salitoté(さりとて) 歩きながら考える、大人の道草ウェブマガジン

白線の裡側まで

2010-10-17
女たちのビバ!チリ

今月14日。 チリ鉱山落盤事故で地下に閉じ込められた男たち33人が救出され、2ヶ月ぶりに地上へ帰ってきた。救出カプセル「フェニックス(不死鳥)」に乗り、暗黒の地底トンネルを抜け、ひとり、またひとり、愛する家族が待つ地上へ現れ出る映像に感動しつつ、妙に興味を惹かれたのは、鉱山労働者の妻、恋人、愛人たち。
チリ大統領とも気さくに会話を交わしながら、テーブルを囲んでワイン片手に興奮気味におしゃべりに興じる女性たちが何とも楽しそうで、これはもしや「SATC」をも凌ぐ、女の愉しさ真骨頂ではないかと。なんせ、自分の夫やパートナーが今まさに死の淵から生還してくるのである。それだけでも何とも言えない喜びなのに、その歓喜の瞬間が1人ずつ順番にやってくる。誰もがヒロインになれるのだ。世界中に見つめられながら…

「どうしよう、次、わたしかも〜」
「ああドキドキしてきたわ〜」
「ウソー、わたしやわ!」
「キャー、頑張って〜!」

それはもうこれ以上ない絶頂の興奮と楽しさに違いない。

自分があの救出現場で待つ女房軍団のメンバーなら、同じ境遇の女同士、今この瞬間を盛りにやかましいほど飲んでしゃべって、ひたすら泣き笑いしているに違いない。
ああ見えて逆境やストレスに弱い夫の性格をクチグチに露呈し合い「それやのに、ほんまによう頑張ったわ」と一同涙。
「最初は殴り合いもあったみたいやけど、あれ絶対うちの人やわ…」という彼女に「何言うてるの。あの状況やったら誰でもそうなるよ!」「ケンカして仲よくなるのが男やで!」と励まし合い、笑い合い、「ありがとう」の涙、涙、また涙。

「でも、こうして一致団結生き抜けたのも親方のおかげよ」
「やっぱり、ウルシアさんは器が違う。みんなのゴッドファーザーやわ」
「ほんま、ドン・ウルチオーネやね」
「けど、この救出法を教えてくれたのはアメリカのNASAらしいよ」
「さすが、ありがたいなぁ」
「けど、あの滑車機械は中国製らしいわ」
「うそ〜、大丈夫かいな!」(爆&コケ)。

などと、うっかり何しに来たか忘れるほど、おしゃべりな花を咲かせて咲かせて、咲き誇るだろう。
何があっても、思いひとつ、心ひとつ、しゃべりひとつで花も嵐も踏み越えて、恐いくらい幸せになれるのが達者な女のノド自慢。泣きたいときこそしゃべってなんぼの花舞台・・・

とか何とか、芝居がかった空想はともかく、歴史の影に女あり。チリ救出劇の裏側にもきっと、人には言えない女たちの喜怒哀楽、激情芝居があったはず。あると願って、 チリの女たちの大奥ドラマにビバ!乾杯。

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1件のコメント

とか何とか、芝居がかった空想はともかく、歴史の影に女あり。
チリ救出劇の裏側にもきっと、人には言えない女たちの喜怒哀楽、
激情芝居があったはず。あると願って、 チリの女たちの大奥ドラマにビバ!乾杯。
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Ritsuko  さん 参考になりました、鋭いですね。。

by 時占い - 2010/12/10 10:58 PM

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Ritsuko Tagawa
Ritsuko Tagawa

多川麗津子/コピーライター 1970年大阪生まれ。在阪広告制作会社に勤務後、フリーランスに。その後、5年間の東京暮らしを経て、現在まさかのパリ在住。

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