2011-08-14
「タクシーの交渉と街の使用料」
空港を出た途端、もしくは駅を出た途端、まるで自分が有名人にでもなったかのように人に囲まれることがある。しかし、囲むのはファンではなくタクシーの運転手。初めてその街に降り立った旅人を狙う運転手は多い。今は随分、平気になったが慣れるまでは嫌だった。苦手な値段交渉というものが必要だからである。そして高い値段を払って悔しい思いを何度もさせられた。
事前にガイドブックやインターネットで調べておけば値段の相場はある程度、想像できる。たとえ僕のように普段、あまりガイドブックを持たない人も国際空港であれば、たいてい空港内にあるインフォメーションセンターで片言の英語を駆使して、値段くらいは調べることができる。最低限の情報を持っていれば、交渉の際、自分の中の価格の許容範囲を作ることができる。
問題は電車や長距離バスで地方都市に行くとき。バスターミナルや駅が街の中心地から離れていることも少なくなく、その場合、中心地までの相場がわからないことがある。そんなときも「ハウマッチ?」ととりあえず聞いてみる。返ってくる答えは日本人の感覚からすると安く感じるが、たいてい相場の倍以上の金額であることが多い。こういうところで声を真っ先にかけてくる運転手は、よく言えば商売上手で、悪く言えば狡賢い。僕は彼らが言った金額のたいてい半額の値段を言うことにしている。すると彼らは笑うか話にならないというような顔をして行ってしまう。
僕は動じない…フリをする。携帯電話を取り出してメールでも確認する…これまたフリをする。もちろん携帯メールをやらない僕は時間を確認するだけ。携帯をいじることで、こいつ街の誰かと連絡をとっているのかも?ひょっとして、この街に慣れているかも?などと思ってくれたらもうけもの。思ってくれなくてもいい。とりあえず間合いを取る。
結局、客がとれずに同じ運転手がもう一度、交渉に来ることもあるし、やりとりを見ていた別の運転手が近くに寄ってきて、「タクシー?」と言ってくることもある。別の運転手だったら、「ハウマッチ?」と再度、聞くと、たいてい値段は少し安くなっている。それで乗っても先程より安いのだが、その価格よりもう少し安い値段で乗れたらよしとしている。それでも、たいてい、何日かその街で生活しながら乗り物を利用していると初日が一番、高かったことがほとんど。
以前は、それがわかる度に悔しがったが、最近では、その差額は空港使用料ならぬ街使用料と名付けて納得するようにしている。初めての街でお世話になります…といった感じで割り切ってしまうのである。
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