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2011-06-13
映画「さぁ のはらへいこう」
キラキラ輝く子ども時代

「青空自主保育」という活動をご存知でしょうか。
これは、園舎を持たず、自然の中で遊ぶグループのことです。
私は、姪が鎌倉市にある、青空自主保育「なかよし会」に
参加したことをきっかけに、この活動に興味をもつようになりました。
そして、Bon Voyage の名曲「サニーガール」ができたのも、
この「なかよし会」の子どもたちと遊んでいたことがきっかけでした。

今回は、この青空自主保育「なかよし会」の三年間の記録をまとめた
桐野直子監督の映画「さぁ のはらへいこう」をご紹介します。

さぁ のはらへいこう

デンマーク発祥で、ドイツで広がりをみせた「森のようちえん」は、
メディアでも時折取り上げられ、ご存知の方もいるだろう。
日本では戦後、焼け野原になった各地で展開され、
その後、高度経済成長期になって、姿を消していったが、
現在、「青空自主保育」「森のようちえん」と呼ばれるグループは、
数多く存在し、保育のあり方に注目を集めている。

この映画は、そのグループの一つ、
鎌倉の青空自主保育「なかよし会」の三年間の記録を、
報道、ドキュメンタリー番組の制作に携わってきた、フリーの映像ディレクター桐野直子監督が制作したものだ。

青空自主保育「なかよし会」は
創設者、相川明子さんが、1985年、鎌倉の電柱に貼った
こんなチラシから始まった。

「共同保育をしませんか。
 子どもを一緒に遊ばせたいお母さん、
 自分の時間が欲しいお母さん。」

グループの保育の基本は、

「手出し口出しはせず、見守りに徹すること。」

映画では、会に参加する1歳から3歳の子どもたちが、
鎌倉の谷戸、山、海で泥んこになって遊ぶ3年間の日々が、
キラキラと眩しく鮮烈に、記録されている。

会の保育の方針や、いかに親も子も育つかについて知ることも、
もちろんできるのだけれど、子育て経験のない私には、
子どもたちが、どれほど強烈に、真剣に生きているかが心に染みた。

1歳の時は、まだよちよち歩き。
母親と離れただけで大泣きしながら、
それでも険しい山道を果敢に、泥んこになって進んで行く。

海で泥遊びができない子も、2歳、3歳になったら、
率先して、服を脱ぎ、裸ん坊になって泥まみれになる。

冬でも半袖、裸足で遊ぶ子どもたちが、
川のせせらぎでしじみを取った時、手がかじかんでしまう。
そのあと一生懸命に、お友達が服を着たり、
靴を履いたりするのを手伝ってあげる。

子どもがけんかをしても、親は口出しをしない。
とことん体当たりで友だちとぶつかって、
相手が泣いてしまっても、何がいけなかったのか、自分で考える。

例えば公園で遊ぶお友達同士で、砂や葉っぱをお友達にかけて遊んでいて、
それがエスカレートしたら、あるいは、エスカレートする前に、
親は「○○ちゃんが嫌がっているよ、やめなさい」と、言うだろう。

けれども、なかよし会では、親は「口はチャック、手は後ろ」。
本当の本当に何かあった時のためだけに、そっと後ろで見守るのだ。

映画には、センセーショナルなけんかのシーンも出て来る。
子どもは泣きわめきながら、思いの丈を訴える。
そんなシーンの一つ一つが、どれほど子どもが必死に、
真剣に生きているかを鮮烈に感じさせてくれる。
映画を見ている時、いつのまにか子どもと等身大になって
一緒に泣いたり笑ったりしている自分がいた。

人は大人になるにつれ、必死にやることを忘れてしまうのかもしれない。
知識が先に立って、全身全霊を、頭で考えなくてはできなくなってしまう。
子どもの時間が悠久のように流れるのは、子どもが、他には何も見えず、
ただその時に没頭することができる、時間使いの天才だからだ。

3歳までの記憶というのは、大人になったらほぼ消えてしまう。
私の最古の記憶は、多分2歳の頃、
姉のガールスカウトの活動に母とついて行った時のことだ。
ちょっとした山へ行くというのに、
私はどうしてもサンダルを履いて行きたかった。
母は渋々、私の要求をのみ、白いかわいいサンダルを履かせてくれたが、
案の定、私は土の急斜面で転び、頭を縫う大けがをしてしまった。
そのことはやけに鮮明に覚えているのだけれど、
3歳以前で覚えているのは、本当にこれだけ。

相川さんは、そんな3歳までの子どもたちが、
自分で考え生きる力をこの時期に身につけることを、

「覚えていないことこそが大切」

「五感を通して無意識の領域に刷り込まれるので、
 その人間の基礎をつくる」

のだという。

福島第一原発の事故で、
青空のもとで子どもたちが目一杯遊ぶことさえ危ぶまれる今、
これまで通りにはいかないことも、たくさんあるだろう。

それでも本来人間が、自然から学ぶことのできる大切なこと、
自然と共に生きるという、地球の上で営まれる素晴らしい瞬間が、
この映画にはギッシリとつまっている。

もう一度、あの子たちに会いたくなったなあ。
それは、誰でもが持っている、
遠い記憶に輝く、小さな小さな、自分なのかもしれない。

「さぁ のはらへいこう」
監督・脚本・編集 桐野直子
語り       平野 文
制作・撮影    中村 稔
製作・配給    記録社
助成      文化芸術振興費補助金

【上映スケジュール】
ポレポレ東中野
5月28日(土)~6月17日(金) 毎朝10:30からの1回上映
TEL:03:3371-0088 

「さあ、のはらへいこう」オフィシャルサイト
http://noharaheikou.com/

青空自主保育「なかよし会」オフィシャルサイト
http://nakayoshikai1985.blog14.fc2.com/

相川明子 編著「土の匂いの子」
土の匂いの子

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Asako Yoshihiro(The Cloudtails/Bon Voyage)
Asako Yoshihiro(The Cloudtails/Bon Voyage)

吉廣麻子(The Cloudtails / Bon Voyage)シンガーソングライター A型、蟹座。旅好き、B面好き。 2001年よりBon Voyage(ボンボヤージュ)ボーカルとして活動。2012年、アメリカン・ルーツミュージックとアコースティック・ジャズをブレンドしたThe Cloudtails(クラウドテイル)を結成。現在、ソロ活動にも力を入れている。 Facebook | blog

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