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我が書斎、横須賀線車中より

2017-06-5
熱意について

これまでの3か月間は、「私のアルバイト物語 ウェイトレス編」を綴ってきた。
改めて振り返ってみると、今の自分の仕事への取り組み方のベースは、アルバイトで経験したことで造られた部分も多い。
アルバイトはウェイトレス以外にも幾つかやってきたので、それはまた後日、続きを書くつもり。

今月はアルバイト物語を小休止して、先日気になった記事のテーマについて論じてみたい。

5月26日、あるビジネス誌のオンライン記事に、
「『熱意ある社員』6%のみ 日本132位、米ギャラップ調査 」
という見出しが躍った。

内容は、世論調査や人材コンサルティングを手掛ける米ギャラップ社が世界各国の企業を対象に実施している従業員のエンゲージメント(仕事への熱意度)調査の最新版の報告。
それによると、日本は「熱意あふれる社員」の割合が6%しかおらず、調査した139カ国中では132位と最下位クラス。

各国の順位を知りたいなぁと思って早速ギャラップ社のホームページを調べてみたが、ランキングは載っていなかった。
代わりにわかったことは、世界では87%の従業員が熱意を持っていないということ。
つまり、「熱意ある社員」は13%しか居ないんだって。
現実は、2:6:2の原則より少ないってことか。
(2:6:2の原則とは、別名「働きアリの法則」。
働きアリを沢山集めた時、その中で一生懸命働くアリは2割、普通に働くアリが6割、余り働かないアリが2割発生する傾向がある。そこから余り働かないアリ2割を排除したとしても、残ったアリの中で自然に2:6:2になってしまうそうな。これは人間の組織にも当てはまるというのが通説。)

ちなみに同調査での、アメリカの「熱意ある社員」は32%。
日本とアメリカの2国間だけ比べてしまうと、そもそもこういう質問に対して照れも無く
「おお、オレ、仕事に燃えてるぜぃ!」
とアツ~く答えられる気質なのかどうなのか、という国民性の違いもありそう。
そういう意味で、国同士で比べる限界もあると思うので、今回は日本の結果についてだけ考えてみる。

記事では、日本では企業内に諸問題を生む「周囲に不満をまき散らしている無気力な社員」の割合は24%、「やる気のない社員」は70%も居るとレポートしている。

そして、ギャラップ社の会長兼最高経営責任者(CEO)であるジム・クリフトンさんが、「会社人間」を沢山生み出していた1960~80年代の日本の経営をコマンド&コントロール(指令と管理)という観点で非常によいものとし、1980~2000年ごろに生まれた「ミレニアル世代」はこの「会社人間」とは求めていることが全く違い、自分の成長に非常に重きを置いていることが問題だ・・・と解説している。

なるほどねぇ。
1960~80年代の日本型経営はアメリカの社会学者が「ジャパン・アズ・ナンバーワン」という本を出したりして、アメリカでは好事例として紹介されてくらいだから、こういう解釈にもなるんだろうなぁ。

でも、ずっと日本に居る私は、その受け止め方には違和感がある。
私は1971年生まれ、「会社人間」にも「ミレニアル」世代にも入らない狭間の世代。
「会社人間」に感じるのは、仕事への熱意云々よりも前に、組織への依存度が高いというイメージの方が強い。
だから「会社人間」であることがそのまま良いとは思わないし、逆に自分の成長に重きを置くこともそのまま悪いとは思わない。だって、成長しない人間が価値を生み続けられる訳が無いもの。
何より、組織への依存度が妙に高すぎると、社会的な不正やぶら下がり社員を産む。
ある種、組織とは契約関係において対等であるという意識の下に、市民としての良識を持ち続けながら、お互いにwin-winになる関係を築く、位の自立・自律度が欲しい。

ジム・クリフトンさんはさらに、日本の「不満をまき散らしている無気力な社員」の割合が24%と高いことを問題視し、その原因を「上司の言ったことを、口答えせずに確実にやれば成功する」という古いマインドセットを持っている上司だとしている。

そしてその解決策として、
・上司と部下が一緒になってどう結果を出すか、部下をどうやって成長させていくかを考えること
・上司が部下の強みが何かを理解すること
・これまでは弱みを改善することに集中するのが上司の仕事だったが、得意でないことが強みに変わることはない。無気力な社員の半数は自分に合っていない仕事に就いている。合った仕事に変えるだけで無気力な社員を半分に減らせる

と挙げている。
大分強引な感じがするけど、ギャラップ社は、私もよく使っているストレングス・ファインダーを運営している会社でもあり、また誌面の文字数の制限もあるだろうから、こういう急な論理展開もやむなしか。

