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そらのうみをみていたら。

2011-09-21
「学びの体験」でユタカナ人生

みなさんにとって「豊かな人生」とは、どのような人生ですか?

私は…、考え始めると頭のなかが錯綜して、結局ぼんやりして時間が過ぎてしまう。なにも思い浮かばないのではなく、煩悩に支配されている…そんな感じ。でも、いろいろなことが揺れて動いているこの大きなタイミングに、きちんと向き合わなければと強く思う。どう考えていくか、今回はそのヒントをくれたユニット「ユタカナ」さんにお話をうかがった。

「豊かな人生」を活動の主題に掲げ、「楽しさ」と「学びの体験」を提供しているユニット「ユタカナ」さん。
大橋裕太郎さんと香奈さんのご夫婦で組まれたこのかわいいユニット名はお名前の組み合わせと、豊かな人生というテーマを表しているそうだ。

私は香奈さんと6年程前に仕事を通じて知り合った。ひとまわり年下とは思えないその落ち着きと人なつっこさに魅せられ、仕事の関係性を越えて、いろいろと相談にのってもらったりした。

ふたりはちょうど2年前の2009年10月に、子どもの「遊び」と「学び」をテーマに研究を続けている裕太郎さんの仕事でフィンランドへ向かった。

秋が始まったばかりの日本と違ってフィンランドはもう冬のはじまりの季節。日照時間が短くなり、氷点下に向かって気温が下がり続けるフィンランドの冬。体験したことのない寒さと太陽光のない生活。暮らしやすさや教育の制度等において世界の中でも幸福度が高い国といわれるフィンランドだが、行けば幸せになれるかといえば、そんな簡単なことではない。

香奈さん
「土地も人も変わって、すぐに気の合う友だちを見つけるのも、自分たちが打ち込める活動をみつけるのも、なかなか難しかった。そんな中で、あらためて自分たちしか頼れる人はいないから、お互いに今までなにをやってきたか、強みや弱みは何かっていうことに向き合ったんだよね」

裕太郎さん
「20年以上前までさかのぼって、思い出をたどりながら、できることできないこと、興味のあること、なぜそう思ったのかとか、ぜんぶ棚卸しをして、すごく真面目に考えて向き合ったね」

そうして議論を重ねていくうちに、裕太郎さんが研究者として主なテーマとしている「学び」について、香奈さんもともにフィールドワークで関わっていけたら面白いのでは?という発想が出てきた。そこで、ふたりはフィンランドの学校(義務教育)の外にある「学びのデザイン」を探るフィールドワークを始めることになった。

フィールドワークの場所は図書館やミュージアム、動物園、メディア、NGOなど。約1年半をかけて毎月1、2カ所を訪れ、豊かな人生のための「学び」の場を提供するために奮闘する人の取材をした。ヘルシンキを中心にフィンランド内を旅して、50人を越える人たちの話を聞いた。
このリポートはジャパンデザインネット(JDN)で連載され、今年6月には『フィンランドで見つけた「学びのデザイン」—豊かな人生をかたちにする19の実践』(株式会社フィルムアート社)にまとめられた。


『フィンランドで見つけた「学びのデザイン」—豊かな人生をかたちにする19の実践』(株式会社フィルムアート社)

知らない土地(しかも海外)で暮らすことのさみしさやつらさを自分たちで乗り越えようとしたことをきっかけに、自分たちの表現活動を見つけたふたり。
もともと、ふたりでなにか表現をしていくという思いはあったのだろうか?

裕太郎さん
「一緒に組んで活動をするっていうのは思っていなかったね。家具や荷物もほとんど持たないゼロから始まったフィンランドの時間の中で、新しい発見がいろいろあった。お互いに似てると思っていたけど、香奈は社交的で僕は社交的じゃなかったり(笑)、僕は研究者なので論文は書くけど、たとえば自分の家族や友人も楽しんでくれるような読み物は書けなくて、香奈はそれが得意だったり、大学や仕事でやってきたことは違うけど、興味は一緒だと改めてわかったり…。得意不得意がちょうどうまくお互いの凸凹にはまって、こうして一緒に活動するのはすごくいいことなんじゃないかと、フィンランドに行って初めて思ったんだよね」

