2011-08-7
太鼓と響け!福島の願い〜ならは天神太鼓うしお会「感謝と出発のコンサート」
今日は、7月18日、海の日に、東京FMホールで開催された、福島県双葉郡楢葉町の和太鼓グループ、「ならは天神太鼓うしお会」と、和太鼓ユニットJU-ZO のコンサートのお話です。後日、Bon Voyage のラジオ番組「モーニングカフェ〜素晴らしき音楽仲間たち」にゲスト出演していただいた、「うしお会」の指導者で、JU-ZO のメンバーの佐久間崇さんのお話を交えて、福島の一つの現実をご紹介できればと思います。
「ならは天神太鼓うしお会」は、小学生から高校生までの約20名で結成される。「感謝と出発のコンサート」と題されたこの催しは、本来、3月13日に高校生のメンバーの卒業コンサートとして、福島県で開催される予定だった。
ところが3月11日の東日本大震災を受けて、原発20km 圏内に住む出演者やその家族達は翌日、緊急避難。コンサートは関係者に連絡される間もなく、延期となった。
当初、このコンサートは、「感謝と巣立ちのコンサート」と題されていた。福島のこのエリアでは、高校を卒業すると、みんな町を離れ、ばらばらに暮らすようになる。今年卒業をする高校生たちが6年生だった時からずっと指導にあたっていた、和太鼓ユニットJU-ZO の佐久間崇さんは、今年の卒業コンサートを特別な思いで迎えるはずで、その直前まで、メンバー達と一生懸命、練習に励んでいた。しかし、震災と原発事故を受けて、メンバーはそれぞれの場所に遠く離れて、避難生活を送ることになる。
被災地との連絡が困難な中、震災後、一ヶ月ほどしてから、メンバーがどこで過ごしているのかがわかるようになってきた。佐久間さんが、関東で避難生活を送っていた、「うしお会」の代表、高原カネ子さんとも何度か会って話すうち、子どもたちに、太鼓を叩かせたい、バチを持たせたいという思いが強くなり、東京でのコンサートが企画されることになった。
開催には、数えきれない協力があった。衣装はボランティアの方々の手作り。持ち出せなかった自分たちの太鼓は、別のものを借りて来ることができた。東北から関東他、広いエリアに散らばって避難生活を送る子どもたちを、以前から交流のあった、地元の旅行会社の方が自らバスを手配し、一軒ずつ迎えに行ってくれた。
コンサートは、「感謝と『出発』のコンサート」と名前を変えた。
コンサート前日、4ヶ月ぶりに再会した子どもたちは、以前と変わらぬ笑顔で佐久間さんと言葉を交わしたという。避難生活の間、誰一人、バチを触った子どもはいなかったが、その日、朝から晩までの、長い、けれどもたった一日の練習が行われた。子どもたちは、すぐに勘を取り戻していった。
コンサート当日、舞台に登場した「うしお会」のメンバーは、緊張した面持ちで、心配そうに客席を眺めていた。静まり返ったホールで、客席は期待の目を寄せる。
最初に、太鼓を始める子供達がまず習うという曲が披露された。独特の「トトトン、トトトン」という「三つ打ち」が拍をリードし、その上にシンプルなリズムが少しずつ変形して行く。心地よく高らかな太鼓の音だ。
和太鼓というと、男らしい、どこか無骨で、潔い調べの印象があるが、「うしお会」を指導してきたJU-ZOの佐久間さんのアレンジは、どこか現代的で、もう少し自由な表現ができる、柔軟な音がする。凝った音響はなく、天井の高い東京FMホールに響く和太鼓が、耳から皮膚から、音を響かせ、胸を震わせた。
JU-ZO のパフォーマンスも素晴らしかった。曲を作る時、リズムパターンを組み合わせる他に、まず考えるのが、「どう魅せるか」なのだと佐久間さんは教えてくれた。和太鼓独特の歌舞く魅せ方。まっすぐか、横に打つか。背中を見せるのか。また、複雑なフォーメーション、アクロバティックなバチさばき。見せ場が多く、一打一打が気迫に満ちていた。和太鼓だけで構成される2時間近いパフォーマンスが、こんなにも楽しめるとは、正直、思いがけない体験だった。
