2010-09-23
してはいけない!?
大人の恋愛論
秋の気配を蹴散らすように、まだまだ熱い中高年の恋愛事情。ショーケンと40代カリスマ主婦モデルの熱愛、玉置浩二&青田典子の結婚など芸能ワイドな起爆剤もあってか、アラフォー&アラフィフ世代の女性誌でも、いくつになっても「恋ができる女」、「恋しちゃえる女」になるための特集が今を盛りににぎわっている。
ちらり立ち読んだ記事によると、主婦の7割以上が「恋をしたい」「ときめきたい」とロマンティック&フェミニンな願望を抱いているのだとか。独身ならいざ知らず、結婚して主婦になっても、母であっても女でいたい。いくつになっても女として愛し愛されたいということなのか。それとも単なる欲しがり屋なのか。とにかく、灰になるまでラブジェネレーションな男女が急増中なことは確かなようである。で、そういう記事はたいてい、恋に恋する中高年へ向けた「あきらめないで!(真矢みき風)」の応援、激励、エールとフォローの嵐。
「年齢を重ねるほど容姿や外見的な目に見える魅力より、やさしさ、
可愛さ、色気という目に見えない内面的なものが重要視されるもの。
だから、ルックスありきの若い頃よりも年齢を重ねた今の方が自分
本来の魅力で勝負できる絶好のチャンス。あきらめないで!」
言っている意味はよくわかる。が、果たして人生、そんな自分にいい
ようにいいように解釈して大丈夫なものなのか。
それより何より「ルックスありきじゃない」など、そこだけ都合よく
タダで持ち帰るような客ばかり増えたらどうするつもりなのか。
思いっきり水を差すようで悪いが、わたしはこれまで自分のまわりの男性か
ら「目に見えない内面がどうのこうので惚れた」みたいな話、一度も聞いた
ことがない。ついこの間も、40代の独身男性がそろそろ相手がほしいと洩ら
すので、どんな女性がいいのか訊ねると内面的なことを言うのである。
これはもしやと「じゃぁ、自分より年上とか?」と振った瞬間、
「それは、ないない」と軽く笑っていなされた。
そう、それが「けなし」も「おどし」も「ひど〜い」もない国民の総意というもの。
20代だろうと50代だろうと、男女が交わる基本のきは、まずはタイプであること。美人だキレイだではなく、その人のタイプであることが肝心で、そこをクリアーして初めて、内面の良さにさらに惹かれ、年齢など関係ないという流れになるのであって、それがなぜいきなり「ルックスなど関係ない」などというめでたい話になるのかが、さっぱりわからない。
中高年の恋愛論にわたしが違和感を覚えるのは、そこなのだ。
年齢的なデメリットやリスクはすべて「ネガティブなもの」と受け付け
ず、「その気にさえなれば恋のチャンスはいくらでもある」とゼロではない
希望を過大に取り上げ、やたらポジティブに加工して見せる。
すべてが「気持ちひとつ」の精神論でしかない。そのやり方は、まるで
国民の士気を煽るべく戦勝のみを伝え、無残な真実を隠し通した旧日本
政府の陽動作戦のよう。まったくもって勝てる気がしない。
たしかに、長く生きてきた経験、傷があればこそ人間的な魅力も深まる
わけで、そういうパーソナルな味わいを吟味し合える大人の恋愛は、
「年齢を重ねた今だからこそ」の賜物だと思う。けれど、見落としては
ならないのは、誰もがそんな芳醇で円熟味のある大人の恋愛にたどりつ
けるものではないということ。その気になれば誰でも「しちゃえる」よう
な、そんな敷居の低いものでもなければ、誰もが萬田久子や黒田知永子で
はないのである。
そういう重大なビジュアルやクオリティの問題を差し置いて、年齢なんて
関係ないと持ち上げるだけ持ち上げて、いったいどれだけの人間を勘違い
させたら気がすむのか。
とういうのも、つい先日、東急沿線の最寄り駅のガード下で、今から心中
でもするのかという勢いで、がむしゃらに抱き合う「笑ウせぇるすまん」風
