salitoté(さりとて) 歩きながら考える、大人の道草ウェブマガジン

イシコの歩行旅行、歩考旅行、歩行旅考、歩考旅考

2011-09-18
「大人の遠足(ビエンチャン/ラオス)」

現代の交通手段の発達で日帰り旅行、つまり「遠足」ができる範囲は広がった。贅沢ではあるが東京から北海道や沖縄までの飛行機遠足は可能だし、博多から出ている高速船で隣の韓国まで日帰りで焼き肉を食べに行く主婦達がいるという話も聞いたことがある。ただ、「遠足」というと今でも僕の中ではバス移動が一番に浮かび、移動時間はだいたい一時間から二時間。そういう意味では、タイのノーンカーイという街からラオスの首都ビエンチャンまで足を伸ばすというのはまさに僕にとって、「大人の遠足」のストライクゾーン。しかも国をまたいでの遠足とは素敵ではないか。

ノーンカーイのバスターミナル。一日にビエンチャンまで行くバスは五本程度あり、めいいっぱい遠足を楽しみたいのであれば朝七時台のバスに乗り込んだ方がいいが、僕はゆったり朝食を済ませてから九時台のバスに乗り込んだ。全席指定のバスは片道55バーツ(約165円)。東京でいえば都営バスよりも安い。そんな値段で隣の国まで行けてしまう。出発して十分程度でバスを降りイミグレーションでタイの出国スタンプをもらう。そして、またバスに戻り、国境を超えるタイラオス友好大橋を渡る。タイの国旗が両脇にはためき、橋の真ん中を過ぎたところからラオスの国旗に変わる。橋を渡ると再びバスを降りイミグレーションでラオスの入国スタンプをもらい、ついでにATMでラオスのキップ紙幣を降ろす。そこから三十分程度でビエンチャンのバスターミナルに到着する。イミグレーションの混み具合にもよるが出発から一時間半もあればビエンチャンのバスターミナルまで到着する。

タイに戻る最終バスの時間を確認したら後は自由。ラオス有数の黄金仏塔のあるタート・ルアンに行きたければ、ターミナルに停まっているトゥクトゥク(バイクタクシー)と交渉すればいいし、僕はパトゥーサイの展望台からビエンチャンの景色を眺め、ワットポーパケオで瞑想という名の昼寝を貪り、メコン川沿いをぶらぶら歩く。そして僕にとっての本日のメインイベントに突入する。

実はビエンチャンでワインを飲みたかったのだ。ラオスは百年程前、フランスの植民地だった為、気軽にワインが飲める店があるという話を聞いた。アジアに来てからビールばかり飲んでばかりいた僕にとって、ホテルではなく、街中でボルドーワインを飲みながら風景を眺めたかったのだ。赤ワインを傾ける時間を持つなど、まさに大人の遠足ならではの楽しみである。

無事、ワインを堪能し、ほろ酔い気分に浸りなりながら、バスターミナルへ戻っていく。最終のバスは午後六時。予約ができないので五時頃、バスターミナルへ早めに来てバスチケットを買う。そして、場内の売店で缶ビールを買って飲み、七厘を持って歩く中年女性にその場でするめを焼いてもらってつまみ、夕暮れ時のラオスの人々を観察しながらバスが来るのを待つ。午後七時半にはホテルに戻ってくる。「大人の遠足」の完成である。

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ishiko
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イシコ。1968年岐阜県生まれ。女性ファッション誌、WEBマガジン編集長を経て、2002年(有)ホワイトマンプロジェクト設立。50名近いメンバーが顔を白塗りにすることでさまざまなボーダーを取り払い、ショーや写真を使った表現活動、環境教育などを行って話題になる。また、一ヵ月90食寿司を食べ続けるブログや世界の美容室で髪の毛を切るエッセイなど独特な体験を元にした執筆活動多数。岐阜の生家の除草用にヤギを飼い始めたことから、ヤギプロジェクト発足。ヤギマニアになりつつある。

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