salitoté(さりとて) 歩きながら考える、大人の道草ウェブマガジン

我が書斎、横須賀線車中より

2016-08-5
家事、育児をなめるな! 

先日、息子のお友達のお弁当箱を洗う機会があった。
そのお友達が試験休み中の講習で学校に来た時、お弁当箱を持って帰るのを忘れ、息子に頼んだのだ。

いざ洗おうとして、そのお弁当箱パーツの重厚さに驚いた。
円柱形の保温ジャー、密封性の高そうなパック2つ、さらにドレッシングか何かが入っていたのか、小さいパック2つ。勿論水筒も。
美味しく食べられる様に適温で、混ざらない様に全部別々に…
なんて、なんて丁寧な仕事!
この子のお母さん、毎日こんなの作ってるなんて、素晴らし過ぎる。
人さまのお弁当づくりの様子を伺える機会なんて滅多に無いので、本当に感動した。

かくいう私。
いつも、イケヤで買ったでっかーいお弁当箱1個のみ。
とにかく考えるのが面倒くさいので、何かとパターン化。
お弁当箱の半分をドドーンと占めるごはんは、白米/五穀米/玄米のローテーション。
野菜はブロッコリー&プチトマトの組み合わせ出現率80%以上。
木曜は焼きそば、金曜日は唐揚げで決まり。唐揚げは勿論…………。

副菜には煮物がよく登場するが、週末に大量に作って一週間毎日出す。
ある週、ひじき、大豆、にんじん、高野豆腐なんかを混ぜた五目煮を「栄養たっぷり♪」と自画自賛で毎日入れていたら、木曜日の朝、息子が言うことには。
「あのさー、お母さんさー、今週の五目煮。栄養があるのは解るんだけどさ、毎日お弁当箱を開けたら、お弁当箱中に飛び散ってて困ってるんだよね…」
うぎゃー!木曜まで我慢しないで早く言えよ!
翌日からは、シリコン製カップに入れた後、サランラップを巻くことにした…これって「カイゼン」ね!
って自画自賛してる場合ではない。
ガサツな母で本当に申し訳ない…

しかも、夏休みに入り、毎日予備校に行く息子が「お昼は友達と一緒にご飯食べに行きたいー」というのに甘え、今はお弁当作りはお休み中。2学期が始まったら再開だけど、息子は高校3年生なので、多分2学期の授業が終わったら5年半年続いたお弁当作りも終わり。後4か月無いんだもん、もっと1日1日、丁寧に作らないとね。でも、いざ再開したら「あー面倒くさい。早く終わらないかなー」とか不埒な気持ちになってること間違い無し。

大体、毎日3食を用意するのって大変な仕事である。
作るだけじゃなくて、メニュー考案、食材の買い出し、在庫管理、後片付けまで。
うちなんて、今はたった2人だけど、家族の人数が多くなるだけ大変になるし。
(そういえば、結婚していて、子どもが小さかった時は、GWや夏休みがひたすら苦行で、早く会社始まれ!と思っていたよ…。)
家族の予定もコロコロ変わるから大分振り回されたりするみたいだし。
準備にかかる時間は沢山だけど、食べるのはあっという間だし。

炊事だけじゃない。
洗濯、整理整頓、掃除、裁縫、家庭内のあらゆる消耗品の在庫管理、家計管理、家のメンテナンス、円滑な日常生活のためのご近所づきあい、ゴキブリ退治…

ゴキブリ退治は一体誰の仕事か?
誰でも見つけた奴がやれよ、と言いたいが、これまたヘタレなうちの息子は大の虫嫌い。
先日、我が家に一匹出た時にも大騒ぎ。
第一発見者であった彼は、ゴキジェットでなんとかやっつけるところまでやって、ゼィゼィハァハァしていたちょうどその時、私が帰ってきたのを良いことに、後始末を押し付けてきた。
「せっかくそこまでやったんなら、最後までやり通しなさいよ!一人暮らしする様になったら困るよ!」
「その時はその時!こういうのは分業!連携プレー!」
私も大分抵抗したのだが、ほっておくのは二人とも嫌。
いつまでも揉めていても仕方が無いので、じゃんけんを提案したら、私が負けた…
挙句の果て、奴が言い放った言葉は。
「僕はゴキブリを殺せる嫁さんを探す。」

とにかく。
“家事”には終わりが無い。
ほっておくとあっという間に溜まる。生活に支障が出る。
ここに育児が加わると、楽しさも増すが、大変さも一層増す。

なので、私が世の中で一番尊敬している職業は、家事・育児の専門家である。
家事・育児の専門家と言っても、有識者のことではない。
いわゆる、主婦&母・主夫&父と呼ばれる人たち。
今はまだまだ女性の方が多いので、ここからは主婦&母に限って話をするが、私が一番不満なのは、例えば育児休暇を取って会社を休むと、キャリア・ロスだと言われること。

そういうことを言う人には、「じゃあ、貴方、試しにやってみなさいよ」、と言いたい。
よくある、数日取っただけで育児休暇取得とみなすのなんかではだめ。
少なくとも半年以上だね。

