salitoté(さりとて) 歩きながら考える、大人の道草ウェブマガジン

イシコの歩行旅行、歩考旅行、歩行旅考、歩考旅考

2012-05-6
「知らない街のバスに乗る」

乗車の際に均一料金を支払うバスと降車の際に距離に応じて料金を支払うバスの二つに別れる。これは日本も海外のバスも、たいていそのどちらかである。ただ支払い方は様々。

スペリンのマドリッドなどのように運転手に行き先を告げ、距離に応じて賃金を支払ってから乗車するバスもあれば、リトアニアのビリニュスなどのように回数券を買い、乗った時に自分で専用の機械で印字し、抜き打ちのチェック係が来た時だけ見せるバスもある。ペルーのリマなどのように車掌が一緒に乗っていて、均一料金の賃金を回収しに来るバスもあり、これはミャンマーやネパールなどの東南アジアでもよく見られる支払いシステムである。均一料金なのでどこまで乗っても値段は同じなので外を眺めているうちに終点まで行ってしまうこともよくある。

日本のようなきれいなバスではなく、車掌が行き先を連呼しながら、ボロボロのバスに乗客を詰め込んでいくバスも多い。この光景は迫力があって最初、乗り込むまでは勇気がいるが一度、乗ってしまえば何てことはないし、なかなか面白い体験である。もちろんスリなども多いので荷物だけは気をつけておかなくてはいけないけれど。そして、均一料金と距離に応じての料金の、どちらのタイプもあるのがバンコクのバスである。

タイの伝統的な仮面劇を観に行こうと思い、インフォメーションで、その劇場がある場所まで行くバスの番号を聞いた。2番か511番というバスということだった。しかし、この2番というバスが全くこない。東南アジアらしいなぁと思いながら、その間にやってくる他のバスの番号をメモする。今後、その番号をどこかのバス停で見かけて方向さえ間違えなければ、ホテル近くのこのバス停まで辿りつくことになる。たいていいつも、こうして知らない街で乗るバスを増やしていく。などと思っているうちに40分以上、経っていた。来るときは3台続けてやってくるが、渋滞の中を通ってくるとこれくらいの待ち時間は当たり前になる。さすがに開演時間が心配になり、タクシーで行こうかなぁと思い、あきらめかけた頃、511番のバスがやってきた。

511番のバスはクーラーの効いたバス。クーラーなしのバスとクーラーありのバスで値段が変わる。クーラーなしのバスは均一料金だが、クーラーありのバスは距離によって値段が変わる。クーラーにあたっている時間の分に比例して乗車賃は高くなるという考え方なのだろうか。
どちらも乗ってから車掌が回収しにやってくる。車掌から行き先を聞かれ、劇場のあるラタナコシーンという場所の地名を告げる。これが全く通じない。すぐにメモ帳を取りだし、英語表記の場所名を見せるが読めないらしい。次に地図を取りだすが、地図に書かれている地名も英語表記。最後はタイ語で書かれた劇場のパンフレットを見せてようやく理解してもらえる。最後はお互いに通じたことがわかり笑い合う。旅を続けているうちに多少は打たれ強く、粘り強くなるようだ。これがダメなら、あれがある。あれがダメならこっちがあるといった具合に。

「そこまでしてバスに乗りたいの?タクシーで行った方がいいんじゃない?」
と聞かれることがあるが、
「それでも可能な限りバスがいい」
と答える。バスには現地の生活が詰まっていて車内を観察しているだけで楽しい。そして、もう一つバスに乗る理由がある。怠け者の僕はタクシーを使っていると全くと言っていいほどその街の位置関係を覚えないが、バスに乗ると地図を見ながら必死に降りる場所を探すので普段より多少は位置関係を覚えるようになるということもあるのだ。

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ishiko
ishiko

イシコ。1968年岐阜県生まれ。女性ファッション誌、WEBマガジン編集長を経て、2002年(有)ホワイトマンプロジェクト設立。50名近いメンバーが顔を白塗りにすることでさまざまなボーダーを取り払い、ショーや写真を使った表現活動、環境教育などを行って話題になる。また、一ヵ月90食寿司を食べ続けるブログや世界の美容室で髪の毛を切るエッセイなど独特な体験を元にした執筆活動多数。岐阜の生家の除草用にヤギを飼い始めたことから、ヤギプロジェクト発足。ヤギマニアになりつつある。

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