2012-02-12
「旅先で宿に籠る贅沢さ」
ここ数年の異常気象はウブドの雨季にも影響があるようだ。以前は、スコールがあったら、カラッと晴れたのが、日本の梅雨のように一日中、雨がじとじとと降りっぱなしの日もある。
旅の間に雨が降ると「ついていないなぁ」と言う人がいる。しかし、部屋で過ごすことも好きな僕にとっては旅の合間の雨の一日が好きだったりもする。
朝食時に一日、雨だとわかるとその日はホテルライフを楽しもうと頭を切り替える。朝食後、たまには締切り間際ではなく、余裕を持って…と部屋に籠って原稿を書き始める。僕がそう思っているだけかもしれないが不思議と行間にゆとりを感じる気もする(担当編集者には言われたことはないけれど)。
朝風呂でも夜風呂でもなく、ブラ風呂(ブランチのような風呂の略)と称し、午前中の遅めの時間にバスタブにお湯を張り、街で購入した入浴剤を入れてゆっくり浸かることもある。風呂からあがり、軽くストレッチをしながら、デジタル音楽プレーヤーに入っているアルバムを一枚選び、丁寧に聞く。クラシックのこともあれば、ヘビメタだったりすることもある。
ランチをとることもあるが、いつのまにかランチタイムを過ぎていて、クッキーをつまんで終わりにしてしまうことも多い。
午後は部屋の外に置かれたベランダの軒先にある椅子に座り、本を読む。エッセイ、小説、評論…問わず、何でも読む。全く縁のなかった歴史小説も最近、読むようになった。高校時代、世界史のテストで学年最下位をとったこともある程、歴史音痴の僕が、このところ歴史に興味を持ち始めていることに気がついたのも確か雨の日だった。
時折、うたたねを貪ることもあれば、買っておいた地元の酒を飲むこともある。バリ島に来てからは地元インドネシアのハッテンワインの赤。インドネシアは海外から輸入する酒の関税がかなり高く、現在400パーセントとも言われる。日本では手頃なオーストラリアワインも、インドネシアの物価から考えると信じられないような値段で売られている。よって地元のワインを買うようになった。決して不味くはないが、感動するほど美味しくもない。こんな時は味よりもシチュエーション優先である。
少し酔いがまわったところで、その国で買った煙草を吸うこともある。普段、吸わないんだけれど。旅の間、持ち歩いている葉巻を吸うこともある。葉巻に詳しい人からするとこれだけ旅で持ち歩いている葉巻は状態が悪いと言われそうだが、ワインと同じで僕の場合、シチュエーション優先。雨の音とワインの香りと葉巻の煙。この三つを楽しむだけで自分にとっての贅沢な時間ができあがる。あっという間に陽は暮れていく。
「せっかくの旅がもったいない。そんなの日本でやればいいじゃん 」
と言われそうだ。しかし、その場所で聞いた音楽も、その場所で読んだ本も、その場所で飲んだワインもその場所での記憶として身体の中に刻みこまれると僕は思っている。それでももったいないわよと言うアクティブな方が雨をぬって行動することも、もちろん否定しない。ただ、雨の日に海外のホテルやコテージに籠る時間の贅沢も認めてほしい…って、バリバリの体育会系の人達と一緒に旅に行くとなかなか認めてもらえないんですけどね。
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