2011-12-15
一年後に届いた手紙
四谷怪談。師走という身も心も懐も寒くなってきているこの時期に季節外れの話をしようと思いついた。
お岩さんで有名な四谷怪談には様々なアレンジが存在するが、江戸時代のお話しで、ぶっさいくなお岩さんが夫からひどい扱いをうけ殺され、幽霊となって復習を果たすというストーリーが基本形であると言われている。
誰もが一度は耳にしたことのあるであろう「お岩」さんの話、かの葛飾北斎が挿絵を描いたり、落語の題材となったり、近年ではTVのドラマや映画にも使われるほど日本人に親しみの深い夏の風物詩的お話である。
19歳の時に東京で一年暮らした私は、代々木ゼミナール代々木校に通っていた。もともと高校までは名古屋で暮らしていた私にとって、東京にはほとんど友人がいなかったが、浪人生という同じ境遇に置かれていることもあり、共に大学を目指し勉強をしている(自信をもって言い切れないが)東京出身の友人たちが出来た。それぞれに志望校も進路も違えど、東京に同い年の友人が出来たことは私にとってすばらしい財産となったと思う。
受験を終え、私は京都の大学に進学した。8月の終わりに一人の東京の友達から連絡が来た。手紙を出したけど届いた?という内容の電話だった。8月が誕生日の私に、バースデイカードを送ってくれたらしい。何も私からの返答がないので連絡をくれたのだ。しかし、私の手元にはそれらしい手紙は届いていなかった。今でこそ、携帯メール、パソコンのメールなどが主流で手紙を書く機会も少なくなったが、当時は携帯のショートメールがやっと普及したくらいの時、カードを送るなどアナログな部分はまだ主流であった気がする。
20歳になり、滋賀に住居を移し新しい生活にも慣れてきた8月の私の誕生日の数日後、旧住所から転送されてきたはがきが届いた。一年前の私への誕生日カード。日付はまさに一年前の私の誕生日。どこかで保管されていたのか、紛れ込んでしまっていたのかは定かではないが、本当に一年ぴったりたってから私の手元に届いた。
この手紙の差出人の友人は東京出身、四谷に両親と共に住んでいた。
もしかしたら四谷から出した手紙が「お岩」さんのいたずらによって時間を超えて私の手元に届けられたのかもしれないと思う。
そんな不思議な事を思っても、四谷という地名を聞けば、そうかもしれないなと感じてしまうだけの影響力があるのは四谷怪談のお岩さんのおかげであろう。
若い頃の私は既にその奇々怪々な現象に触れていたのかもしれないとふと思った。春になったら時間を見つけて四谷にあるお岩稲荷を訪ねてみようと思う。この寒さにはさすがのお岩さんも参っている事だろう。
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