2010-10-31
「休む勇気と休む楽しさ」
一週間、旅を供にした大学生と華人の多いペナン島でインド人街に泊まった。
旅の初心者とは思えない彼の宿選びの勘の良さには驚かされる。
「ここよさそうですよ」
彼は一人二十五リンギット(約七百五十円)でシャワートイレ付のしかも改装したばかりのきれいなホテルを見つけてきた。
もちろんクーラーもついているし、一日五リンギット(約百五十円)支払うと、自分のノートパソコンのネットもワイヤレスでつながるという快適さである。
僕は旅について書くことは多いが、初めての海外旅行が二十六歳と遅かった。
それを理由にするのは言い訳にすぎないのだが、ともかくバックパッカーというものを経験したことがない。
そんな軟弱な旅人なので安宿というものをほとんど使ったことがないのである。
そこで今回、彼が見つけた宿のようにインターネット使用の料金も入れて千円程度で泊まれる宿があり、しかも新しく快適に宿泊できることに驚かされている。
「お金がない」と嘆くより、お金がない中でいかに快適に旅を続けるかを彼から教えてもらっている気がする。
その彼の様子がおかしい。
左足の甲が痛むのだと言う。
確かにご飯を食べに行ったとき、足を少し引きずっていた。
僕に遠慮して、かなり我慢していたのだろう。
どうやらここに来て旅の疲労が出てきたのかもしれない。
ここ数日、過酷な移動旅が続いた。
僕の場合、疲れがたまると右足首が腫れてくる。
昔、捻挫をして痛めた古傷がゾンビのように蘇ってくるのだ。
その話をすると彼が痛い箇所は高校の体操部時代に痛めたことがある場所だと語り始めた。
マットで遊んでいる最中に左足の甲を痛め、大会に出場できなくなった経験があったのだそうだ。骨に染みる痛さらしい。
彼の飛行機のチケットを確かめ、携帯電話のカレンダーを見ながら旅ができる残りの日数を数えてみる。
宿泊できるのは残り三日。
当初は翌日もマレーシアの別の街へ移動しようとしていた。
しかし、止めた。
ペナン島を二泊、クアラルンプール一泊、そして、シンガポールへ戻るという行程に変更した。
このペナン島の二泊で、しっかり休んで体調を整えた方がいい。
こういうとき街を歩けないことが、もったいないと言って無理する人がいる。
たいていの人は無理して散歩しても辛いだけで楽しくはない。
しかも無理をした分、翌日の旅が更に辛くなるという悪循環が待っている。
こういうときは休む勇気、そして何より休む楽しさを覚えておいた方がいいと少しだけ先輩面をした。
ゴロゴロしながら、ボーっと、この窓からペナンの街を眺めていることも旅の一つなのである。
彼が持ってきているDSでゲームをやったっていい。
体内に流れるゲームの時間は、日本でやっている時間とペナン島でやっている時間とでは体感する時間が違う。
その土地で見た映画と同じように一生、忘れられないゲームになる。
などと説得するように語っていた。
実は僕が少々、疲れ気味なのでホテルに籠ってゴロゴロしたかっただけだということは、彼にはわかっていたことかもしれないけどね。
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