朝ご飯が終わったらもうお昼ご飯の支度。お昼ご飯が終わったらもう夜ご飯の支度。
一晩寝たら、またすぐ朝ご飯の支度。
掃除したばっかりなのに、あっという間に汚す、散らかす人たち…。
トイレットペーパー、シャンプー、コンディショナー。
歯磨き粉って、あとどれ位あったっけ?
先を見通し、次々発生するタスクを段取りよく、同時並行的に進めなければいけない。

土日祝日、夏休み冬休み、一切関係無し。
毎日毎日、朝から晩まで同じことの繰り返しの様に見える中で、いかに楽しくするか。楽にするか。美味しくするか。効果的にするか。
限られた時間の中で、どうやって生産性をあげるか。
すべて自分の技にかかっている。
創意工夫と改善の継続。

しかも、外での仕事と違ってお給料もボーナスも出ない。
大抵の場合、承認や称賛もない。
所謂報われない、なかなかスポットライトが当たらない、でも大事な仕事。
これを毎日黙々とやることに必要なのは、体力や知力はもちろんのこと、創造力、継続力、忍耐力、献身的な気持ち…つまり、あらゆる精神力。

そして育児。
相手は意思を持った生き物で、親の思惑や都合など関係なく主張し、要求する。
自分が育てたようにしか育たず、毎日その成果を見せつけられる。
正解がないものなので、何が良いのか、永遠に模索する。
人生の価値は、当の本人がどう思うかで決まるし、それって死ぬ間際にレビューして感じることなので、親にとって自分の育児が成功したかどうかは、たぶん一生わからない。

まったく、家事と育児はどんな研修よりハードな、24時間365日休みの無い、自己鍛錬の場なのだ。
段取り、タイム・マネジメント、プロジェクト・マネジメント、セルフ・マネジメント、人財マネジメント…全部学べるんじゃないかな。
そして、学歴もポジションも関係無い家族・地域社会の中で、総合的な行動力と、人間力が問われる。
「何を言うか」ではなく、「何をやるか」が大事。

私も、母になってからの方が、自分の段取り力や優先順位をつける判断力などは格段にアップしたと実感している。
そして、山本五十六的な人財マネジメント力を一番学んだのは、子どもからだ。
育児は育自。
キャリア・ロスだなんてとんでもない、キャリア・アップだよ。

きっと、介護はもっともっと凄いんだろうなぁ。
いつ始まるか判らなくて、いつ終わるかも判らなくて、子どもの様な右肩上がりの成長の喜びは得られず、重症度は増していく。その対象は自分が心身共に頼ってきた親であり、その老いと死と、ドップリ向き合わねばならない。はがゆさ、苦しさ、切なさがずっと続く…。
まだ経験をしたことが無いけれど、並々ならぬ体力と精神力が必要であることは間違いない。

最近、家事も育児もしっかりやる若手男子が少しずつ増えてきてとても良いことだが、真に仕事の出来る、優しくてタフな男にするためにも、全員半年以上の家事・育児を経験させた方がいいくらいだと思う。

私などは、家事・育児だけに徹するには自分の能力、とりわけ献身的な気持ちが圧倒的に足りない。
だから、それをひたすら期待・要求される完全な専業主婦業はしないことを決め、企業人を続けている。
母業も1人でいっぱいいっぱいだと自分のキャパの狭さを実感、2人目には踏み出さなかった。

なのに、世の中には子どもを2人、3人、4人…と育て、明るく元気良く家事もこなしている肝っ玉母ちゃんたちが一杯。
本当にすごいよ!
彼女たちの子どもへの心配りを見ていると、「職業:母ちゃん」の誇りを感じて本当に嬉しくなる。
あなたのお蔭で、将来この国を、この世界を支える人財が育っている。

でも、主婦業・母業専門の友達の中には、
「私なんて、ほかに何もできないから…」
と妙な卑下をする人たちが結構な割合で居る。
もしくは、
「うちのは、専業主婦しかできないから…」
とか、
「3食昼寝付き。うるさい上司もいなくていいよなぁー」
とか、揶揄する夫群が居る。
ちょっと、ちょっと待てぇーい!!!!!

試しに、主婦業・母業の仕事を賃金換算してみればいい。
例えば、某大手各種支援サービス会社の料金表。
・お掃除:3LDK 23,000円/1週間に一度
・買い物・料理代行:2,600円/時間
・ベビーシッター・介護支援:2,800円/時間
これ以外に、10万円単位の年会費やら、毎日の交通費やら。
あなたの家の家事・育児、全部外注したらどれくらいになる?

