salitoté(さりとて) 歩きながら考える、大人の道草ウェブマガジン

そらのうみをみていたら。

2011-08-14
BlueHour〜まほうのじかん〜

運命やご縁というものは、衝撃的に訪れるときもあれば、気がつくとそこにあった…というときもある。
無意識なようでいて、ふとしたタイミングで気持ちを寄せ合ってみると、思いがけない機会が訪れることがある。

ウクレレ唄いのAO AQUAさんとうみカメラマンのむらいさちさん。
ふたりがこの夏に新しく「BlueHour(ブルーアワー)」というユニットを組んだ。

ふたりのご縁は、「気がつく」とそこにあった。

AQUA
「さちくんと初めて会ったのはハワイアン音楽のライブ会場。私が飛び入りで1曲歌って、そのあと、さちくんが声をかけてくれたんだよね」

さち
「AQUAちゃんの歌を初めて聴いて、鳥肌がたったのはよく覚えてる。歌がすごい素直に自分の中に入って来たんだよね。音楽を聴いてそんな風になったことがなくて、自分でもびっくりした。1曲しか聴いてないのに、CDを買ったのも人生で初だったよ」

それから、それぞれの活動を紹介し合った。

AQUA
「さちくんの作品を見せてもらって、さちくんは写真、私は音楽で、手段は違うけど、共感できることがいっぱいあると思ったの」

さち
「自分がいうのもなんだけど…、AQUAちゃんはもっと世の中に出て行くべきだと思ったんだよね。できることは手伝いたいって」

そんなお互いの思いから、むらいさんの写真展でAQUAさんがライブをするようになったり、AQUAさんのライブで、むらいさんが写真スライドショーをするなど、交流を深めていた。

そして昨年、新たなコラボの形ができた。

AQUA
「昨年さちくんが『Earth Flower』という写真展を開催して、イベントで呼んでもらったんだけど、そのときに初めて、さちくんの作品をイメージしながら曲を作ったのね。その名も『Earth Flower』。さちくんはこんな風に思ったんじゃないかとか、こう感じてるんじゃないかとか勝手に妄想して…。他の人や作品にフォーカスして曲を作るのは初めての体験で、すごく新鮮だった」


(この写真展は終了しています)

さち
「まさか自分の作品に歌がつく、なんてことが起こるなんて、思ってもなかったんだよね。自分のこととは思えないぐらい、感激した」

そうやって、ふたりの中には少しずつ、歌と音楽で、もっと何かできるんじゃないかという思いが募って行き、ついにこの夏、「BlueHour」というユニットとしての活動をスタートさせた。

「BlueHour」とは、日の出前と日の入り後の空が青に染まる時間帯のこと。マジックアワーとも呼ばれる美しいまほうの時間。
AQUAさんの音楽と、むらいさんの写真を観て聴いて感じて、自由にひとりひとりの大切な美しい時間を旅してほしいという思いから、この名前がつけられた。

そしてこのプロジェクトの第一弾として、Photo & Music Book「BlueHour〜まほうのじかん〜」(8/12より発売)を制作。新曲「遠くの友だち」と「生まれた日」、「おぼろ月夜」(COVER)の3曲にむらいさちさんがインスピレーションを受けて撮りおろした作品が収められている。

AQUA
「『遠くの友だち』は東日本大震災の後に作った最初の作品で、震災が起きたあとの日本にいる自分が主人公。実在するハワイの友だちのことを思って作った作品なんです。あの海と空の青さ、ハワイでともに過ごした幸せな時間…。震災で悲しみの中にいたときに、そこに思いを飛ばすことによって、私はすごく救われたんです。同じように、この曲を聴いて、自由に自分の大切な場所へと思いを向けて、旅をして癒される人がいてくれたらうれしい。そう思って作りました」

むらいさんは、音楽のイメージに合わせて写真を撮ったのは初めての経験だったそうだ。
「僕の想い描く詩の世界とAQUAちゃんの世界は当然違うから、その違いを探り合う感じで撮影しました。結構難しかったけど、それこそがコラボの醍醐味。これからもっともっと深く掘り下げてチャレンジしていきたいと、やってみて改めて思いましたね」

