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2012-11-5
“SMART ILLUMINATION YOKOHAMA 2012″

先週の半ば、Faccebookを何気なく眺めていたら、横浜市観光局が「スマートイルミネーション ヨコハマ」の関連イベント告知をしていた。 

「スマートイルミネーション??」

既に開催中であったそのイベントの名前を、横浜市在住なのに聞いたことがなかった。だいたいいつも、横浜市のイベントというのはそうなのだ。告知が行き渡っていない、もしくは告知がわかりにくい。わざとわかりにくくして訴求するティザー広告ならばまだしも、横浜市絡みのイベント告知には、それが成功しているとは到底思えない”なんとなく”感がいつも漂っているのである。
さらには、イベント自体も”なんとなく”な時がある。巨額の予算を使い大赤字に終わった「Y150」が市民から大バッシングを受けたことは、今ではもう忘れそうな記憶だが、そんな経緯もあって、このイベントにも特には期待していなかった。

Facebookで見つけたのは、「スマートイルミネーション」の関連イベントで、NTT神奈川によるショールームのLEDライトアップと、社員食堂での、NTTフィルの室内楽のイベントだった。チャージは全て、今、存続の危機にある神奈川フィルに寄付される仕組みで、お客は1,000円程度のドネーションで室内楽を楽しみ、飲み放題と地産地消の食材を使った軽食を楽しめるというものだった。
実際の食事はおいしかったし、横浜を代表する写真家、森日出夫氏の写真映像もとても良かった。室内楽は、NTTの関連会社の社員で構成された弦楽四重奏で、モーツアルトの「アイネクライネナハトムジーク」やディズニーから「星に願いを」など、クラシックからポピュラーまで数曲を演奏してくれた。音楽をやっていても日頃間近で聴くことの少ないバイオリンの音色は心地よく、珍しくアルコールをいただいたことも手伝って、かなり気持ちよいひと時を満喫した。

そのあと、日本大通りを通って、大さん橋方面へ夜のお散歩。さっきも書いたが、このイベントには全然期待してなかった。していなかったからこそなのか、横浜港の夜には、いつも以上に美しい光景が広がっていた。

日本大通りもアートなライトアップを施され、いつもとは違う表情。

オーストラリア人アーティスト、Pip&Popによる「moon flower dream」。歴史的建造物のショウウィンドウを密かに飾っていた。

像の鼻パークにて、LEDで作られたポータブルの灯り「光の実」が吊るされた木々。このメイン会場が一番、人でにぎわっていたが、それでもほどほどな人並み。

MIRRORBOWLERによる自家発電インスタレーション「0(zero)-自転車で光る大きな卵」。漕いでいた男性は「自分で灯りをつけている感がある!」と興奮気味。

最も大掛かりだったのがコレ「The Organic Radiance Ring/有機的な光の輪」。象の鼻パークの象の鼻と、隣接する横浜税関や神奈川県庁本庁舎、赤レンガ倉庫一号館などが無線を経由した信号で同期され、LED照明がライブパフォーマンスに合わせて光るというもの。これらの建物はかなりの距離感があるので、広い街全体が同期している様子は圧巻だった。

行ったことのある方ならわかると思うが、横浜港の観光スポットは、広範囲に渡り点在している。なので、これらのイルミネーションを楽しむためには、けっこうな距離を歩いて行かなければならない。東京のように人だかりになることはないが、一体どこに展示物があるのやらわからないまま(再三言うが、広報ベタなので、地図を見てもよくわからない)、秋の夜長をゆっくり歩いて行く。それはなんとなく、地方都市で行われるアートトリエンナーレの空気感に似ていた。普段通りのゆるやかな景色と、アートの世界が交互に現れて、特別な時間を自分のタイミングで味わうことができる。
これを書いていて気づいたが、そうか、東京がうまくできすぎているのだ。誰をも飽きさせないサービス精神、巧妙さ、精巧さ。たくさんの人を捌く必要から生まれる効率化、合理化。だから宅配便が当日につきますよ、なんていうアイディアだって生まれて来るのだろうな。

もちろん、横浜市にはもっと広報上手になってほしい。せっかくある美しい景観や歴史的建築を利用したイベントなら、もう少したくさんの人に見てもらってもいいはずだ。でも、変わらないでいてほしいな、という側面もある。横浜が東京のようになってしまっては、いつでもランチに長蛇の列を成したり、人だかりで落ち着かない気持ちになったりしなくてはいけない。そんな風には絶対に絶対にならないでほしいのだ。横浜港のこの美しい街並を、ゆっくりと味わえるその時間こそ、横浜ならではの楽しみだと思うから。

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Asako Yoshihiro(The Cloudtails/Bon Voyage)
Asako Yoshihiro(The Cloudtails/Bon Voyage)

吉廣麻子(The Cloudtails / Bon Voyage)シンガーソングライター A型、蟹座。旅好き、B面好き。 2001年よりBon Voyage(ボンボヤージュ)ボーカルとして活動。2012年、アメリカン・ルーツミュージックとアコースティック・ジャズをブレンドしたThe Cloudtails(クラウドテイル)を結成。現在、ソロ活動にも力を入れている。 Facebook | blog

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