2010-11-29
「イスラムの街のファーストフード店」
コタバル中心地のバスセンターは、スカーフを巻いたイスラム教徒の女性達で埋めつくされていた。
マレーシアで一番イスラム色の強い街とも言われている。
クアラルンプールのモスク近くのマクドナルドに
ラマダン(断食)直後のイスラム教徒が群がる様子を見たことがあるが、そんなレベルではなかった。
そのイスラム教徒の女性の中に外国人の僕が降り立つ感覚は、以前、西アフリカで黒人の中に一人紛れ込んだ時の感覚に近かった。
旅をしている時、こういった人種と宗教の違いを頭ではなく、感覚で味わう瞬間は妙な刺激がある。
A&Wというアメリカのファーストフード店が目に入った。
そういえば、深夜特急の到着は五時間ほど遅れ、この二十時間、ミネラルウォーター以外、口にしていなかった。
今日、泊まる宿が決まっていない不安より何かお腹にいれたい欲求の方が大きかった。
誘われるように、ふらふらと入っていくと3リットルは入りそうな大きな容器にルートビアという炭酸飲料を詰めているスタッフ達から声を揃えて「クローズ!」と言われた。
後から知ったのだが、ラマダンスペシャルと呼ばれる断食中のイスラム教徒向けに売られているスペシャル商品だった。
仕方なくまた気温三十五度の街に放り出される。
リュックは背中に張り付き、べっとり汗をかいているのがわかる。
シャワーを浴びたい欲求も加わってくる。
天井の扇風機だけがゆっくり回る食堂が見えた。
お腹にいれたい欲求があったにも関わらず、なぜか入る気がしない。
先程のA&Wでクーラーの心地よさを味わってしまったからであろう。
結局、マクドナルドに入った。
先程のA&Wといい、マクドナルドといい、二十時間以上、口にしていないときに入りたい店ではない。
お腹にいれたい欲求はあるが重いものは欲しくない。
ただ、マクドナルドのメニューの中には、ありがたいことに日本では見かけないお粥のメニューがあった。
冷たいコカコーラと供に受け取ると二階席へあがる。
リュックを身体から剥がすと汗でくっついたアロハシャツの嫌な感触が背中に残り、大きなため息をつく。
コカコーラのLサイズを半分程、一気に飲み、今度は安堵のため息をつく。
奥の席では、華人の高校生達がコカコーラを飲んではしゃいでいた。
服装からすれば彼女たちはイスラム教徒ではないのだろう。
イスラム教徒の女性達は控え目で、おっとりとしたイメージがある。
化粧の濃いイスラム教徒も似合わない気がするし、ヤンキーのイスラム教徒も似合わない気がする。
イスラム教徒は社会主義国家とはまた違う画一的な社会の人々というイメージが未だ僕の中には強い。
もちろん本人達が聞いたら、その認識の違いに笑いだすかもしれない。
日本人が今でも侍がたくさんいると思われているのと同じように。
店内に「きゃぴきゃぴ」という表現が似合う声が響き渡っていた。
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