香奈さん
「私は日本にいる間は仕事が忙しくて、体力的にも時間的にも余力がなかったから、一度、立ち止まれたのはよかった。すると、何がしたいんだろう、何が必要なんだろうと、すごく考えられたかな」

そして「必要なこと」を自分たちが歩んできた道の中に、見つけた。

裕太郎さん
「前に香奈が、ここにいるのは点じゃなくて、前からつながっている。点と点を線につなげる作業をすると、自然と次の点も、少しジグザグでも見えてくるんじゃない?って話してたよね」

香奈さんは大学時代、幼少のときに生活したことのあるアルゼンチンを拠点にさまざまな立場の人の人生に取材をした。日系アルゼンチン人一世、二世、三世それぞれの日本に対する思いや、深刻な経済危機下で地域通貨の普及により市民生活を救おうと奮闘する人々。文献や報道で見たことと、生身の「人」が語る言葉のギャップに頭も心も揺さぶられた。前職のサントリーでも配属された健康関連の事業部では、お客様と直接コミュニケーションをして商品を売ることが事業の柱。社内の研究者の情報をいかにお客様にわかりやすく伝えるか、逆にお客様と直接コミュニケーションをしてもらった情報でいかに社内を動かすかという仕事に携わった。一貫して、「人」から出てくる情報をどう形にかえていくかということがライフワーク的にしみついていた。

香奈さん
「「人」と向き合うことをしていないと私の場合は、人や社会が理解できない。フィンランドにおいても、ただ生活しているだけでは理解できなくて、必要なことだったと思う」

インタビューのとき、ふたりはテープレコーダーを持っていかないそうだ。
「あれがあると緊張して本音がでなくなるから」
そんなこまやかな心配りは向き合う覚悟があってこそ。

香奈さん
「小学生でアルゼンチンに行ったときにいきなり現地校に入ったんだけど、彼らの言語はスペイン語で言葉もわからない。最初は学校生活がすごい嫌だったけど、先生に「あなたが心を開かないからつまらないんですよ」っていわれて、あ、そうだよなと思った。言語の壁があっても、人間同士のつきあいは、自分が心を開きたいか、開きたくないか、それだけ。自分がどうしたいか。海外での暮らしに限らず、日本の中でも新たな地域、コミュニティ、職場、学校に入ったときも同じことが言えるように思う」

ユタカナはこの9月に再び、フィンランドへ旅立った。
フィンランドの冬の楽しい過ごし方にまたチャレンジするのだそうだ。(もちろん、お仕事があるのですよ)今度はフィンランドの仲間たちから教えてもらっているから、はじめての冬とは、違う時間になるだろうと話していた。

最後に、これから大事にしていきたいことについて聞いた。

香奈さん
「ユタカナでは、楽しく学べる体験をどうやって増やしていけるかが、今取り組んでいるテーマ。だれも約束された将来はないから、なにかが起きたときにどうやって乗り越えていけるかというのは、どれだけ多様な学びの体験をしているかが重要なのではないかと思う。それは自分たちがすごく実感しているから」

裕太郎さん
「僕は大前提に健康。健康で自分が楽しむことが大事だなと思ってる。自分が楽しんでいないといいものが伝えられないし、子どもも楽しんでくれないからね」

さて。
私はどうしようか。
学ぶ謙虚さ、向き合う覚悟、心を開く勇気。
ふりだしといいながら、ふりだしに戻れていない自分から逃げてはいけないなと心したインタビューだった。

ユタカナさんの活動はこちらからご覧ください!

ユタカナ公式サイト

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1件のコメント

[...] salitote.jp 人生すごろく聞き取り語録 ふりだし 「学びの体験」でユタカナ人生 [...]

by 匿名 - 2011/12/08 2:54 AM

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魚見幸代
魚見幸代

うおみ・ゆきよ/編集者。愛媛県出身。神奈川県在住。大阪府立大学卒業後、実家の料理屋『季節料理 魚吉』を手伝い、その後渡豪し、ダイビングインストラクターに。帰国後、バイトを経て編集プロダクションへ。1999年独立し有限会社スカイブルー設立。数年前よりハワイ文化に興味をもち、ロミロミやフラを学ぶ。『漁師の食卓』(ポプラ社)

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