むらいさんがカメラマンとして独立したのは2004年。それまで、何をやっても中途半端で続けられずにいたそうだ。写真を撮ることは、唯一楽しく飽きずにできること。けれどフリーになって仕事にも浮き沈みがある。本当にこのまま続けていけるのか…。そんな迷いもあった頃、たまたま雑誌の取材である宿坊を訪れた。取材に応じてくれたお坊さんが少し席をはずして戻って来たと思ったら、おもむろに色紙を渡してくれた。そこにはこう書かれてあった。

「継続は力なり」

お坊さんは訪れてくる人から感じたことを言葉にしてくれる方だった。
言葉はむらいさんの胸に突き刺さった。「どんなに苦しくても続けていくことで、なにかをつかめるんじゃないか。続けなければなにもつかめない…」と。
その色紙は今も大事に飾っているそうだ。

AQUAさんがいまのウクレレ唄いのスタイルを始めたは2003年。それまでには歌うことを辞めていた時期や、バンド活動をしていた時期もあった。ウクレレに出会うまでは、自分のスタイルを模索していたそうだ。そんな時、たまたま入ったレコードショップで、AQUAさんが大好きなBO GUMBOS(ボ・ガンボス)とうバンドの『自分を変える旅に出よう』という曲がかかった。1995年に解散したBO GUMBOS(ボガンボス)の曲がショップでかかることはめったいにない。AQUAさんは、敬愛するそのバンドのボーカルどんとに「自分を変える旅に出よう」と言われた気がして、心を決めた。

そして震災後、ふたりはそれぞれに、改めて共通の思いに至った。
「写真しかない」
「音楽しかない」
と…。

さち
「僕にとってこれまでも、そしてこれからもっと大事になってくるのは『絆』だと思っています。僕は本当に周りに支えられて生きているんです。自分だけではどうにもならないことが多すぎると実感している。ただ、周りに頼るだけじゃなくて、その人たちにも幸せを分け与えられるような人になって恩返しがしたい。それは今の目標ですね」

AQUA
「今回の作品では、震災後に自分たちが考えたこと、それぞれできることをひとつの形にできたと思っています。それぞれがそれぞれの場所で、今生かされていることの喜びを感じることができたり、大事に思える。そんな時間をつくるきっかけになったらなと思います。心から、今しかないって思うようになったから…、今を大事に生きていきたいです」

私は震災後、自分の小ささと起こっていることの大きさ。その圧倒的な差に呆然とした。こんな小さなものに、いったい、なにがある? その思いは今もなおあるけれど、新しく生まれた「BlueHour」を観て聴いて感じていると、小さなものの思いが温かく、愛おしくて、それを小さなお隣の友達へつないでいけたら、それが少しずつでも、広がっていったら、とても気持ちいいことだなあと、心がやわらいだ。

「BlueHour」のまほう…なのかな?

「BlueHour」のお披露目イベントがむらいさちさん主催の「そら☆たいむ写真展」にて8月21日(日)に開催されます。
まほうにかかってみたい方はぜひ!

Photo & Music Book 「BlueHour〜まほうのじかん〜」発売イベント開催決定!

写真展
そら☆たいむ
むらい さち と 68人が見上げた空

2011年8月12日(金)− 21日(日)
10:00−18:00(初日13時open 最終日16時close)
18日(木)休廊

「BlueHour」ライブイベント
8月21日(日) 14:00スタート
入場無料!

Photo & Music Book 「BlueHour〜まほうのじかん〜」(2000円/税込 32ページ 3曲入りCD付)は写真展会場にて絶賛発売中!

BlueHourに関する詳細はこちら。

ご意見・ご感想など、下記よりお気軽にお寄せ下さい。

コメントはまだありません

まだコメントはありません。よろしければひとことどうぞ!

コメントする ※すべて必須項目です。投稿されたコメントは運営者の承認後に公開されます。


コメント


魚見幸代
魚見幸代

うおみ・ゆきよ/編集者。愛媛県出身。神奈川県在住。大阪府立大学卒業後、実家の料理屋『季節料理 魚吉』を手伝い、その後渡豪し、ダイビングインストラクターに。帰国後、バイトを経て編集プロダクションへ。1999年独立し有限会社スカイブルー設立。数年前よりハワイ文化に興味をもち、ロミロミやフラを学ぶ。『漁師の食卓』(ポプラ社)

そのほかのコンテンツ