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イシコの歩行旅行、歩考旅行、歩行旅考、歩考旅考

2012-02-26
「賄賂という風習」

賄賂というと現在の日本では、汚らしいことや卑劣なことと感じる方も多いだろう。僕も決して好きな言葉ではない。ただ旅をしていると世界には賄賂と生活が密着している場所は確実にある。ロシアに行ったとき、現地在住の日本人が出してくれた賄賂のおかげで、盗まれたカメラの保険の為の書類を警察で早急に作ってもらえたことがある。恐らく彼らにとって賄賂というのは昔の日本の飲酒運転のように、「本当はダメなんだけど、みんなもらっているからいいだろう」的な感覚なのだと思う。

バリ島はバトゥール山に向かっていた時の話である。世界のヒーラーと呼ばれる人達からすると、世界には十三のチャクラがあり、その第一チャクラがこの山なのだそうだ。その山へウブド在住の日本人女性に誘われ、一緒にバイクで行くことにしたのだ。ウブドから三十分程、走った頃だろうか。早朝六時過ぎにも関わらず、途中で検問に遭遇した。このとき僕は日本の免許証しか持っていなかった。インドネシアでは国際免許証も通用しない。この国専用の免許証を取得しなくてはならないのだ。

東南アジア独特の濃い顔の警察官が
「ホエ ア フロム?」
と穏やかに聞いてきた。ジャパンと答えると車検証と免許所を提示するように求められる。現地に住む日本人女性は一年間のインドネシアの免許証を取得しているので大丈夫だが、持っていない僕はバイクから降りるように言われる。そして、パトカーのところまで連れていかれた。一応、出すように言われた日本の免許証は取り上げられてしまった。彼は免許証を指で挟みながら、警察まで行って話を続けるかそれともここで処理してしまうかと片言の英語で言っているようだった。事前に現地の人から警察が賄賂を欲しい時に言う台詞を聞いていたので予測ができた。彼の言う「ここで処理してしまう」というのは、つまり賄賂を渡すということである。 

先程の穏やかな顔は、すっかり消え、悪代官のような顔になっていた。前日に観た、この島の伝統芸能であるレゴンダンスの表情を見ているかのような変わり様である。ここで下手に正義感を出して警察まで行くと言うと、かなり絞られ、更なる金額を要求されることもあるそうだ。恐る恐る僕は財布を取り出し、お店で物を買うようにいくらかを聞くと10万ルピア(約1,000円)と言う。僕は10万ルピアを手渡すと、彼は
「ビー ケアフル」
と言って免許書を返しながら、お金を受け取ると胸のポケットにしまった。

一年間有効の免許書を取得するのに35万ルピア(約3,500円)かかるそうだ。それを取っておけば気持ち的にも楽だと考えるのが日本人だろうが、こちらに長く住んでいる人達からすれば、後二回は捕まっても大丈夫だと言う。さて、あなたならどちらを選択しますか。もちろん賄賂の話はあくまで僕の場合であって、全てにあてはまるわけではない。賄賂を渡して逃れようとして、大変な目に遭った人の話を聞いたことがあることも付けくわえておく。

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ishiko
ishiko

イシコ。1968年岐阜県生まれ。女性ファッション誌、WEBマガジン編集長を経て、2002年(有)ホワイトマンプロジェクト設立。50名近いメンバーが顔を白塗りにすることでさまざまなボーダーを取り払い、ショーや写真を使った表現活動、環境教育などを行って話題になる。また、一ヵ月90食寿司を食べ続けるブログや世界の美容室で髪の毛を切るエッセイなど独特な体験を元にした執筆活動多数。岐阜の生家の除草用にヤギを飼い始めたことから、ヤギプロジェクト発足。ヤギマニアになりつつある。

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