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ジャズベーシストが語る超私的JAZZのはなし

2015-12-11
「ギター&ベース」デュオ

先月、11月11日にCDをリリースいたしました!
長年、デュオで活動している、ギタリスト・佐津間 純とのデュオです。ギターとベースのデュオという編成は私にとっては珍しいものではないですが、聴きに来られた方からは、「初めて聴きました」と言われることもしばしば。
ジャズの中でもポピュラーな編成ではないことは確かです。

私は「ギターとベース」の組み合わせで演奏するのが好きです。弦どうし、音の混ざり具合もいい。ピアノは10本の指を使えるわけですから、けっこう音圧があります。
その点、ギターはそこまで音がひしめき合っているわけではない。音楽にスペースがあるような感じがして、とても演奏していて楽しいのです。

小編成で、ピアノがない、小さな場所でも演奏できる、そして、お互いの好きな音楽が似ていたこともあって、佐津間くんとは一緒に演奏し始めてから8年の間、割と頻繁にライブを重ねてきました。今回のこのアルバムでは、「デュオ」という編成だからこそ楽しんでいただけるようにあれこれ選曲やアレンジを工夫しました。

CDを作る、となったので今まで出ている他のミュージシャンの「ギター&ベースデュオ」の音源を探したのですが、なかなかスタジオ録音のアルバムがない。
下記におすすめCDをいくつか挙げていますが、そのうち、スタジオで録音されているのは1つくらいだと思います。あとはジャズフェスでの演奏だったり、ライブのレコーディング。
何故かはよくわかりません。今度誰かに聞いてみたいです。

そもそも、ジャズの歴史の中で「デュオ」という編成自体が新しいものだと思います。1950年代ころにはあまり録音などは残っていないと思う。全部調べたわけではないので確かではないですが。
NYにいたミュージシャンから聞いたに話よると、1950年以降、新しいジャズクラブが次々できたものの、ドラムを入れる(くらい広い場所という意味)、にはライセンスが必要だったらしいです。それほど広くないジャズクラブはライセンスが取れない。だからドラム抜きのデュオ、という編成が多くなり始めたのじゃないかな、と想像しています。

今は閉店しましたが、1970年から80年ころにマンハッタンにあった「Bradley’s」というジャズクラブ。狭いですが、とても質の高い演奏が行われていたそうです。ここはピアノとベースのデュオがほとんどだったとか。しかも、出演しているピアニストを聴きに(チェックしに)NY中の他のピアニストが集まっていたらしい。演奏の質の高さが伺えます。
ここがライセンスがとれないお店だったおかげで「デュオ」という小編成の素晴らしい演奏がポピュラーになったのかな、と思ったりして。
私はベーシストのRed Mitchelという人が好きですが、彼はこの「Bradley’s」のオーナーの友人だったそうです。で、彼はピアニストとのデュオのアルバムも多いのですが、きっかけはここでの共演だったかも。そんなことを考えるのも楽しいものです。

おすすめギターとベースデュオのCDを並べてみました。
そして、一番下に、今回の私たちのCD「Weaver of Dreams」の紹介もさせていただいています。アマゾンなどオンラインでも購入いただけますが、是非是非ライブにお越しください!

〜Guitar & Bass Duo おすすめCD〜


「Alone Together」 Jim Hall(g)、Ron Carter(b)
1972 年、8 月4 日、”Jazz adventures” でのライブレコーディング。

何年も前、ギタリストとデュオのライブをすることになって、参考に・・と思って聴き始めたのだが、2人の演奏が自由すぎて、あんまり参考にならない上に、このCDの影響を受け過ぎて、逆に演奏に困りました。ポピュラーな選曲で、それでいて、普通でなくて、ライブの臨場感も味わえる、そんなCD だと思う。ギターデュオ、と言えば最初に挙げる1 枚。ちなみに、この2人を組み合わせたのは、ギターのケニー・バレル、らしいです。


「beyond the Missouri Sky」 Charlie Haden(b)、Pat Metheny(g)

ともにミズーリ州出身の2人の作品。1998 年度のグラミー賞“ ジャズ・インストルメンタル部門賞“ を受賞した。心が静かになる1 枚。ジャズを全く知らない人でも楽しめる作品だと思う。チャーリーの深い音色と、美しいギターサウンドが本当に心地よいです。チャーリーの美しいオリジナル、Ennio Morricone 作曲のニューシネマパラダイス、など、選曲も素晴らしい。


「Charlie Haden & Jim Hall」 Charlie Haden(b)、Jim Hall(g)

そして、上の2枚のベーシストとギタリストの違う組み合わせ。これは最近、発売されたばかりのCD で、1990 年、カナダでのMontreal Jazz Festivalのライブレコーディング。上の2 枚と聴き比べると面白いかも。ピアニスト、セロニアス・モンクの曲や、オーネット・コールマンの曲など、さすが、と思わせられる選曲。というのは、なかなかギターとベースのデュオで聴けそうにない選曲だと思うのです。これも、ライブだからこそ出来ることなのかも。ギターとベースの音の対比が面白い。


「FINALLY」 Joe Pass(g)、Red Mitchell(b)

