2013-01-9
上海ローズ
ここ数年、若い世代を中心に絶大な人気を誇るAKB48。テレビを持っておらず、ほとんど見る機会もない私でもその名をしっており、その人気のすごさにも驚嘆である。熱狂的なファン達を見ていると、その言動と愛着心の強さに圧倒される。
太平洋戦争時、プロパガンダ(アメリカ軍の戦意を喪失させる事が目的とされた)のラジオ放送があったのをご存知だろうか。音楽や語りを中心に、英語を話す女性アナウンサーがとげのある内容を、魅了する言葉と口調で語りかけた。アメリカ軍兵士はこぞってその放送に聞き入り、素性もわからぬその女性アナウンサーのことを「東京ローズ」と呼んだ。それほどまでに影響力と人気を誇った「東京ローズ」の素性は未だに多くの部分が謎に包まれたままらしい。映画「パールハーバー」でも、兵士が「東京ローズ」の放送に聞き入るシーンがでてくる。
昨年、そんな「東京ローズ」を題材にした舞台を、ひょんなきっかけから父と二人で見に行く機会があった。三宅裕司さんを中心に活動するスーパーエキセントリックシアターの本公演「上海ローズ」。公演前、「東京ローズ」の歴史的存在を知らずに観劇した私は、芝居の内容をみて、驚きと感動を覚えた。どこからインスピレーションをもらってこのストーリーが出来ているのであろうと不思議に思ったのである。公演直後、2階席だった私たちが帰路につく階段で父が「東京ローズ」の話をしてくれた。なるほど。「上海ローズ」では、戦時中、アメリカ兵を魅了した声の持ち主「上海ローズ」の歌を収録したとされる幻のレコード盤を巡って話が進んで行く。売れる楽曲を作るためのヒントがそこに隠されているというストーリーだった。
そして、私はすぐに「東京ローズ」について調べてみた。
実在し、アメリカ兵たちを魅了した「東京ローズ」、そこからインスピレーションをもらい生まれた「上海ローズ」、現代の日本で絶対的な人気と圧倒的な影響力を持つ「AKB48」。私の中で3つの存在がリンクし繋がってくるのが感じられた。
情報にあふれかえっている現代社会において、プロパガンダ的に人に影響を与えようとする事は本当に難しいとおもう。国の政策ですら、その情報と流れに逆らう事が出来ず、中東では国家がひっくり返る騒ぎが多発しているほどである。
「AKB48」のすごさは、「東京ローズ」いらい、現代ではアイドルという形で多く人気をほこった日本の女性達の中でも、この社会情勢の中での影響力は群を抜いていると感じる。
父が教えてくれた「東京ローズ」の存在が、「AKB48」に興味を示すきっかけになった。選挙へ行こうとうながす彼女達の広告をみるにつけ、この国にはまだプロパガンダが通用していると思っている人間がいるのではと思ってしまったが。
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