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2012-02-18
生きた植物を標本する、小石川植物園

冬のとある一日、小石川植物園へとでかけました。
ここは、東京大学第学院の附属植物園で、
日本で一番古い植物園なのだそうです。

植物園に入る前に、正門前にある「フードショップヨネダ」
という昔ながらの雑貨店、というか小間物屋さんで入園券を購入します。
そして門の守衛さんに、昭和な香りのする切符を渡して入園。

まずは一番奥の柴田記念館、イングリッシュ・ガーデンの
中に建っていそうな、瀟洒な雰囲気です。
こちらは大正7年に東京大学植物学教室の柴田桂太教授が建てた、
園内で一番古い建物で、研究資料が見られる他、売店で、
明治の画工の描いた植物画のグリーティングカードなどを買うことができます。

グリーティングカードを数枚購入し、次はお隣の温室へ。

この温室は築年数45年の年期物で、園内のあちらこちらに、
老朽化に寄る立て替え資金を募る「Life in Green プロジェクト」のパンフレットが置いてありました。

ところが実際温室に入ってみると、
そこはまるでデレク・ジャーマンの世界。

もちろん老朽化は心配ですが、この古き良きイメージをそのままに、
リノベーションされるとしたら、喜んで募金するでしょう。
ただパンフレットからは、近代的で生物多様性研究の要となる
最先端の施設とされることが予想され、複雑な気持ちになりました。

デレク・ジャーマンはイギリスの映画監督で、
1994年にエイズで亡くなるまで彼が住処としたのが、
イギリスのケント州ダンジェネスにある「プロスペクトコテージ」
海が見え、原子力発電所があり、周囲は石ころばかりの荒涼とした場所で
彼はその庭に草花を植え、無機物のオブジェを配し、箱庭を描いて行く。
私はこの世界に、なぜかいつも心惹かれてしまいます。
(参照: 写真集「Derek Jarman’s Garden」


この温室にも、同じ気持ちが思い起こされました。
年期の入った鉄とガラスの温室、息をひそめる、でも、
押さえきれない情熱を秘め呼吸する熱帯植物たち。
自分でも驚く程の興奮がやってきて、夢中になって写真を撮りました。

次にたどり着いたのは、巨木が標本されたエリアでした。
冬の傾いた光の中で、彼らはまるで眠る恐竜のように、
ひっそりとそこに立っています。
スズカケノキ、オオバボダイジュ、
日本ではあまり見られないような木も、空へとそびえるエリア。

「こんにちは」

未知との遭遇、絶対的な存在感で迎えられると、
木は生きて、意識を持ってそこにいるということがよくわかります。
特に大きな木には、脈々と流れるエネルギーがあります。

自然と共存が叫ばれる今の世界で、ここではあまりにも不自然に
植物が標本されています。それでも木々は生きている。
ここで感じるのはそんな植物の息吹だけではなく、
わかっていても捕らえておきたい、人間の身勝手さでもあったりします。

光、鳥、植物、人、季節事に違う花、違う葉の色、
行く度に変わるから、また訪れたい小さな箱庭。
今日は小石川植物園をご紹介しました。

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Asako Yoshihiro(The Cloudtails/Bon Voyage)
Asako Yoshihiro(The Cloudtails/Bon Voyage)

吉廣麻子(The Cloudtails / Bon Voyage)シンガーソングライター A型、蟹座。旅好き、B面好き。 2001年よりBon Voyage(ボンボヤージュ)ボーカルとして活動。2012年、アメリカン・ルーツミュージックとアコースティック・ジャズをブレンドしたThe Cloudtails(クラウドテイル)を結成。現在、ソロ活動にも力を入れている。 Facebook | blog

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