2012-11-2
ゴンベイ
時として子供の頃の信じがたい出来事というのはいつまでも想い出として残る物である。私にとっての父の行動はいまだに信じられない出来事となり、強烈なまでのインパクトと共に想いでの一ページに刻まれている。父自信は覚えていないというのが不思議な物で、大人と子供の感覚の違いなのだろうと感じる。
私が幼少期から小学校一年生までの間、私の家族は名古屋のはずれ緑区の桶狭間とういところに住んでいた。当時は、家の裏にはドラえもんの漫画に出て来そうな絵に描いた様な空き地、表には庭を挟んでみかん畑と土手がひろがっていたと記憶している。途中、みかん畑が住宅地に変わったようにも思うが、そこは定かな記憶ではない。二階の兄と私の二人の部屋のベランダから、向いの土手の上に夕日越しにキジのシルエットを見た事は鮮明に覚えている
そんな自然に囲まれていた地域だったため、季節ごとにいろんな動物やら虫やらとふれあう事が多かった。
裏の空き地に面した私の家の裏手に物置があり、その物置の下に穴を掘って住み着いていた野うさぎがいた。ゴンベイという名前だった。確か、その地域がゴンベイ谷という地名だったからだと思うが、家の周りや、空き地をぴょこぴょこ走り回っていたのをたまに見かけていた。
裏の空き地には、何故だかわからないが、3分の2ほどの場所に、溝が一列とおっており、梅雨になると水たまりになりウシガエルの卵がたっぷり獲れたり、夏になると雑草が生い茂る部分があり子供達の身近な自然との繋がりがある遊び場として季節ごとにいろんなイベントを私たちに提供してくれていた。
あるとき、小学一年だった私と兄は野うさぎのゴンベイが裏の空き地の溝でがさごそしているところを見つけた。物置の下とはいえ、同じ家に住む家族だと思い、手を出し呼べど見向きもしてくれない。捕まえようとしてもすばしっこくとても捕まえる事ができない。だんだんどうしようもなくなって来た私は、なにか飛び道具はと思い探すが見当たらない。そしてちょうど、尿意を催したのでしょんべんを。。。
ゴンベイに勝利した気分になった私は意気揚々と家に戻り、父にその話を自慢げにした。父はかんかんに怒り、家を飛び出して行ったのである。
当たり前である。
しかしここからの父の行動が私を驚かせ、一生忘れる事のない思い出となった。
戻って来た父は、ゴンベイを捕まえており、ゴンベイを洗い、ゴンベイに謝れと。相手は野うさぎである。
兄と二人でどんなに頑張っても捕まえる事のできなかったゴンベイ、父はいとも簡単に捕まえて来たのだ。そして野うさぎに謝れと言った父。
今でも家族でのお酒の席でたまに出てくる逸話。父にどうやってゴンベイを捕まえたのか聞いても本人は覚えていないと言う。
私もいつか野うさぎを捕まえられる様な父になりたい物だ。痛烈なまでのインパクトの思い出とともに、風の便りで車にひかれて亡くなったと聞いたゴンベイの事をたまに思い出す。
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