1992 年、2 月15 日、ストックホルムのジャズクラブ、“ FASCHING” でのライブレコーディング。名手どうしのリラックスした、それでいて完成度のとても高い演奏が楽しめる。いそしぎ、Doxy、Blue Moon 、など選曲も彼らが長年演奏してきたであろう、スタンダードジャズの名曲ばかり。
あと、ベーシストのレッド・ミッチェル、彼の楽器は普通とは調弦が違います。ただでさえ低い音のベースですが、さらに低い音が出る設定になっていて、さらに音域が広くなっています。


「Two Way Conversation」 Barney Kessel(g)、Red Mitchell(b)

バーニー・ケッセルもまた、ジャズギターの名手の1人。彼を最初に聴いたのは、「ダウンビート」「メトロノーム」「プレイボーイ」の3 誌のジャズメン人気投票において1956 年、それぞれの楽器部門で1 位を取ったメンバーを集めて結成した“ ザ・ポール・ウィナーズ”。ベースはレイ・ブラウン、ドラムスはシェリー・マン。その印象からすると、この録音は1973 年で、随分モダンな感じで、50 年代とは違うバーニーを楽しめると思う。選曲もギルバート・オサリバンの「Alone Again」、ロバータ・フラックの「Killing Me Softly With His Song」など、ジャズファンでなくとも楽しめる1 枚。


「Ellington A La Carte」 Kenny Burrell (g)、Rufus Reid (b)

そして、もう1人の名手、ケニー・バレル、ベーシスト、ルーファス・リードの1 枚。1983 年、8月19 日、NY のヴィレッジ・ウエストでのライブレコーディング。ピアニスト、デューク・エリントンの名曲の数々をケニーの美しい音色で堪能できる。もう1 枚、8/23 のレコーディングが「A La Carte」というタイトルでレコード化されている。ギターとベースのデュオって楽しいな、エリントンの曲はやはり美しいな、と素直に思える1 枚!

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11/11発売!佐津間 純(guitar) & 若林 美佐(bass) Duo
「Weaver Of Dreams」

正統派ジャズギタリスト佐津間純と実力派女性ベーシスト若林美佐デュオによる待望のファーストアルバム!デュオというシンプルな編成を活かした選曲と構成、そして丁寧でスイングする演奏が心地よい。全編を通して、暖かいギターとベースの音色をたっぷりと楽しめる作品。

「WEAVER OF DREAMS」 定価:¥2,400円+税
01.How About You  02.Shadow Of Your Smile 03.I Let A Song Go Out Of My Heart 04.My Conception 05.Peace Of Mind 06.The Corner 07.You Don’t Know What Love Is 8.Weaver Of Dreams 09.Blues For Haru 10.Dear My Friend
佐津間純(g)、若林美佐(b)   2015年8月25、26日  東京・亀吉音楽堂にて録音

「CD発売記念ライブスケジュール」
◆12/12(土)10:00~ 《朝ジャズ》逗子・渚小屋
2016年
◆1/10(日)14:30~ 茅ヶ崎・ハスキーズギャラリー (0467-88-1811)
◆1/24(日)17:00~ 町田・Bird (042-728-7667)

佐津間 純(guitar)プロフィール
神奈川県鎌倉出身。13歳でギターを始め、高校生のときジャズに出会う。
土屋秀樹,道下和彦,岡安芳明等に師事。
洗足学園大学ジャズコース卒業。バークリー音楽大学卒業。
大学卒業後プロの演奏家としてキャリアをスタートさせる。
2006年度ギブソンジャズギターコンテスト『ジャズライフ賞』受賞。
2009年には雑誌「ジャズギター」で若手ジャズギタリストの一人として紹介&インタビュー記事が掲載される。2010年「佐津間純Trio」でモーションブルーヨコハマに初出演。2012年 後藤輝夫氏(ts)とのデュオ作品「But Beautiful」がe-onkyoよりダウンロード限定で配信開始(この作品は第20回日本プロ録音賞ベストパフォーマンス賞を受賞)。
2013年12月待望のデビューアルバム「JUMP FOR JOY」を発売。
2014年7月配信限定で発表した「But Beautiful」がCDとしてリリース。
2015年11月実力派ジャズベーシスト若林美佐とのデュオアルバム「Weaver of dreams」をリリース。
現在、東京、神奈川を中心に全国に活躍の場を広げている。
~オーソドックスなジャズギターのサウンドを貫き、ホットで美しい音色で、現在最も注目されている若手正統派ジャズギタリスト♪~

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若林 美佐
若林 美佐

わかばやし・みさ/ジャズでは珍しい女性ジャズベーシスト。奈良県出身。小学3年生から打楽器を始め、大学生の頃にジャズベースに興味を持ちエレキベースを手にする。一旦は就職し、真っ当な社会人生活を送るも、「ジャズベーシストになってみようかな・・・」という思いから退職し、ウッドベースを習い始める。同時に(強引にも)プロミュージシャンとして活動を開始。2002年にはNYに渡米。帰国後、活動拠点を関東に移し、現在は首都圏、関西を中心にライブ活動中。

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