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イシコの歩行旅行、歩考旅行、歩行旅考、歩考旅考

2012-08-26
「ガイドブックに縛られて」

 パック旅、グループ旅、一人旅と旅には様々な種類があるが、僕はどれもそれなりに好きである。パック旅は全て予定が決まっているのでついて行くだけなので楽だし、効率よく観光地を回ってくれるのでダイジェスト版のように楽しむことができる。グループ旅はバック旅程、予定がびっしり詰まっていないので気楽だし、何より気の合う仲間とわいわい語りながら旅ができることは楽しい。そして一人旅なのだが、一人になれば人のことや時間を気にしないで勝手気ままに行くことができる。美術館で好きな絵にぶち当たれば、何時間座っていても誰にも文句は言われない。僕のように死ぬほどマーボー豆腐が好きであれば、この成都の街で誰にも気にすることなく朝からマーボー豆腐を食べればいい。

逆に言えば自分で決めないと何も動かないということでもある。ホテルでずっと眠っていても誰にも起こされることはないので、それでも同じように一日は過ぎていく。人はもったいないと言うかもしれないが、それも意識次第だと僕は思う。その人が今日は一日籠ってルームサービスを取り、ホテルライフを満喫するのだと自分で決めたのであれば、それは有意義な一日だろう。実際、僕の友人は初海外でハワイに行き、ホテルで一日、漫画を読んでいたそうだ。極端な例ではあるが、ハワイの空気の中で漫画を読んでいた時間は、彼の人生の歴史の記憶に刻まれているので僕はその行為には否定はしない。

それよりもガイドブックに縛られ、
「あぁ、あれも行ってないし、これも行ってない」
と行っていないことが大きくなってしまい、旅自体が窮屈になっている人を見ている方が辛い。もちろん僕もガイドブックのお世話になることはある。ただ、それはあくまで参考であって、たとえばパリに行って最悪、エッフェル塔に行かなくても、その人にとってのパリという時間は間違いなく流れている。
「えっ?そこまで行ってあの場所行ってないの?」
と他人から言われたら、
「そうなんですよ~。まぁ次に行く機会があったら行ってみま~す!」
と答えている。海外の同じ場所へ次に行く機会は、現実的に可能性は低いので、今、行っておかないでどうするのと言われるかもしれないが、同じ「今」という言葉を使うのであれば、自分が海外にいる今の時間を噛み締めることでいいと思う。ホテルで海外のテレビを観ている時間、コンビニやスーパーでミネラルウォーターを買う時間など、そういった全ての時間がその人のその街での旅の時間に確実に刻まれていく。

と言いつつも、またここでひっくり返すようなことを言って申し訳ないが、意識次第で、オリエンテーリングのようにゲーム感覚でガイドブックに載っている全ての場所をクリアすることを目的にするのも否定はしない。これもいざやってみると楽しいものである。矛盾だらけな考察だが、要は意識次第でどんな旅も楽しいのです。

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ishiko
ishiko

イシコ。1968年岐阜県生まれ。女性ファッション誌、WEBマガジン編集長を経て、2002年(有)ホワイトマンプロジェクト設立。50名近いメンバーが顔を白塗りにすることでさまざまなボーダーを取り払い、ショーや写真を使った表現活動、環境教育などを行って話題になる。また、一ヵ月90食寿司を食べ続けるブログや世界の美容室で髪の毛を切るエッセイなど独特な体験を元にした執筆活動多数。岐阜の生家の除草用にヤギを飼い始めたことから、ヤギプロジェクト発足。ヤギマニアになりつつある。

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