2012-06-10
「訪れた街の表現を感じるために」
映画も好きだが、芝居など生で観られるエンターテイメントも大好きである。よって新しい街に行くと演劇やダンスの情報を探る。ニューヨークやロンドンなどエンターテイメントが盛んな国であれば、情報誌やフライヤーなどで情報も手に入りやすいが、東南アジアでは、なかなかそういった情報は手に入りにくい。一応、ガイドブックに掲載されているエンターテイメント情報もあるが、できれば現地の人達が観るような芝居やダンスも観てみたい。わかりやすく言えば歌舞伎も観たいが小劇場も観てみたいのである。
ペルーの小劇場で観たポップな舞台美術、ブルキナファソの屋外劇場で観た新聞で創られた衣装で踊るコンテンポラリーダンス、シンガポールのクラブで観たスキンヘッドの男性達だけで踊るバレエ、中国の劇場で観た100名以上、舞台に登場するシェイクスピアなど、旅先で観る印象的な景色と同じように舞台もそれぞれの場所で頭に絵を残してくれる。言葉などわからなくても動く絵画を観るように楽しむ。
さて、その動く絵画を観る為にインフォメーションセンターをよく利用する。デリーのコンノートプレイスにあるインフォメーションセンターに向かうが、地図に書かれた場所近辺にはインフォメーションセンターと書かれたところばかりである。全て旅行代理店。旅人なら間違えて入ってしまいそうだ。いかにもインドらしい。どれが本物のインフォメーションセンターかわからない。道行く人に聞いて、ようやく辿り着いたインフォメーションセンターのおじさまは話好きなのはいいが、
「一週間以上も滞在するんだったら他の街も行った方がいいぞ」
「いいカメラだなぁ。見せてくれ」
などと、なかなかエンターテイメント情報をくれない。会話にならない英語で三十分程度、話し込んだ後、ようやく出してくれたエンターテイメント情報は、昨年、デリーに来た時に観た観光客向けのダンスだった。
僕が一週間の演劇フェスティバルが行われているとホテルで聞いた旨を告げると困ったように頭を掻きながら、ここかなぁといった感じで地図に印をつけてくれた。この情報は怪しい。しかし、今はそれしか頼るところがない。歩けば一時間以上はかかりそうだ。地図を眺めると途中にインド門を通るので観光がてら歩いて、その後、オートリキシャー(バイクタクシー)に乗って向かうことにした。
インフォメーションセンターのおじさまが教えてくれた場所に到着したのはホテルを出てから既に三時間以上が経っていた。しかし、その場所ではアートの展覧会はやっているものの芝居やダンスをやっている気配はない。スケジュール表が貼られているボードを見ると僕の滞在中にはトークショーくらいしかやらないようで肝心の演劇フェスティバルは公演していない。
しかし、近くのインフォメーションボードに演劇フェスティバルのポスターが貼られているのを見つけた。地図は書かれていないが劇場名と住所が書かれていた。これだけでも来た甲斐あり。目の前のベンチに座り、地図を広げて眺めること十五分。ようやく劇場のある通り名を見つけた。これで何とか劇場にたどり着けそうだ。こうして動く絵画に辿り着くまで半日近くかかるわけだが、それでも今回のようにインド人演出の素晴らしいシェイクスピアの芝居に出会えると探してよかったなぁとつくづく思うのである。
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