2012-01-23
「旅で出会った人との関わり方」
「それだけ旅を続けていたら、さぞかしいろいろな旅人と仲良くなるでしょ?」
と聞かれることがある。残念ながら僕は人見知りが激しい。よって旅先で出会った旅人と仲良くなった記憶は、ほとんどない。あくまで旅先で出会った旅人であって旅先で出会った人、つまりその場所に住んでいる人と仲良くなることはある。もう少しわかりやすい例で言うと空港の待合場所やビザを待つ大使館などで日本人の旅人同士がその場で知り合って仲良くなっていく光景を何度か目にしたことがあるが、こういったことは僕には一度もない。いくら日本人の輪が大きくなっていったとしても、そういった輪の中に僕はなかなか入れないのだ。誰かが声をかけてくれたら大丈夫なんだけど…などと、そんな甘えたことを言っているような輩のところには結局、誰もやってこない。
よって僕の場合、誰かの紹介で出会った現地在住の人と仲良くなることの方が多い。お互い紹介者のことは知っているわけで、どこか話していても安心感があるし、何より、
「●×さんとはどこで?」
などいう質問ができる。たとえ紹介者から既に関係性を聞いていたとしても僕は同じ質問をする。そんなときの僕の初めて聞いたような相槌はアカデミー賞でももらいたいくらいの名演技だと思う。って書いてしまったら、もう今後は使えないけど。
ベトナムはニャチャンの街で珍しく旅人の男性と仲良くなった。雨宿りがてら入った公園のベンチに彼も座っていたのである。僕を見るなり
「あれ?日本人ですか?」
と声をかけられた。これも情けないことに自分から声をかけたわけではない。とにかく声をかけられたことが嬉しかった。高知県の某役場に勤めている彼は来年から青年海外協力隊でドミニカ共和国に行くのだと言った。手にスペイン語の本を持っていた。僕が雨宿りに来るまで、この場所で勉強をしていたようだ。少し話していると雨も上がり、手持無沙汰になってしまった。僕は、どうしていいかわからなくなってしまった。何を血迷ったのか
「ビールでも飲みますか?」
と口走ったのである。まだ朝九時である。それでも優しい彼は是非とおっしゃってくださり、僕らは昼過ぎまでカフェで飲んだ。連絡先を教えるのも押しつけがましいと思い、僕が宿泊するホテルの前で、もし、死ぬほど暇だったら、僕は、ここに泊まっているので遊びに来てください。また一緒に飲みに行きましょうと言って別れた。
二日後、僕がロビーでコーヒーを飲んでいると彼が訪ねてきた。その日は天気もよかったので一緒に海に行き、また「333」というベトナムのビールを飲んだ。こうして僕らは初めてお互いの連絡先を交換したわけである。ばったり出会った旅人と仲良くなった出来事というのは長い旅の中でこれくらいというのも何とも情けない話である。
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