2011-03-13
「ノートパソコンが持ち込めない国?」
ミャンマーのヤンゴン国際空港は軍事国家というイメージとは程遠い空港に変身していた。軍事国家にふさわしい空港はどんなものなのかと問われると困るのだが少なくともここまで明るい空港のイメージはない。
うす暗く、天井に大きな扇風機がゆっくりまわっている映画のワンシーンのようなイミグレーションの列に並ぶ。2001年同じ空港に降り立った時の記憶である。
「軍事国家」という馴染みのない四文字の漢字を思い浮かべながら、本当に僕はこの国に入国できるのだろうかというドキドキ感が逆に自分自身を高揚させていた。
しかし、今回の新しいヤンゴン国際空港にはその高揚感がない。高い天井と広さもあるが、イミグレーションの列の右隣が総ガラス張りになっており、迎えに来た人達が、こちら側にいる乗客にニコニコして手を振り、名前の書かれたボードを振り回す人もいる。イミグレーションというのは、セキュリティの面から考えても閉鎖的な空間であることが多い。僕が今まで訪れた国の中で、ここまで外から見えるようになっているイミグレーションは記憶にない。
ただ、日本で聞いたヤンゴン国際空港の噂話を思い出すと別の緊張感が生まれてくる。記憶にも新しい日本人ジャーナリストがヤンゴンで亡くなった事件から、持ち込み荷物に関して厳しくなったらしい。空港の税関でノートパソコンや携帯電話を理由もなく没収されたという話さえ聞く。規則上は個人用のノートパソコンも携帯電話も持ち込み禁止ではないのだが、「俺達がルールブック」的な場所では何が起こるかわからない。今回、四ヶ月半の旅が続くので、どうしてもノートパソコンと携帯電話は持って行きたかった僕はバンコクを経由するときに、一旦、バンコク在住の知人に預け、ミャンマーを出る際に再びバンコクに戻って受け取ることまで考えた。
しかし、最終的に、どちらも持ち込むことを選択した。僕の順番が近づいてくる。並んでいる外国人を見ていると欧米人に混じり、韓国人や中国人の姿はよく見るが、日本人は僕がパスポートの表紙を見て確認できたのは二名だけだった。やはり以前、来た時より日本人観光客が少なくなっているような気がする。
僕の順番になり、帽子を脱いで窓口に向かう。根元の黒髪が伸びてきて、中途半端な金髪の中年男性のことを細見の男性係員は怪訝そうに見た。しかし、何を言う訳でもなく、他の人と同じように一人がパソコンにパスポートナンバーを入力し、もう一人はパスポートにホチキス止めされたビザをはずし、入国カードを半分に切り取り、手渡してくれた。とりあえず第一関門突破のようである。
次は問題の税関である。トランクを転がしながら、どの税関職員のところに行くかを咄嗟に判断する。おしゃべりをしている、あまりやる気のなさそうな若い女性二人組のところに行くことにした。人選的中。税関書類を出し、あっさりと通されてしまった。ホテルの送迎タクシーに乗り込みながら、何だか肩透かしを食らったような物足りなさが残った。いった僕は何を期待していたのだろう。
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