salitoté(さりとて) 歩きながら考える、大人の道草ウェブマガジン

〜日常は、劇場だ!〜「勝手に★ぱちぱちパンチ」

2014-05-12
『“天パ”クラブへようこそ!』

♪~パーマ(ン)パーマ(ン)!
  パーーマーーっ(ン)!
  パーーマーーーーっ(ン)!
(♪~パーマ(ン)のテーマソングより)

人間は、大きく分けると2つに分類される。
それは、“天パ”なのか、“天パ”でないのか。

身体の最も上部に位置する頭部から発生し、重力を利用して地球の地面に向けて、サラサラと流れる黒髪。
時代絵巻には必ずと言ってよいほど、十二単を着たペッタリと黒い小川のような髪を持つ女性が描かれる。
古来、この国において美しさの象徴とされた、長く真っ直ぐな直毛ヘアーは、20世紀末に一大ムーブメントとなった、W浅野ワンレンヘヤーにも影響を残していると言う。(多分)

しかし、それも今は昔。
現代では、多様なヘアスタイルが共存し、人々の好みも千差万別で…。
と言いたいところだが、そんな個人の好みや時代の流行とは離れたところで、静かに苦悩する人々が存在する。

“天パ”(=天然パーマ)族と呼ばれる人たちである。
何を隠そう、自分自身も、この“天パ”族の宿命に悩まされている人類の一人である。

どれほど高い美容院へ行き、なけ無しのお金を払い、カリスマ美容師にカットをしてもらったとしても…。
どれほど丁寧にブローし、スタイリングし、奮発して買った高いヘアオイルやムースで仕上げたとしても…。

気が付けば、くるくるポンっ! アララのれーっ!

さっきまでの完璧なヘアスタイルは今何処。
曇り空から魔法の粉(湿気とも言う)が出たのか、はたまた、晴れと見せかけて半日後に降り出す雨の予兆なのか。
ウネウネきゅるきゅる悪魔のカールが、いつの間にか毛髪を完全に支配しているのである。

直毛族には決して分からない、落胆と苦悩、諦めと受諾の人生。
“天パ”族の悩みは深い。

「絶対に朝シャンしなければ外出できない」
「ラーメンの湯気でも前髪がくねる」
「雨の日が憂鬱。膨張してまとまらない。梅雨時期は死にたくなる」
「デジタルパーマですか?と聞かれる」
「いくらストパ(=ストレートパーマ)をかけたところで、すぐに生え際にクネ髪が出現。放っておくと、とんでもない髪型になる」 等々。

天気の良し悪しを事前(前日)に察知できるという、一見お得に見えることもあるが、そんなものは、天気予報を観れば誰でも分かることである。
それよりも、人により多少の差異はあるが、“天パ”族でなければ必要のなかった、時間的無駄や経済的損出が発生するのも事実だ。

そもそも、“天然パーマ”とはなんなのか?

本やネットで調べてみると、どうやら髪の毛内部にあるたんぱく質の結合(S=S結合)のゆがみにより、縮れやウェーブが出てしまうとのことである。
なんのこっちゃ良く分からないが、とにかくそうらしい。
諸説はあるが、多くは遺伝にて継承されるとの記述もあった。
その他にも、毛穴が曲がっている(!)ため、髪の毛が頭皮から出毛(←こんな単語があるのは知らないが…(汗))する際、その曲がりに影響されてくねってしまうともあった。(※あくまで個人調べ)

なんだか、人間の努力や才能を全否定されるような情報である。
特に、毛穴が曲がっているなんて、まるで自分が出来損ないの人間のような気がしてくる。
出来れば他人に知られたくない情報である。

「わぁ、あのひと天パだよ!(ここから小さい声で)きっと毛穴が曲がってるんだね…」

そんなささやきが聞こえてきた日には、きっと、未来永久引きこもりの人生を送るか、一生帽子を被って生きていくしかなくなってしまう気がする。
どうか、この情報が出来るだけ人々に知られることのないように祈るばかりだ。

ちなみに、“天パ“と言っても人によって現われ方は様々だ。
膨張系、チリチリ系、クネクネ系、偏り流れ系、逆立ち系、大仏系等。(※あくまで個人的種類分け)

