名超。趣味は海遊びと歌を歌うこと。

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