salitoté(さりとて) 歩きながら考える、大人の道草ウェブマガジン

ジャズベーシストが語る超私的JAZZのはなし

2013-06-19
Charlie Hadenが心にしみる

ここ最近、怪我をして演奏を休んだり、ちょっとブルーになっていた。
何週間も音楽を聴けなかった。
ようやく復活しかけ、ジャズを聴こう、という気になってきた。
聴いたのは、ピアニストKeith JarrettとベーシストCharlie Hadenのデュオ「Jasmine」。
電車で聴いていたのだが、自分でも想像していなかったほど感動してしまい、呆然としてしまった。
これほどまでに音楽が心に染みるとは。
正確には、これほどまでにCharlieのベースが心に染みるとは!

それから数日間は持っていたCharlie HadenのデュオのCDを聴き、まだ聴いていないデュオのCDを検索して新たに購入して聴き続けた。

チャーリー・ヘイデンは1937年生まれのアメリカ人ベーシスト。50年代後半より演奏活動をはじめ、オーネット・コールマンや、キース・ジャレットのカルテットに参加。60年代には反戦や政治的なテーマを持った「リベレーション・ミュージック・オーケストラ」で活躍。80年代からは「Charlie Haden Quartet West」を結成。私はこのバンドのサウンドはとっても好きです。古き良き映画音楽のよう。
2000年に発表した、ギタリスト、パット・メセニーとのデュオアルバム「Beyond the Missouri Sky」でグラミー賞最優秀ジャズインストゥルメンタルグループを受賞。現在も現役で活躍中である。音色、音のアプローチ、存在自体、One & Onlyなミュージシャンだと思う。

今でこそ彼のことが大大好きだが、ベースを弾き始めた頃はそんなに興味もなかったし、あえて聴こうとも思わなかった。正直、良さがあんまりわかっていなかったと思う。ハードバップ大好き、の私にはCharlieのベースはそんなに響いてこなかった。
しかし、年齢を重ね、音楽の経験も重ね、ここ数年は聴くたびに彼の演奏の素晴らしさにため息・・・である。

特にデュオでの演奏が好き。
彼の演奏は共演者に寄り添ったものなんだと思う。最近強くそう思う。
デュオという、2人だけの編成だし、もちろんほかのミュージシャンのどのデュオのレコーディングも、互いの演奏に双方のミュージシャンが寄り添って演奏してこそ成り立つのだと思うのだけれど、Charlie Hadenの場合、何かが違う気がする。
その「何か」が、世界中のベーシストが彼の演奏を愛する理由の一つなんだと思う。演奏テクニックとはかけ離れた場所にその「何か」は存在すると思う。そして、それって、音楽を演奏する上で、もの凄く重要なんだとも思う。
音楽に対する愛、共演者に対する愛、人類への愛。うーん。愛っていう言葉もなにか違うかなぁ。
私はほんとにここ数日、彼のベースに癒された。これほどまでに彼の音楽が素晴らしいと心底思ったことも今までなかった。聴いていると、周りが幸せな空間に変わる。きっとこの感覚は消えないだろうなぁ。

Charlie Hadenという人は、音楽同様に、人柄も素晴らしい人なんだと思う。2回ぐらいしかお話していないけど、ほんとに優しくて、しゃべってて「じーん・・」となった(あのチャーリー・ヘイデンと話している自分!に感動してるのかもしれませんが)。

明日またCharlie HadenのCDが届く。楽しみだなー。

Charlie Haden おすすめデュオCD
「Beyond the Missouri Sky」
with Pat Metheny (guitar)

*ミュージシャン仲間(特にギタリスト)の間でも大人気のCD。Pat Methenyのギターの音色も美しい。選曲もいいです。

「Night and The City」
with Kenny Barron (piano)

*1996年9月にニューヨークのジャズクラブ「Iridium」でのライブレコーディング。このデュオを大阪Blue Noteで聴いた。ライブ中、ケニー・バロンの素晴らしいソロのあと、チャーリーが弾く手を止めてケニーに向かって拍手した事を鮮明に覚えている。このアルバムも選曲が素晴らしい。特に2曲目の「For Heaven’s Sake」が好き。

「Steal Away」
with Hank Jones (piano)

*黒人霊歌や民謡、賛美歌などを演奏している。彼のルーツを感じる事ができる気がする。ピアニストのハンク・ジョーンズ、本当に素晴らしい。

「none but the lonely heart」
with Chris Anderson (piano)

*チャーリーがクリス・アンダーソンの事を「彼は天使のようなピアノを弾く」と書いてあったのを読んで私は「天使同士の演奏かも」と思いました。

「As Long As There’s Music」
with Hampton Hawes (piano)

*ハンプトン・ホーズは大好きなピアニストの一人。3曲目のTurnaround、ミュージシャン的に大好き。しかし、このアルバムは私が聴いたどのハンプトン・ホーズの演奏とも違っていた。興味ある方は、そうですねぇ、彼の「The Trio」というアルバムを聴いてみて下さい。

「Jasmin」
with Keith Jarret (piano)

*2010年と比較的最近に出たアルバム。何も言う事ありません。ほんとにいいアルバムと思う。もしこのCDを気に入った方は、『Closeness』という、Charlieのベースと他の楽器とのデュエットのアルバムも聴かれるといいと思います。キースが演奏しているのは1曲目の、「Ellen David」という曲だけですが、この曲もほんとーーーに素敵!初めて聴いた時、衝撃に近い感動を覚えました。

ご意見・ご感想など、下記よりお気軽にお寄せ下さい。

3件のコメント

チャーリーの音楽を聴いてみたくなりました。
音楽って素敵、人の心を癒したり、繋げたり、広げたり、開放したり、いろんなことを感じさせてくれる。
これからも色々な音楽の話を聞かせてください。
体、お大事に!

by kiki - 2013/07/10 10:43 AM

全ての記事が、とても楽しく、拝読させて頂きました。
ありがとうございます。

思わず、Amazon で「Workin’」「Cookin’」「Relaxin’」「Steamin’」+ waikin の5枚組CDを買ってしまいました。

無理なさらず、時間があるときに、また、楽しい記事を書いて頂ければ有り難いです。

by mura - 2015/01/19 9:47 PM

「Workin’」「Cookin’」「Relaxin’」「Steamin’」+ waikin は めちゃ良いですね!!ありがとうございました!!

by mura - 2015/01/31 8:04 PM

現在、コメントフォームは閉鎖中です。


若林 美佐
若林 美佐

わかばやし・みさ/ジャズでは珍しい女性ジャズベーシスト。奈良県出身。小学3年生から打楽器を始め、大学生の頃にジャズベースに興味を持ちエレキベースを手にする。一旦は就職し、真っ当な社会人生活を送るも、「ジャズベーシストになってみようかな・・・」という思いから退職し、ウッドベースを習い始める。同時に(強引にも)プロミュージシャンとして活動を開始。2002年にはNYに渡米。帰国後、活動拠点を関東に移し、現在は首都圏、関西を中心にライブ活動中。

そのほかのコンテンツ