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イシコの歩行旅行、歩考旅行、歩行旅考、歩考旅考

2011-04-27
「古い紙幣は使えない?」 

ヤンゴンに滞在している間、午後になるとパヤー(仏塔)で昼寝することが日課になった。旅先で昼寝するのはパヤーだけではない。宗派など関係なく、教会にしろ、モスクにしろ、こういった祈る場所は心地いい場所が多い。そんなところで昼寝をするなんて罰あたりと言われるかもしれない。最初は瞑想しているつもりなのだが、自然に眠ってしまうのである。瞑想から眠りに堕ちていく瞬間の気持ちよさといったらない。

ヤンゴンの街の中心にあるスーレー・パヤー、ヤンゴン川沿いのボータタウン・パヤー、どのパヤーも地元のミャンマー人は無料だが外国人は2ドル程度の入場料がかかる。それでも心地いい昼寝、いや瞑想には最高の場所なので、毎日、支払ってでも立ち寄りたくなる。

この日はミャンマー最大の聖地とも言われるシュエタゴォン・パヤーに向かった。入場料は2ドルではなく5ドル。外国人窓口でポケットから5ドル紙幣を出す。その紙幣を見て、若い女性スタッフの一人が英語で言った。
「この5ドルは使えません」
偽札なのか?頭の中でこの紙幣を手に入れた場所を思い出そうとする。それしても、よく見ただけでぱっと判断できるなぁと感心しながらも、ともかくポケットから新たな10ドル紙幣を取り出した。
「この10ドルも使えません」
今度は一緒にいた女性スタッフ二人の係員が同時につぶやいた。
「はぁ?そんなバカな?」
僕は日本語でつぶやき、不可解な顔をした。彼女達は憮然とした表情で、
「アナザー(他の)」
と言う。なぜ使えないのか彼女達に問いかけると
「オールド(古いから)」
と言った。納得がいかず、古い紙幣はなぜダメなのかを続けて聞くと
「あなたの国では使えるかもしれませんが、この国では使えません」
と英語で答えた。

僕はポケットから残りの紙幣を取り出した。海外の街を散歩するとき、僕は財布を持ち歩かないことが多い。今まで財布を何度も失くしているので、旅先で財布を持って歩くことを止めたのだ。基本的にはホテルのセキュリティボックスに置いておき、一日で使いそうなお金をマネークリップに止めて持ち歩く。その程度だとたとえお金を失くしても大事には至らず、あきらめもつく。その日、持ち歩いていたのは計25ドルとミャンマーのチャット紙幣80000チャット(約800円)とクレジットカード1枚のみ。その25ドルの紙幣はすべて使えないと言われた。

僕は、これ以外、持っていないと言って、外国人がよくやるように両手を広げて肩をすぼめた。彼女達は仕方がないなぁといった表情で、古い紙幣を見比べ、5ドル紙幣を選び、ようやくチケットを渡してくれた。僕の持っているドル紙幣より、現地通貨のミャンマー紙幣の方が余程、古いんだけどなぁ。

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ishiko
ishiko

イシコ。1968年岐阜県生まれ。女性ファッション誌、WEBマガジン編集長を経て、2002年(有)ホワイトマンプロジェクト設立。50名近いメンバーが顔を白塗りにすることでさまざまなボーダーを取り払い、ショーや写真を使った表現活動、環境教育などを行って話題になる。また、一ヵ月90食寿司を食べ続けるブログや世界の美容室で髪の毛を切るエッセイなど独特な体験を元にした執筆活動多数。岐阜の生家の除草用にヤギを飼い始めたことから、ヤギプロジェクト発足。ヤギマニアになりつつある。

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