曲が進むに連れて、子どもたちは生き生きとしてくる。何かを思い出して、熱くなってくる。見ているこちらが、たくさんの元気をもらう。
最後から2番目を飾った「YO-ZAN」をJU-ZO が演奏する段になって、佐久間さんは、出演している子どもたちを客席の袖に並ばせた。「お前達、よく見ておけよ」。そう言って始まった演奏からは、言葉にならない思いが滲み、溢れていた。言葉ではなく、生き様を見せる。そうやって後を続く者達に示せる大人が、今、どれほどいるだろう。力強いその姿には多分、「生きていく決意」が込められていたように思う。
コンサートは、「うしお会」が昨年のコンクールで準優勝を果たしたという「天汐」で締めくくられた。長年、変化を重ねながら完成していったという、渾身の一曲。見せ場が多く、迫力のあるパフォーマンスに、子どもたちのかけ声はひと際力強さを増していった。メンバーに、どんな思いがよぎっていただろう。
佐久間さんはコンサートの後、「あの演奏をコンクールでしていたら、間違いなく優勝していた。これまでで最高の演奏だった」と、誇らしく振り返った。
後日、コンサートを経て、メンバー達が変わったことを佐久間さんに聞いてみた。
「コンサートで果たしたかったのは、とにかく『再会』することだったんです。」再会することで、子どもたちは、今も楢葉町で自分達が繋がっていることを確認することができた。それは大人達も同じで、これまでの生活が突然に分断され、苦悩する中から再出発するために、みんなが何かきっかけを必要としていた。だからこそ、コンサートの開催には、深い意味があった。
想像を絶する現実が、今、福島では起こっている。
長く続いた社会システムの中で、すぐに変われないことがありすぎる。
だけど、普通の生活を、他の人が奪う権利は、誰にもない。
テレビでストーリー仕立てに作られた特集より、やはり直接体験された方に大話を聞く方がよりリアルで、今回、初めて身近に震災を感じました。
今も自分の家に住んでいられる私にできることは、
現実から目を背けないこと、忘れないこと。
伝えること、できれば語り合うこと。行動すること。
そして、許されるのなら、祈り、歌うこと。
再会することでまた一歩踏み出せる。一つの「絆」という大切な宝物に気がついて、この先、みんなはどんな風に、また毎日を始めているのだろう。きっと、これまでより少し強くなって、前に向かって歩き始めているだろう。高らかな太鼓の音に乗って、いつも心に「ふるさと」を抱いて。
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改めて、この震災で被害に合われた方々に、慎んでお見舞いを申し上げます。
そして今、苦難と向き合う方々へ。
どうか希望を持ち続けてください。
忍耐強さは、いつか必ず道を切り開いてくれます。
私も今、これまでにない試練と向き合っています。
本当に成し遂げられるのか、不安で、投げ出したくなるときもあります。
だけど諦めないで、時々は自分を赦し、人を赦し、少しずつ前に進んで行きたいと願っています。
この太鼓の音は、きっと力をくれます。
人間のパワーはすごいよって、気づかせてくれます。
信じられるものを見つけたら、それを大切に、みんなで進んで行きましょう。
何のためにそうするの?
答えは幾多もあるけれど、
まずは、自分を信じてあげるため。
そして未来へ続く、私たちの家族のために。
TOKYO MX テレビ ニュース「ならは天神太鼓」の演奏会
■ “感謝と出発のコンサート”東京FM ON AIR 情報
「LOVE&HOPE~ヒューマンケア・プロジェクト~」
8月8日(月)~8月10日(水)
TOKYO FM 17:30-17:40
ほか、JFN38局ネット
ふくしまFM 17:20-17:30
栃木FM 17:15-17:25
FM群馬 16:50-17:00
JU-ZO http://wadaiko.hosoya-artist.com/
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