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カーペディエム~今日の花を摘め~

2013-07-5
梅雨

梅雨の季節になると思い出す曲が2曲ある。雨の匂いと鮮やかな紫陽花(アジサイ)の色彩、そして少し湿気を帯びた紙の質感を指から感じ取りながら読む手紙。雨音と重なり、重奏感がますBGM。

「雨、降り続くよ、あじさい通りを傘さずに上むいて走って行く~」

高校生の頃、仲の良かった女の子に薦められ聴いたのがはじめてだったと思う。梅雨の時期に、雨の降っている最寄り駅の藤ヶ丘、帰りのバスを待ちながら、イヤホンを片耳だけ借りてドキドキしながら聴いた曲。アスファルトと雨の混じったにおい、電車のドアが閉まる音、車がワイパーを刻むリズム、イヤホンを貸してくれた女子の髪の毛から香る清涼感のある匂い、「雨、降り続くよ、アジサイ通り。。。」と曲が始まったのを覚えている。梅雨の時期に雨雫をまといながら凛と咲くアジサイを見ると、淡い思い出とともに脳裏にイントロが流れてくる。スピッツの『あじさい通り』。

「だから、この雨上がれ。。。」

梅雨の雨はしとしとと一日中降る事が多い。雨の景色を見ながらお気に入りの曲を何度も何度も聞く。そして雨とその曲と思い出が一緒に私の記憶の中に刷り込まれて行く。

二曲目は、ケツメイシの『雨』。

「冷たい雨が降りしきる、あの足跡流され消えて行く、寒空に重い雲のしかかる、思い出は雨でにじみぼやける。。。

君とはなれてもう何年もそうなにも音沙汰なしで、急に届いた君からの絵はがきの中に書かれていた懐かしい文字、元気ですか、その一言に昔とは違うこと感じ。。。。

窓の外、眺める午後、雨は降り続く、涙の様、あの日君と歩いた足跡、流されて消えて行くあの過去。。。  濡れない様にさす傘、さしかた知らなかったの確かだ。。。」

何故、思い出の詰まったはがきは雨の日にとどくのだろう。

すこし角が濡れたはがき、雨でにじんだ文字、でもその文字から伝わってくる感情。共に過ごした時間に比例して、その人の文字がよそよそしさを醸し出す。

何故、雨の日の思い出は研ぎすまされて心に刻まれて行くのだろう。

何故、雨の日にはセンチメンタルな思い出が多いのだろう。

都会の喧噪の中、日々忙しく過ごしていると雨は移動に億劫な天気なだけで忘れがちな大切な雨の思い出。モノより思い出、というキャッチコピーがCMで流れるくらい、大切な思いですら今の都会では忘れられる事が多いのかもしれない。梅雨の雨は鈍った私の感覚をゆすり起こしてくれる。ちょっぴり切ない思い出と聞き込んだBGMを道連れに雨の中をぼうっと歩き、紫陽花を眺める。そんな梅雨の一日が在っても良い。

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西山淳哉(にしやん)
西山淳哉(にしやん)

15人制ラグビーというスポーツの中でもプレー人数もルールも多い競技をプレーしながら、試合後のビールが大好物。寂しがり屋の一人が好き、人見知りの出会い好き、矛盾した天の邪鬼。思考し迷走する企業チーム所属プロラグビー選手。独身。石巻に支援活動を展開中。

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