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そらのうみをみていたら。

2011-06-18
自然写真家・高砂淳二さん
「Children of the Rainbow」

みんなはハワイにどんなイメージを持っているのだろう?
私はあるときまで、芸能人がお正月に集まり、ゴルフをして、ブランド品を買うリゾート…という偏見で、あまり興味をもっていなかった。

そんな私に別のハワイを教えてくれたのが自然写真家・高砂淳二さん。
ダイビング専門誌『ダイビングワールド』の専属カメラマンを経て、海の中から、生き物、風景、虹など地球全体をフィールドに撮影活動を行っている。

その高砂さんが先日5月20日に10年以上通いつめてきたハワイの集大成的な写真集「Children of the Rainbow」を上梓された。
ハワイの生き物や風景、海や虹の写真とともに、古代よりハワイに伝わる、自然や人、神と調和を保って生きる“ホオポノポノ”という深い智慧を紹介している。

「最初の頃は不思議なことに興味があったんだよね。自然の現象や動物の世界を撮ってきて、いったいこの世界はどうなっているんだろうって。それを突き詰めたくて、ハワイでカフナと呼ばれる先住ハワイアンに出会って古代から受け継がれるハワイアンの智慧を教えてもらった。今で言う“スピリチュアルなこと”なんかね。でもいろんなことを教えてもらっていくうちに、本当に大切にしていることはシンプルなことだなあって思うようになったんだよね。それは自分においてもそう…たとえば、いま僕が映画を観たり、人と話したりしていちばん心が動き、泣けてくるのは、人の愛情だったりする。
 あと、ちょっとハワイから話は飛ぶけど、僕はずっと合気柔術を習っている。そこで相手をこうしてやろう!って思っているうちはうまくいかないんだよね。自我を消して、ひとつになることが必要。そういうことを勉強させられている気がする。この本で書いた4つのことも融合する方向。プラス思考とかそういうのではなくて、最終的にはひとつなんだっていうのを知りたかったんだなと」

 写真集「Children of the Rainbow」の中で紹介されているのは4つの言葉とその叡智。

 「Kala 赦すこと」
 「Ho’omaika’i 感謝すること」
 「‘Ihi 敬意を払うこと」
 「Aloha 愛すること」

冒頭には、モロカイ島の一族“光の番人”に残る言い伝えが紹介されている。
引用させていただこう。

「どの子供も完璧な光で満たされたボウルをもって生まれる。
 その気になれば光はさらに輝きを増し、
 サメと泳いだり鳥と一緒に空を飛んだり、
 どんなことでも理解できるようになる。
 ただ、嫉妬や怒りをもつようになると、
 石ころをボウルに入れていくことになり、
 やがて光は消えていき、しまいにはその子は
 石ころになってしまうだろう。
 でも、もし石ころでいることが嫌になったら、
 いつでもボウルをひっくり返しさえすれば
 また光を輝かせることができる」
 (「Children of the Rainbow」より)

高砂さんは、こういう。「にっちもさっちもいかなくなったときに、こういうのを知ってると、ああボウルをひっくり返そうって思えればいいと思う」と。

私は高砂さんを入口にこのハワイの世界を知り、とても興味をもつようになり、フラやロミロミを学ぶようになった。けれど、仕事のことや将来への不安などが自分の中を占領し、そのことから離れられないでいた。ボウルをひっくりかえしたところでどうなるんだろうと、やけになっているような。

高砂さんには、そういうときはないのだろうか。

「ないことはないよ。でも、そういうときは近くの公園に行って、目をつぶってよくよく思い出すようにしてる。僕がいろんなことを教えてもらったハワイの人たちは、いつも惜しげもなく食べ物などを与えてくれる大地や海をお母さん、自分たちの体に命を与えてくれる存在をお父さんだといって、話しかけたり感謝したりを当たり前にやってるんだよね。そういうつながりが、自分の気持ちがバタバタしてると切れてしまう。でも、お父さんありがとう、お母さんごちそうさまってやるとさ、ああ、そうだ。こういうところに自分は生きていたんだよねって思い出せる。すると、血液が巡り始める。
どうしても、不安の状態でいるとそれから離れられないよね。堂々巡りになっちゃう。自分の頭からはそれ以上のことは出て来ないからね。でも、そうやって語りかけた分だけ、つながれると思う。自分はそういう生き物だと思ってさ。霊感とかそんなのではなくてね(笑)」