でも、実際にマネジメントする立場で考えれば、「不満をまき散らすこと」と「無気力なこと」は別に考えた方が良い。
不満をまき散らすことはある種のエネルギーが必要なので、根本的に無気力だとは言えない。
不満の内容にもよるが、傾聴の仕方一つで、不満が建設的な提言に変わることは幾らでもある。
その上で、
・上司と部下が一緒になってどう結果を出すか、部下をどうやって成長させていくかを考えること
はとても大事。

一方、「無気力な社員の半数は自分に合っていない仕事に就いている。合った仕事に変えるだけで無気力な社員を半分に減らせる」と言うが、例えば組織であれば、どんなに適所適材の調整に尽力しても、皆が皆合った仕事に就けるとは限らない。何より組織人であれば、自分に合った仕事だけやるという自由はなかなか手に入らないものだ。だからこれを最適解としてしまうと、実現できない絵に描いた餅になる。

今年も、先週から新卒採用活動がスタートした。
沢山の大学生が期待と不安で胸を一杯にしながら、企業の面接に臨んでいることだろう。
そして来年の4月には、彼らが社会人としてスタートを切る。

そもそも、新入社員の時から「無気力」な人なんて居ないと思うんだけど、どうだろう?

それが「無気力」になってしまう主な原因は、過去に「どうせ言ってもムダ」「どうせやってもムダ」「私にはできない」と思わせる何かがあったからではないか。

だとしたら、これへの対処法は、
・その人の意見をしっかり引き出すこと
・何か投げかけられたら流さないで、きちんと答える、応えること
・その中から、良いと思うアイデアはどんどん取り入れ、実際に動いてもらうこと
・その繰り返しの中で、小さくても良いので成功体験を積ませること
・その中で、自己効力感を持たせること
ではないかと思う。

そしてもう一つ浮かぶ、そもそもの疑問。
従来、日本の組織で「熱意があること」は好意的に受け入れられてきたんだろうか?

熱意を持って、会議中に頭に浮かんだことを参加者にぶつけてみる。
でもそれが許されるのは、立場の範囲内で。
立場を越えてストレートな人財は、空気が読めない人として、鬱陶しがられる。

熱意を持って、スケールの大きな絵を描いて、実行してみる。
でもそれが許されるのは、立場の範囲内で。
立場を越えたスケールの絵を実行していると、コントロールしにくい人財、はみだし者として鬱陶しがられる。

熱意の方向性も問題だ。
上司や組織の意を汲む熱意は大歓迎されるだろう。
でも、それがお客様利益や、社会的価値と相反する場合は?

私が色々な場面でお会いする、お仕事に対して熱量の高い人は、組織に属していない人が実に多い。
属していても、窮屈になって途中で飛び出してしまうのだ。
今居る6%の人が同じ様に飛び出してしまわない様、組織としてはある程度の裁量権を与えるなり、きちんと評価し続けるなり、細心の注意を払わねばならない。

同時に、今は熱意を持っている人も、自分の熱意を持ち続けられる様に、自分をセルフマネジメントしなければいけない。

記事では、厳しい状況にあるからこそ、日本企業においてマインドセット変革や生産性を高めることに対する関心度が高まってきており、今が変わるチャンスであると締めくくっていた。
誰の、何の、マインドセット変革か?

不満や無気力を上司の責任にするのは簡単だが、上司が何でも解決できる訳じゃない。
熱意が持てなくなる大きな原因の一つには、変化の激しい、先行き不透明な今の社会の中で、自分のキャリアの方向性を見失い、自分が今何のためにこの仕事をやるのか、意義と価値を見出すストーリーを描けていない、ということも必ずある。

しかし、キャリアコンサルティングなどの訓練を受けていない上司がキャリアサポートの全般を行うのには限界がある。
だから今こそ、セカンドキャリア支援だけではない、若年者も含めたすべての人にキャリア支援を。
そしてあなたも私も、
・自分が今何のためにこの仕事をやるのか、意義と価値を見出すストーリーを描く
・自分のキャリアは自分で描き、自分で造る
という、自分のためのマインドセットを。

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齋藤 由里子
齋藤 由里子

さいとう・ゆりこ/キャリア・コンサルタント(CC)。横浜生まれ、大阪のち葉山育ち。企業人、母業、主婦業も担う欲張り人生謳歌中。2000年からワーキングマザーとして働く中、日本人の働き方やキャリア形成に問題意識を持ち、2005年、組合役員としてWLB社内プロジェクトを立ち上げ。2010年、厚生労働省認可 2級CC技能士取得、役員を降りた後も社内外でCCとして活動継続。個人・組織のキャリア・コンサルティング、ワークショップ、高校・大学生向け漫談講義などを展開、参加人数は延べ3,600名超。趣味は海遊びと歌を歌うこと。

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