2011-03-21
「両替商との交渉にゲーム感覚」
「このホテルのレートはよくないので10ドルだけ両替しますね。残りはマーケットで両替した方がいいと思う」
ホテルのフロントに立つ若い男性スタッフはそう言って、僕が出した50ドルのうち10ドル紙幣を一枚だけを抜き取った。そして、10ドル分の1000チャット紙幣を11枚すなわち11000チャットを手渡してくれた。11000チャットがミャンマーではどの程度の金額なのか。コーヒー一杯が300チャット(約30円)、映画館の入場料が約1000チャット(約100円)なので10ドルもあれば1日は楽しく遊べる。
1000チャット(約100円)でミャンマーの麺料理「モヒンガー」を食べると両替がてらヤンゴンで一番広いと言われるボーヂョーアウンサン・マーケットに向かった。大きな屋根つきの建物の中に小さな衣料品店や土産物屋が密集している。マーケットを一通りまわってみるのだが両替屋は見当たらなかった。時折、
「エクスチェンジ?」
とニヤニヤしながら声をかけてくる人は多い。万年、電力不足のミャンマーでは市場も電気が最小限しか灯っていないため、どこか暗く感じられ、そのせいか余計に怪しく思われる。
衣料品店の中年の女性に両替屋の場所を片言の英語で聞いてみると僕が怪しいと思っている人々を指す。ひょっとすると両替屋なる店はなく、それぞれ個人でやっているだけなのかもしれない。試しに次に「エクスチェンジ?」と声をかけてきた中年男性と交渉してみることにした。Tシャツに巻きスカートのようなミャンマーの民族衣装「ロンジン」を履いた彼は僕が両替に興味を示すと、すぐに鞄から電卓を取り出し、いくら変えたいか尋ねてきた。
とりあえず20ドルでいくらか聞いてみた。すると、彼は僕に電卓を渡し、希望の額を押せと言う。しかし、その時の僕にはホテルの両替のレートしか比較するものがなく、町の両替の相場がわからない。そのため、相手がいくらうつのかを見たかった。僕は彼の方に電卓を向け、あなたが先に金額を打つように促した。しかし、彼はあなたが先にどうぞという感じで、また電卓を渡す。僕は彼が電卓をうつまで一切、電卓に手を触れず、何度か押し問答を繰り返した。そのうちに彼はしびれをきらし、頭をかきながら、仕方なくといった感じで、電卓に「22000」という数字をうった。ホテルと全く同じレートである。
話にならないといった感じで僕は立ち去るフリをした。すると彼は僕の腕をつかみ、僕に電卓を渡した。僕は初めて、「26000」と打ち込んだ。彼は顔をしかめながら、電卓のクリアボタンを押し、「23000」と打ち直した。また、僕が行こうとすると彼は腕をつかんで「23500」と打ち直し、逆に僕が電卓のクリアボタンを押し、「24000」とうつ。彼は仕方がないといった表情で、渋々うなずきながら、財布からピン札の1000チャット紙幣を24枚取り出した。
こういうやりとりもたまには楽しいものである。ゲーム感覚にスイッチが入った僕は、ドル紙幣を少額ずつチャットに変えながら、このゲームを楽しむことにした。
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