の50代のサラリーマンと、それこそルックスありきではない40代半ばの女性
のカップルを目撃。さらに数日後、駒沢通りを自転車でパトロール中、痴情
の熱気を帯びた中高年カップルがおもむろにブチュッとフォーリンラブの現
行犯を発見。まさに「貴様ら〜」と発砲する本官さんの気分である。
そんな気分の悪い例を持ち出して、いまどきのアラフォー&アラフィフの
恋愛を語るなというお叱りもあるだろうが、前出の中高年カップルは、
きっとこう思っているに違いない。「いくつになっても恋って、いいよね」と。
「いくつになっても恋したっていいじゃん!」みたいな気持ちイイ風潮に、
真っ先に食い込んでくるのはいつだって何も知らない素人で、ほんまに大人
の恋愛の何たるかを知っている玄人は、
「恋愛みたいなもん、いくつになっても苦しいだけどす。こんな
しんどいおなご商売、好きこのんでやるもんやあらしまへんえ〜」と、
決して人におすすめなんかしないものである。
わたしは中高年の恋愛が悪いなどと言いたいのではなく、
むしろ、大人の恋愛を見くびるなと、安売りするなと怒っているのだ。
触れたくても触れず、愛するがゆえに遠ざかる、
そんな切ない理性とやるせない真心に裏打ちされた
格調高き大人の恋愛ステージに、
「年齢不問、元気でやる気があれば大歓迎!」と
奥様パート大募集のごとく気安く呼び込んでいいものなのか。
いいわけないに決まってるではないか。
なぜなら、金妻とか失楽園とか同窓会ラブとか、不倫や恋愛系のトレンドを見るが早いか「これって私のこと?」と飛びついて実行するのは、招かれざる客であることの方が圧倒的に多い。
それは女の事件簿を見てもよくわかる。記憶に新しい東京豊島区のセレブ
気取りの結婚詐欺事件、鳥取の豊満な女性による男性連続不審死事件など、
次から次へ男を手玉に取る悪女はなぜか、どれほどの美女かと思いきや、
のけぞるようなオチが付いてくる。
「セレブ」とか「モテ」とか「愛され」とか、それを真似さえすれば
そうなれるような流行に群がって食らいついてくるのは、大抵、出オチの
悪女、なんちゃってセレブというのが悲しいかな、世の常である。
いくつになっても恋心を失わず、女性としての臨戦態勢を整えておく
努力は無論大切なこと。何歳であろうとも恋したい、ときめきたい、
愛したい、愛されたいと頑張るのも、そりゃ結構。
けれど、自分はそこまで頑張っていいものか、そこまで求めていいものか。
そういう取り調べと尋問を日々、自分を自分で泣かすくらいやり込めて
やらねば、とんでもなく勘違いしてしまうもの。汝の名は女、なのである。
5件のコメント
最高ーーー!!!!!
かっこいい姉さんにしか書けない、安易な大人の恋愛への反論。
42歳バツイチです。彼とW不倫の末に別れた時、「抱きしめたいけど苦しめるだけだからしない。でも君の一生を全力でサポートする。」そう言われたときは勝手な言い分だと思いました。
あれから二年。泣きたいくらい辛い時、誰よりも一番に気づいてくれて力になってくれます。離婚したのは私だけだったことに対する贖罪?それでも感謝しています。
二度と触れ合うこともない。でも、確かに愛されていると感じる私を笑う人もいます。彼の残像に引きずられて身動きできないでいる自分が情けないとも感じていましたが、そんな自分ともう少し付き合ってみようと思えました。ありがとうございました。
月子さんも、勝手に好きでいてあげたら、それでいいと思います。自分には確かに思える、自分の力になってくれてると思える人間なんて滅多と出会えるものではないと、同じ42歳として強くそう感じます。
年とってからの恋は辛くせつない事の方が多いけど耐えられますか、あなた。
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