実は、自分自身は少し変わった“天パ”で、新しい美容室に行くと必ず驚かれる。

「えっ?!これって、“天パ”なんすか?」

「は、はい。耳から下だけ…(汗)」

実は、高校2年で初めてパーマをかけるまで、何の問題もない真っ直ぐするするストレートヘアーだった。
初めてのパーマと関係しているのかは不明だが、それ以来、頭頂部から耳下までは真っ直ぐストレート、その先はくるりんカールが続くという、不思議頭の始まりとなる。
そのため、どれだけ髪型を変えようが、髪が伸びると最終的に辿り着く髪型は必ず同じ。
クラゲ型、または、蛸さんウインナー型しかないという、なかなか地味な哀しみを背負うことになった。

なにわともあれ、突然、“天パ”族になってしまったものは仕方がない。
日本人特有のまずは何でも受け入れるという四季折々の国に生まれた民族らしい態度で、自分の意思ではどうにも出来ないこのクセ髪を、抗えない宿命、いや、縮命として、神の意思と判断し、今後は“神の毛(かみのけ)”と呼び尊ぶことにした(爆)。

しかし、世界は広い!
けれども、日本は意外と狭い!

そんな甘い“神の毛”というだけでは、到底納得しないと思われる、宿命の“天パ”族の人類が、結構身近なところにいたのである。

その友人の神の毛は、私から見ても、“天パ”界メジャーリーグクラス(自身は2Aクラス程度…)に入るつわものである。
頭皮から離れず、クルクルと強烈にカールしつづけ伸びていくその様子は、もはや和製とは思えない海外物の面影があった。が、彼女はれっきとした純粋な大和撫子である。

その友人が、夫の海外赴任でアフリカに在住していた時、なんと妊娠し、そのままケニアで出産した。
母なる大地の恵みとでも言うのか、生れ落ちたその子もまた、同じクルクル神の毛を授かったのである。クルクルお目めにクルクルカール。(ママは美人なので顔は超美形!)。
彼女が子供と二人で歩いていると、現地の殆どの人は、夫がケニア人だと思ったという。
(ちなみに、現地の幼稚園に通わせていたその子は、「日本語」「英語(ケニア公用語)」「スワヒリ語」の三ヶ国語を話すマルチリンガルとなった。)

そんな超ウルトラ級の“天パ”族の友人が、学生の時、初めてストレートパーマをかけに行ったときの話である。

パーマ液を塗り、一定の時間が来て美容師がチェックをするのだが、どうやらまだ足りない様子で、そのまま継続した。さらに時間がたち、もう一度チェック。しかし、まだストレートには足りない様子、パーマは継続された。
そのうち、美容師たちの表情が険しくなり始め、美容室内が只ならぬ雰囲気になってきた。何度やりなおしても、終わる様子がない…。
結局、映画が数本観れるような長時間が経過し、ついに担当美容師と店長が沈痛な面持ちでやって来た。

「……すみません、これで勘弁して下さいっ!!」

180度のお辞儀をしながら、泣いて謝られたとのことだった。
でも、本当に一番泣きたいのは、その友人だったに違いない。

自分は直毛族だから関係ないと安心している世間一般の方々。
人生、何が起こるか分からないのだ。(私のように)ある日突然、“天パ”界からお呼びがかかる可能性も、無きにしも非ず!なのである。

そんなときは、慌てず、抗わず、全てを受け入れ、“神の毛”と共に縮命を生きよう!(爆)
(両手をひろげて、歓迎します!)

“WELCOME TO THE NATURALLY CURLY HAIR CLUB!”

Q:どの髪型が”天パ”? A:ある意味全部っす!

ご意見・ご感想など、下記よりお気軽にお寄せ下さい。

2件のコメント

何回読んでも笑える(≧∇≦)
これ、永久保存版やわ!

by mamamiyu - 2014/05/19 6:24 PM

タイトルを見てからのパーマンのテーマソング、吹きました♪

人それぞれ、髪には悩みがあるもんです。
そぉかぁ、天然パーマには抗えない神がいるのか…。あなどれない!

毛穴と言うなら、生まれつき毛穴が上を向いていて、全部が「玉すだれ状態」で生えてくる髪でショートカットすると
かつらをかぶったような爆発頭にしかならない、残念な髪質?
毛穴質の人間も、密かに泣いている人も仲間に入れてください!

by umesan - 2014/05/22 11:32 AM

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アラキ ランプ
アラキ ランプ

東京在住。映画と文学と旅行が好きな典型的文化系社会人。不思議なものと面白いものに目がなく、暇があってもなくてもゆるゆると街を歩いている。そのせいか3日に1度は他人に道を聞かれる。夢は、地球縦一周と横一周。苦手なものは生モノと蚊。スナフキンとプラトンを深く尊敬している。

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