昨年の12月、高砂さんは今回の写真集「Children of the Rainbow」の最後の撮影に行ったとき、そのことをこれまで以上に実感したという。
たとえば、この白いイルカの写真。

港に帰る間際にイルカの群れがいて、その中に1頭だけ、白いイルカがいた。
「お、白いね。かわいいね」って思ったら高砂さんのところにやってきて、遊びたがったようにみえた。それでちょうどヤシの実が浮いていたので投げてみたら、鼻でも持って来てくれたのだ。これはそのワンシーン。

数日後、カウアイ島に行ったとき。ずっと雨が降り続いていたが、少し晴れ間がみえてきた。そこで丸い虹が撮りたいとヘリコプター屋さんへ行った。だけど1時間チャーターするととんでもない値段。30分で半額にしてもらって(それでも十分高いけど)お願いすることにした。「丸い虹が撮りたいんだ」というと、キャプテンに「今日は2回フライトしたけど虹のにの字もみてないし、30分のうち15分は往復する時間になっちゃうよ。15分でどうやって探すの?」と言われた。それで一度ひるんだ。けど、高砂さんは「行かなければどっちにしても撮れない」と思い直してヘリコプターに乗った。すると7分後、ドカンと丸い虹が出た。キャプテンは「OH! MY GOD!」と叫んだそうだ。

その他にも、シーズンには早かったけど、水中でクジラに会いたくてボートで沖に出ると5頭のザトウクジラが超接近してきたり、三日月より少し大きいくらいの月にも関わらず、夜の虹や白い虹に出会ったり…。1回の撮影でそんなにいろいろなものを見せてもらえたのは初めてだったそうだ。

愚かだとは思いながら、聞いてしまった。
「そんなに出会って、調子にのってしまわないですか?」

「調子にのっちゃうこともあるね(笑)。でもそのたびに反省してのくり返し。そうなるとたぶん、枯渇してしまうと思うんだ。それに、写真に自我がですぎると、写真を見てくれる人につながらないんだよね。“しめしめいいのが撮れた”なんて自分のための材料にして撮るとやっぱり傲慢さが写る。それこそハワイの人たちから教わった智慧からかけはなれちゃう。被写体をリスペクトして、被写体のなにかを感じ取るっていうのがいちばん大事。そのなにかを感じてもらえるとうれしいよね。」

ボウルをひっくり返して、高砂さんが見せてくれる地球のお父さん、お母さんに会いにいこう。
ひっくり返すのが面倒だったとしても、写真に出会えば、きっとひっくり返したくなると、私は確信している。

6月17日より、写真集「Children of the Rainbow」の内容を中心にした写真展が開催されます。

後編を読む

<INFORMATION>
「想像より、おもしろい。ハワイ」展  
~自然写真家 高砂淳二が伝えるハワイ~

期 間 6月17日(金)~6月29日(水)
場 所 東京港区ミッドタウン・フジフイルムスクエア

*6月18日(土)
元ミスアロハフラ・ヘアラニ・ユンさんを迎えてのフラ・ショー:
13:30~、15:00~ 
*6月25日(土)
高砂淳二 X 山下マヌー・トークショー
14:00〜15:30(開場13:30〜)
参加方法:事前申込制。Tel:03-6271-3350(10:00 ~18:00)

・高砂淳二さんは、連日会場にいらっしゃるそうです。

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魚見幸代
魚見幸代

うおみ・ゆきよ/編集者。愛媛県出身。神奈川県在住。大阪府立大学卒業後、実家の料理屋『季節料理 魚吉』を手伝い、その後渡豪し、ダイビングインストラクターに。帰国後、バイトを経て編集プロダクションへ。1999年独立し有限会社スカイブルー設立。数年前よりハワイ文化に興味をもち、ロミロミやフラを学ぶ。『漁師の食卓』(ポプラ社)

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