2014-03-25
音楽は「愛」と「リスペクト」なのだ
怒濤のツアーが終わって、昨日の朝、名古屋から帰って来た。3月は月6本のライブと初めてやる歌詞のワークショップという強行スケジュールだったけれど、素晴らしい時間を重ねて、少しは私も成長できたかな。
振り返ってみると、色んな場所へ行って、色んな人たちに出会ったなあ。たくさんの人たちと愛を交わし、支えていただきました。ライブって、そういう方たちがいないと、ミュージシャンだけでは成り立たないものだと、改めて感じることができた良いツアーでした。
それで今回は、ライブの現場作りを色々とやった中で気づいたことを書いてみようと思う。
実は私、すごくスタッフ気質なのです。だから、イベントをやる現場では、けっこう色んなことが気になっちゃう。その「場」をつくることへのこだわりがかなり強い方だと思う。どんな場所でも天才的に演奏できる、そんなミュージシャンなら良いなと思うんだけど、私の場合は雰囲気を作るところから音楽が始まっていたりして、たまに現場で口うるさい人になっちゃうこともあるんだよね。
例えばPAについて言えば、音像が見えなければ、ステージ上のものはどんどん動かしちゃう。そういうのをメンドクサイと感じる人もいるらしくて、「アンプをもう少し左に」とか、「スピーカーの高さを上げて」とか言うと、一瞬嫌な顔をされる方もいますが、結果的には良くなるので、そこは妥協したくないのね。
そうそう、ライブの時のPAさんとのコミュニケーションはすごく大事。私が出演しているようなカフェは、比較的、所謂「私はPAです」という人がいるお店は少なくて、小さなお店では「自分たちでやってください」という場合も多い。もしくは、あまりやり慣れていない人がPAとして入っているお店もあって、それはそれでガンガン意見を言ってもそれを受けて入れてくれるので、やりやすかったりする。ただ、音が出れば良いってわけではないので、最近のカフェライブなどで、人件費も含め、PAにお金をかけていないお店はすごく残念だなーと思うこともある。
これは、最近、誰でもミュージシャンになれるのと同じ理由で、テクノロジーの進化によって生まれた、すごく深刻な問題。レコーディング現場でも同じようなことは起こっていて、何年か前に、レコーディングスタジオでは、熟練のエンジニアさんたちが次々に正規雇用を切られてしまった時期があった。残ったのはお給料の安い若手のエンジニアさんたち。それはそれで経験を積めて良いんだけれど、熟練のエンジニアさんがフリーになって、現場の数が減ったり、フルタイムなら現場がなくても卓をいじっていられたりする、そういう時間が削られて、技術が落ちてしまうということも聞いたことがある。さらには、受け継がれている知恵もそこで断たれてしまうのじゃないだろうか。
「会社」からすれば、技術革新でレコーディングやPAの機材が「安く」手に入り、「誰でも」扱えるようになったことで、コストの安い方を選ぼうとするのはわかる。ただ、「人の技術力」に負うところの大きい音楽制作現場においては、そういう短絡的な方法が取られるというのは、すごく悔しいことだ。最近、ミュージシャンが自前のPAを持って、どこでもライブができる環境を準備しておく人も多いけれど、ニーズに応えられるのは良いなと思う反面、「不景気」という名の下に、予算が削られて技術力が低下しているのは、さみしいことに思う。これは音楽の現場だけではない。「餅は餅屋」よりもオールマイティーが歓迎される風潮は、日本全体が今、直面している問題なのかもしれない。
ちょっと話がずれてしまったけれど、PAの話に戻そう。
カフェでのPAさんのスタンスがある一方で、ライブハウスなどでThe PAの人がいる場合、これはこれでやりにくいときがある(苦笑)。名誉のために言っておくと、今回のツアーで出会った人たちのことではない。これまでのキャリアの中で出会ったことのある人である。
まず、PAの人たちは、すごく無愛想な人も多い(全てのPAさんではありませんよ!悪しからず!!)。PAさんたちは繊細な音作りの作業を誇りを持ってやっているので、プライドが高く、要望を抽象的に伝えると「は?わかんないのに何言ってんの?」って態度を露にする人もいっぱいいる。Bon Voyageの相方のように「何キロヘルツを切って下さい」とか言えたりすると、PAさんも「この人わかってる!」と、急にフレンドリーになることもあるんだけれど、それがわからないと、「何言っちゃってんの?」という態度をむき出しにして、要望に対していちいち冒頭に聞こえない「は?」を入れて対応する人もいる。しかし、これにいちいち腹を立てていると、現場のムードは悪化する一方で、こっちの気分も悪くなってパフォーマンスにも影響するので、逆にそんな心の壁をちょちょちょいとくぐり抜けて、うまく働いてもらうのが実は全員のために平和な手段だったりする。
ただ、前に「譜面台下さい」とお願いしただけで「俺の手順崩すなよ」ってな感じでめちゃくちゃ嫌がられたことがあって、そういうことがあると、時々思うわけだ。「そんなにめんどくさいならPA辞めちゃえよ」と。「良い音作って、ミュージシャンに気持ちよく演奏してもらうのがお前の仕事だろ」と。ハハハ。PAはある種、サービス業だと思うわけです。
そんなわけで、初めて行くライブハウスでは、PAさんに対面するのはちょっとしたキンチョーの瞬間でもある。音作りってほんとにほんとに難しいし、ちょっと違うだけで音楽が違うものに聴こえたりするので、とても大事なことだから、これからもPAさん達の豊富な経験を頼りにしつつ、”柔軟に”こだわって行きたいなと思う。
最後に、以前ライブが始まる直前にメンバーから言われた、ほっこりする言葉を紹介して終わろうと思う。厳しい実力主義の音楽社会の中で、こういう言い方をする人ってそうはいないんだけれど、その時ギタリストのIさんはステージに入る前にこう呟いたのだ。
「みんなで助け合ってがんばろうね」
「助け合い!」なんて良い言葉なんだろう。そう、音楽はやっぱり「愛」と「リスペクト」なのだな。プレイヤー同士、そして音楽自体への愛とリスペクトがあれば、ミラクルだって起こせてしまう。「心」を映し出す音楽というものが、私はほんとに大好きだなあ。
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