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イシコの歩行旅行、歩考旅行、歩行旅考、歩考旅考

2012-04-29
「たまにはトゥクトゥクで空港へ」

 ホテルでタクシーを頼むと運転手も法外な値段をふっかけることはできないので安心ではあるがホテルに対するコミッションも入ってくるのか少々、高くなる。安心安全を買っていると思えば、安いものと言う人もいる。僕もホテルでタクシーを頼むことは多いので賛成派なのだろう。旅の最後の最後に、タクシーのトラブルで嫌な思いもしたくない。しかも、それがトラブルで飛行機に乗り遅れたなんてことになれば逆に高くつく。しかし、人間とはわがままなもので時折、小さな冒険心が湧いてくることがある。例えば車ではなくトゥクトゥク(客席のついたバイクタクシー)で空港まで行ってみようかなぁとか。旅慣れた人達からすれば当たり前のことだと笑われそうだが小心者の僕にとっては、これはかなりの冒険なのだ。

 以前、ラオスのルアンパバーンという世界遺産の街でホテルからトゥクトゥクで空港に向かったことがある。なぜか運転手の子供も一緒に乗ってきた。そのトゥクトゥクが途中でガス欠になった。空港に向かう途中の道は周囲に何もなく、近くにガソリンスタンドがある気配もなかった。運転手は気まずそうだが無理に笑顔を作り僕にちょっと待っててとジャスチャーをして、ヒッチハイクでバイクを捕まえた。そして子供を置いたまま、ガソリンスタンドに行ってしまった。そこまで飛行機出発までの時間に余裕があったわけでもないが、そこまで切羽詰まっているわけでもない。
リュックから持っていたマジックバルーンを取り出し、言葉が通じない子供に風船で動物を作って一緒に遊んでいると運転手は十五分程度で戻ってきて事なきを得た。トラブルといえばトラブルなのだが、あの時間はルアンパバーンで過ごした時間の中でも上位に入る楽しい時間の一つになり、一生、忘れられない記憶が刻まれた。何がよくて何が悪いのかなんて後になってみないとわからないものである。

 プノンペンで毎日のように声をかけてきたトゥクトゥクの運転手は最初、鬱陶しいなぁと思っていたが、そのうち、ふと彼の運転で空港まで行ってみようかなぁと思った。インターネットの情報によればタクシーで空港まで五ドル程度。ちなみにホテルで頼むと九ドル。

 この街を離れる前日の夜、ホテルに戻る際、彼がまた明日はタクシーいらないかと聞いてきたので空港までの値段を聞いてみた。七ドルと返ってきた。話にならないというような感じで、僕はホテルに戻る振りをすると彼はいくらならいいの?と聞いてきた。三ドルと半値以下で言うと、彼は渋い顔をしながら、四ドルは?と聞いてきた。四ドルでもホテルで頼むタクシーの半値以下である。オッケーと言い、待ち合わせの時間を確認し合って別れた。

 翌日、ホテルのチェックアウトを済ませているとガラス窓の向こうから嬉しそうに手を振る運転手のおじさんがいた。いつも毛嫌いしていたおじさんが、かわいらしく見えた。トランクを持って外に出ると彼は小走りで向かってきて荷物を持ちトゥクトゥクに乗せてくれた。僕は値段を再確認するとオフコースと言い、次、来た時はガイドするから電話をくださいと片言の英語で言いながら運転を始める前に僕に名刺をくれた。その後でバンコクからここまでは近いからと付けくわえた。彼は僕をタイ人と間違えていた。僕は訂正することもなく、そのままタイ人の客として空港に向かった。

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ishiko
ishiko

イシコ。1968年岐阜県生まれ。女性ファッション誌、WEBマガジン編集長を経て、2002年(有)ホワイトマンプロジェクト設立。50名近いメンバーが顔を白塗りにすることでさまざまなボーダーを取り払い、ショーや写真を使った表現活動、環境教育などを行って話題になる。また、一ヵ月90食寿司を食べ続けるブログや世界の美容室で髪の毛を切るエッセイなど独特な体験を元にした執筆活動多数。岐阜の生家の除草用にヤギを飼い始めたことから、ヤギプロジェクト発足。ヤギマニアになりつつある。

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