salitoté(さりとて) 歩きながら考える、大人の道草ウェブマガジン

イシコの歩行旅行、歩考旅行、歩行旅考、歩考旅考

2011-09-11
「見続けることで生まれる価値基準(ノーンカーイ/タイ)」

街に長く滞在し、何の目的もなくブラブラ街を散歩していると思わぬイベントに出会うことがある。例えば、教会をのぞいたときに、たまたま結婚式に出会うというのがその典型的な例だろう。公園や特設会場のイベントに出会うこともある。そういった時、ラッキーと思って写真を撮るかもしれないが、たいてい長居はしない。言葉がわからないこともあるが、それを目的で観に来たイベントでなければ、たいてい、すぐに飽きてしまうからである。

交差点で信号待ちをしていると僕の脇でボロボロのバスが一台止まった。一目で舞台用とわかるような濃いメイクの若い女性達がバスの窓から顔を出していた。バスの上には舞台の大道具や小道具などが積まれている。信号が変わりバスは追い抜いていった。後ろの扉は開いており、タイの民俗衣装を着た若い男性達が立ったまま、捕まるようにして乗っていた。

きっと、どこかでイベントでもあるのだろう。そう思いながら、バスの行方を目で追っていると斜め前のサッカースタジアムの中に入って行った。スタンドとスタンドの切れ目から中をのぞくとグランドの中央あたりに設置された舞台が見えた。その周囲には民族衣装をまとい、舞台化粧を施した女性達であふれている。

引き寄せられるようにスタジアムの入口に向かった。入口といっても扉があるわけでもなく、警備があるわけでもない。単に公園に入っていくような感じである。舞台の脇には屋台も出ている。客席にはほとんど観客が座っていなかったが、舞台上では男性と女性の司会者が登場し、タイ語で話し始めた。

どうやら何かのコンテストのようだ。客席であるスタンドの一部には審査員らしき男性が三名座っている。その様子を見ながら、今日は最後まで、このイベントに、とことんつき合って観てみようかなぁと思った。なぜ、そう思ったのかはわからない。舞台化粧の女性達に惹かれたのか、それとも舞台の大きさに何かを期待したのか。それとも自分に何か義務を課してみようと思ったこともある。一番は暇だったのだろう。

イベントはタイ東北部の音楽に合わせた舞踊や演劇が入り混じった「ポンラン」のコンテストだった。もちろん来る時に見かけたバスのチームも参加していた。一チームの演じる時間は約三十分。一チームか二チーム観る分には興味深くて楽しい。しかし、似たような曲調が流れ、似たような踊りを延々見続けるとなると飽きてしまう。それでも僕は見続けていた。どこかで同じような物を見続けた時、自分の中に何か別の価値基準が芽生えるような気もしたからである。途中、売店で売っていたカップヌードルを買ってすすり、コーヒーを飲み、挙句にはビールを飲んで昼寝も貪りながらとにかく見続けた。

次第に踊り方や曲調に自分なりの好みが出ていることに気がついた。それが自分なりの価値基準が生まれた瞬間なのかもしれない。まぁ、その価値基準が見えたからと言って何が変わるわけでもないのだけれど。それにしても六時間は長かったなぁ。

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ishiko
ishiko

イシコ。1968年岐阜県生まれ。女性ファッション誌、WEBマガジン編集長を経て、2002年(有)ホワイトマンプロジェクト設立。50名近いメンバーが顔を白塗りにすることでさまざまなボーダーを取り払い、ショーや写真を使った表現活動、環境教育などを行って話題になる。また、一ヵ月90食寿司を食べ続けるブログや世界の美容室で髪の毛を切るエッセイなど独特な体験を元にした執筆活動多数。岐阜の生家の除草用にヤギを飼い始めたことから、ヤギプロジェクト発足。ヤギマニアになりつつある。

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