うちの息子が小学校にあがった時、月のお小遣いは100円だった。
2年生に上がった時、お小遣いも上げて欲しいというので、<働かざるもの食うべからず>を体感させるため、「家のお仕事一覧表」を作った。
炊事・洗濯・買い物・掃除だけではなく、ゴミ出しとか、PTAへの出席とかも含め、上がった項目は32項目。彼が担っていたのはゴミ出し、お風呂掃除、自分の上履き洗いの3つ。私は残り全部。
「さぁ、どれを新しくやることにする?その仕事内容によって上げる額を決めるよ。」
と提案すると、一覧表を眺めてうんざりしたのか、
「うーん、もうこれ以上やるのは大変だから、お小遣いはいいや。」

このやりとりが功を奏したのか、これ以降、彼からお小遣いアップの話は出ていない。
そして、私が色々なことをした時、彼はさらっと「ありがとう」と言う。
そう、その気持ち大事!

主婦であり、母である貴方が存在してくれていることによる、家族の安心感って、どれほどの大きさか。
今はもしかしたら生意気ばかり言っている子どもたちも、自立したらわかるはず。
どれだけ貴方にやってもらって、支えてもらっていたか。

うちの息子も、もしかしたら半年後には家から巣立って行く可能性がある。
そしたら、さらに、色々と感じることでしょう。
あー、楽しみ。

私はキャリア・コンサルタントとして、学生には「経済的に自立できる、給料の出る仕事をし続けろ。専業主婦・母にはなるな」と言っているが、それはあくまで人生におけるリスクを考えての話。
決して、専業主婦業・母業が楽で、成長できないからではない。

今時、専業主婦業・母業をやれる、というのは夫の稼ぎが良い証拠で、大変贅沢な立場になっている。
しかも、例え今は稼ぎが良くても、夫が勤める会社の経営悪化、夫自身の病気、事故、自然災害…いつ何が起きて、その稼ぎの前提が崩れるか解らない。

でも、経済的自立と同じくらい、大事なことは、生活の自立。
最近の若い男子の家事・育児参加について、この傾向を「けしからん」、とか「情けない」というオジサマが居るが、そんな人に限って、家にはスーパー専業主婦の奥様がいる。
こういうオジサマって、定年後、会社に席が無くなった時、家での居場所、あるんだろうか?
奥様に急に何かがあった時、自立して暮らしていけるんだろうか?

そして、疑問に思うのは、こういうオジサマたちが作っている、
女性活躍推進の「女性管理職を増やす」という数値目標。
「一億総活躍社会」という現政府のスローガン。

管理職になるだけが「活躍」なの?
「活躍」の中身には、家事や育児は入らないの?

管理職にならなくたって、プロフェッショナルとして現場の仕事を一生懸命やっている人は沢山居る。
管理職が倒れても現場は回るが、現場を支えるプロフェッショナルが倒れたら現場はたちまち回らなくなる。
大体、船頭が多くなるとまとまらなくなるから、管理職ばかり増やしても仕方が無い。
そして本来的には、ピラミッド構造の組織の中で、皆が昇格するだけのポジションは無い。
なのに無理やり昇格させたら、管理職ポストのデフレが起きる。

だからこそ、会社組織の中で毎日コツコツと行われている、家事・育児の様な、会社の屋台骨を支える仕事にも、もっとスポットライトを当てる必要がある。
そのポジションにおける「活躍」とは何かを、本質的に考える必要がある。
でないと、会社組織の屋台骨が崩れてしまう。

そして、家事・育児。
お金という報酬が出ないが故に納税をしていない様に見えるが、家事や育児を担い、お金なんかでは測れない、根幹的な価値提供で社会を支えている人は沢山居る。
一億層活躍社会の中で、「もっと女性に社会進出を…」と言うのであれば、男性がその分、家事や育児を担っていく必要がある。

繰り返しになるが、それは決してキャリア・ロスではない。
タダで受講できるお得な、しかも、最もハードで超有効な、研修。
さぁ~、家事・育児をバリバリやって、あなたもキャリアアップしよう!!!

ご意見・ご感想など、下記よりお気軽にお寄せ下さい。

2件のコメント

こんな動画もありますよ!
https://www.youtube.com/watch?v=WcidfzfIWdE&app=desktop

by ユッキーダン - 2016/08/06 12:32 PM

ゆっきーだん さま
この動画、何度観ても素敵ですね!
これをご存知のゆっきーだんさまも素敵です。
私と同じ様に思っている人も結構居るのかも、と嬉しくなります。
いいものを教えて頂き有難うございますm(__)m(^-^)/!

by 齋藤由里子 - 2016/08/07 6:16 PM

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齋藤 由里子
齋藤 由里子

さいとう・ゆりこ/キャリア・コンサルタント(CC)。横浜生まれ、大阪のち葉山育ち。企業人、母業、主婦業も担う欲張り人生謳歌中。2000年からワーキングマザーとして働く中、日本人の働き方やキャリア形成に問題意識を持ち、2005年、組合役員としてWLB社内プロジェクトを立ち上げ。2010年、厚生労働省認可 2級CC技能士取得、役員を降りた後も社内外でCCとして活動継続。個人・組織のキャリア・コンサルティング、ワークショップ、高校・大学生向け漫談講義などを展開、参加人数は延べ3,600名超。趣味は海遊びと歌を歌うこと。

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