2012-08-19
「パスポートを携帯していますか?」
パスポートは海外での唯一の身分証明書なのにセキュリティボックスに預けるのはなぜだろう。首と肩のあたりに熱いシャワーを当てながら考えていた。この部分にあてると旅の疲労感が旅の幸福感に変わる。そして一日の旅を走馬灯のように思い返す。
成都市の天府広場で中国の警察にあたる公安から身分証明書の提示を求められた。つまりパスポートの提示である。僕が金髪の東洋人で毛沢東の銅像や広場の写真を撮りまくっていたからかもしれないが、僕が調べられた後、人民公園を散歩していた外国人もパスポートの提示を求められていたので、外国人の取り締まりが厳しい時期だったのだろう。中国では外国人のパスポート携帯義務がある国だということをすっかり忘れていた。
世界にはパスポート携帯義務がある国とない国がある。ちなみに日本でも外国人は外国人登録証明書を持っていない限り、パスポート携帯義務がある。それがいつ入国したかもわかる唯一の身分証明書になるから。
その唯一の身分証明書を僕は、パスポートのコピーしか携帯していなかった。
「I have only copy」
そう片言の英語を言いながら、コピーを提示すると公安の一人が、入国スタンプのページのコピーも求めてきた。つまり入国した日を知りたいのである。持っていない旨を伝えると宿泊しているホテルを聞かれ、公園のベンチで軽い取り調べが行われる。無線でパスポート番号の情報を引き出されている。日本で警察が自転車の登録番号を照会するのと同じような雰囲気である。その間に僕は泊まっているホテルの住所を書き留めたメモ帳を取り出して提示した。ホテルの住所は散歩していて迷った時、タクシーの運転手に見せるのに便利なので必ずメモするようにしている。もちろんその国の言葉で書いてあるホテルのカードがあれば、それを持ち歩くのが一番いい。
なぜ、パスポートを持っていかないのかに考えを戻しながら、シャワーに背を向け、前屈しながら腰にあてる。これもまた気持ちいい。パスポートは団体旅行であれば、まず職務質問されることもなく、せいぜいそれをアテンドしている添乗員が提示を求められるくらいだろう。しかも添乗員は旅行者にパスポートをなくされては面倒なことになり、団体行動ができなくなるため
「パスポートはセキュリティボックスに預けてくださいね」
と言うことが多い。その名残が自分の中に残っているのかもしれない。しかも、その時にアテンドしてくださった方がしてくださったパスポート提示を装ったパスポート泥棒の話も印象深かった。
しかし、それから個人で旅をすることが多くなり、ホテルに泊まるときに提示が必要なのはもちろんのこと、ちょっと街でレンタサイクルでも借りようかなぁと思ったときもパスポートの提示が必要になる。ましてや今回のように提示義務を求められることがあった場合は、持っていないと逆に面倒なことになる。ある意味、違反にあたるわけなので、警察に連れていかれても文句は言えない。明日からはまたパスポートを携帯しよう。こうして旅の一日の反省を終えてから、シャワーの栓を止めることが日課になっている。
コメントはまだありません
まだコメントはありません。よろしければひとことどうぞ!
コメントする ※すべて必須項目です。投稿されたコメントは運営者の承認後に公開されます。