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イシコの歩行旅行、歩考旅行、歩行旅考、歩考旅考

2011-06-12
「値段交渉しないでバイクタクシーに乗る(モウラミャイン/ミャンマー)」

営業許可証替わりの青いベストを着用したバイクタクシーの運転手達は、列車から降りてきた客に次々と声をかける。モウラミャインの駅前は列車の到着時刻に合わせ、バイクタクシーの運転手達で溢れていた。

客は次々とタクシーにまたがっていく。タクシーは「乗る」という表現だとばかり思っていたが、「またがる」という表現が似合う光景である。中には大きな荷物を持った客もいる。その場合、運転席の前に荷物を置き、視界だけ確保し、身体で挟むようにして走りだす。日本では警察に止められそうな走り方である。

客引きができず後ろの方でもじもじしているタクシードライバーもいる。ミャンマー人は恥ずかしがり屋も多い。どちらかと言うと僕も人見知りの恥ずかしがり屋なので、できれば、そういったドライバーに乗りたい。

まるで迎えの人を探す振りをしながら、「ホエア?」と聞いてくる社交的なドライバーを笑顔であしらう。恥ずかしそうにこちらを見ている青いベストのドライバーと目が合う。軽く会釈すると彼はにこりと笑いながら、「タクシー?」と小さな声で聞く。僕も「グイ・モー・ホテル?」と小さな声で聞く。お互い英語ができないものどうし、名詞の語尾揚げ質問で意思疎通をはかる。

彼は小さくうなずいた。本来、他の国ならば、この後に値段交渉がある。適正価格を知らないのだから、最初は多少、高くても仕方がないと僕は思っている。それも勉強代。しかも日本より安いと思う。もちろん程度問題ではある。もし、高過ぎると感じたら、その運転手をやめて他の運転手に変えてみればいいだけのことである。 

何人かに聞いているうちに相場がわかってくることもある。同じ値段のこともあるが、たいてい他の人に聞きに行こうとすると値段が下がったりする。しかし、今回、値段交渉しないでそのまま彼の後ろの席にまたがった。恥ずかしがり屋のドライバーに好感を持ち、彼を信じてみようと思ったのである。

ドライバーはヘルメットをかぶらないし、客もヘルメットを渡されない。つまりノーヘルである。日本だったらノーヘルで乗ることは暴走族か映画の中でしかあり得ないが、これが理屈抜きで気持ちいい。危ないという理性が働かないわけではないが、顔で直接、風を感じる気持ち良さを味わう幸福感の方が大きい。

駅から数キロ先にあるホテルの前に停まり、荷物を降ろすと恥ずかしそうに500チャット(約50円)と英語で言った。僕が財布から紙幣を取り出すと左手を右手に添えて丁寧に受け取った。

あれから何度となくバイクタクシーを使っている。やはり、だいたいどの運転手も500チャット程度とコーヒー一杯分くらいの値段である。この街のバイクタクシーの質がいいのか、たまたま僕がイイ人に当たっただけなのか、未だにわからない。もちろんぼったくられている可能性もあるのだけれど。

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ishiko
ishiko

イシコ。1968年岐阜県生まれ。女性ファッション誌、WEBマガジン編集長を経て、2002年(有)ホワイトマンプロジェクト設立。50名近いメンバーが顔を白塗りにすることでさまざまなボーダーを取り払い、ショーや写真を使った表現活動、環境教育などを行って話題になる。また、一ヵ月90食寿司を食べ続けるブログや世界の美容室で髪の毛を切るエッセイなど独特な体験を元にした執筆活動多数。岐阜の生家の除草用にヤギを飼い始めたことから、ヤギプロジェクト発足。ヤギマニアになりつつある。

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