2012-09-4
土曜の丑の日
わたしは無類の鰻(うなぎ)好きである。
毎年、七月になると土用の丑の日にちなんでスーパーなどでは鰻が主役になる時期が訪れる。私の場合、この土用の丑の日に限らず、ついついスーパーで鰻を買ってしまうほど鰻に目がない。国産もの、中国産、天然もの、養殖。値段もバラバラであるが、鰻は鰻と思い美味しくいただく。
近年、鰻の不漁により鰻の値段ががまさに「うなぎ登り」に高騰し始めた。養殖しているのに、不漁で値段が高騰するのはおかしな話であると疑問を抱いた私であるが、鰻を知るにつけその理由がわかってきたのである。不漁なのであれば、天然ものの値段が上がるだけなのではとはじめは考えていた。しかしそういかないのには鰻の神秘たる生態系の秘密が隠されていたことを私はこの夏初めて知りました。
鰻に天然ものと養殖の鰻があることをご存知の方は多いであろう。天然ものは有名どころでは高知県の四万十川など清流と言われる川で獲れることはよく知られている。では、養殖ものはと考えるとうなぎパイでもしれている浜名湖が一番に思い浮かばれるのではないだろうか。
一般に養殖とは卵から卯化させ、稚魚から育てるものを想像するが、鰻の場合そうはいかない。鰻の卯化に成功した研究者はおらず、未だに稚魚の「シラスウナギ」を川ですくってきてそれを養殖しているのである。その稚魚が近年不漁なのである。
では、「シラスウナギ」はどこから来るのか。四万十川の様な清流で獲れる鰻なのであれば、川で育っているのではないかと推測されるが、なんと鰻は海から川にあがってくる降河回遊という生態系をとっているのである。海で産まれ、川で育つ。
その海というのが、近年の研究で、マリアナ海嶺の水深200メートル当たりであると推測される様になって来ているというから、何とも不思議な生物である。
遠くから「シラスウナギ」は黒潮にのり長旅をして日本全国の川にたどり着く。
そして育った鰻を私たちは美味しくいただいているのである。
鰻は身近にあるがまだまだ神秘な生物なのである。美味しいわけです。
土用の丑の日に鰻を食べる風習はいつからのものであろうか。
土用とは、五行に由来する雑節の事であり、四季にそれぞれ18日間ずつある。立秋前の夏の土用期間中の十二支の丑の日、(18日間のうち12種類の干支のうちの丑の日なので、年により1回、ないし2回ある)に丑の日の「う」にちなんで「う」の付くものを食べると、夏負けしないという風習から、鰻を食べる様になったと言われている。梅干しや瓜も当時は食べられていたらしい。
鰻が定着したのは江戸時代からだそうだ。
土用の丑の日。小さい頃から我が家でも7月の土用の期間に鰻を食べに連れて行ってもらった。父の仕事の休みの日である土曜日や日曜日に食べに行く事が多かったため、私は土用の丑の日を、「土曜」の丑の日であると本気で思っていた。
今でも、7月の土曜日には鰻を食べなきゃと思ってしまうくらい、私の中で「土曜」の丑の日が定着している。
いつの日か鰻の生態系が解明され、もっと手軽に食べられる様になる事を思いながらも、神秘のままの鰻の味と魅力が失われてほしくないと、矛盾する事を願いながら、次はどんな美味しい鰻を食べられるかと残暑の夏に鰻に想いを巡らせています。
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